自転車練習の実践例~発達障害は関係ない~
様々な人に自転車指導をする機会が増えてきたひだち教室長の安藤です。
我が子をコマ無し自転車に乗れるようにしたい。
多くの保護者はそう願うと思います。
ところが、我が子に練習をさせるものの上手くいかない。
そういう話もよく聞きます。
何がダメなのか分からない、手順が分からずに悩まれている方もいると思います。
今回の記事は、そんなお悩みを抱えた方向けの内容になっています。
内容としては、当時年中だったBちゃんがコマ無し自転車に乗れるようになった時のこと。
Bちゃんはどういう練習を経て、乗れるようになったかをお話ししたいと思います。
Contents
乗れるようになるまでの行程
Bちゃんに自信をつけたいという保護者の願いがあり、何で自信をつけるかという話をしました。
私は「コマ無し自転車に乗れるようになるのを目標にしてみてはどうか?」と提案。
当時Bちゃんは年少だったのでまだ難しいという思いが保護者にはありました。
しかし、日頃Bちゃんと関わっている私は確信がありました。
「Bちゃんはスモールステップで指導すれば絶対乗れるようになる」
こうして、チャレンジをすることになりました。
自転車に乗れるようになることは大切。
それ以上に、Bちゃんにはその先のことを見据えた指導と目標が重要です。
というのも、Bちゃんは色々なことにチャレンジするタイプではない。
「私は無理~」とすぐに諦めてしまうタイプだったからです。
自信をつけることがBちゃんにはなによりも必要。
でも、生半可は成功体験では自信がつきにくい。
自信をつけるには下記の過程が必要。
苦労する体験と努力する体験をした上で、成功体験を積む。
そういう意味では、コマ無し自転車の練習はうってつけです。
自転車練習開始!!
自転車の練習は子供の心の成長を促す(自信をつける)絶好の機会です。
乗れれば良いというなら、直接的なサポート(例:アシストバー)を使用するのも良いでしょう。
しかし、それは非常に勿体ない。
「自分の努力だけで乗れるようになった」
という自信を芽生えさせることが本当の教育だと思います。
だから私は最小限のサポートしか行いません。
ただし、難しさもあります。
サポートをほとんどしない分、その子に合った指導方法を見いだす観察力が問われるからです。
次からはBちゃんの練習中の様子と手順です。
自転車のハンドルを持って歩く
まずはBちゃんの現状把握から始まります。
Bちゃんの状態を知るために、自転車のハンドルを持ちながら歩いてもらいました。
歩きづらそうにし、すぐに自転車を倒してしまう。
倒れた自転車をおこすのにも苦労していました。
これは「自転車に負けている」状態で、この状態をクリアしないと次には移れません。
1回目の練習は、ひたすら自転車のハンドルを持って歩いてもらいました。
Bちゃんは教えてもらったらすぐに乗れるようになると思っていたもよう。
不満そうな顔をしていました。
自転車を倒す度にBちゃんは「無理~」と弱音を吐きます。
その度に私の「できるから頑張ろう~」という言葉がけによって、頑張り続けました。
サドルに乗ってチョコチョコ歩き
2週間後の2回目の練習では、「自転車に負けている」状態はだいぶ改善されました。
次の段階は、サドルに乗ってチョコチョコ歩き。
Bちゃんは家庭でペダル無し自転車で練習していたので、チョコチョコ歩きには自信がありました。
「チョコチョコできる~」と言いながら嬉々として練習を始めました。
ところが、練習を始めて数秒で「あれ?」といった表情をしました。
何度もペダルに足がぶつかり、ヨロヨロとよろけるのです。
これはペダル無し自転車の弊害で、ペダルの有無によって足の運びが変わります。
そのことに気が付いて対応できる子供もいれば、対応できない子供もいます。
Bちゃんは後者だったので、「ペダルをよけてチョコチョコするんやで」と教えました。
非常に歩きづらそうにしていましたが、30分もすればコツを掴み始めました。
両足で地面を蹴る→片足で地面を蹴る
チョコチョコ歩きが安定してきたら、次は両足で地面を蹴って進みます。
両足なので軽く地面を蹴るだけで進みますが、それでは加速が弱い。
「両足でグッと蹴る!」と、思い切り地面を蹴るように伝えました。
余談ですが、この言い方は意外と理解しやすいようです。
以前、重度の知的障害のある子供にも教えたことがありますが、理解してくれました。
力強く両足で地面を蹴られるようになったら、次の行程。
片足をペダルに乗せ、もう片足で地面を蹴るように指示しました。
ここでBちゃんは大苦戦し、何度もバランスを崩しました。
原因は3つ考えられます。
・片足だけ力を入れるという動きが感覚として分かりにくい
・目線を固定(保持)できない
・気になるものがあると注意がそちらに向いてしまう
これらがBちゃんの阻害要因となり、乗れるようになるのに時間がかかることになりました。
ペダルをこぐ練習
練習は5回目となり、ペダルをこいだら乗れるという段階となっていました。
しかし、ここで問題が発生。
ペダルをこぐのを何度も止めてしまうのです。
理由を尋ねると、「速いから怖い」とのこと。
スピードが出ると恐怖で身体が硬直し、こぐのを止めてしまうようです。
これまでそういう子供を何人か見てきましたが、克服するにはその子の勇気次第です。
勇気が湧き出るよう、私は励まし続けました。
「今のやめなかったら出来たわ~、良い感じやで」
「おしい!」
「今の良かった!!」
おかげで、練習が終わると私の喉はガラガラになりました。
乗れた瞬間の喜びと自信に満ちた笑顔
運命の六回目。
自転車練習がイヤになったのか、Bちゃんは少し渋りながら教室に来ました。
これだけ苦労しているのに、なかなか乗れない自分がイヤになっているのかもしれません。
力強く励まし、いつものように琵琶湖沿いの公園に行って練習開始。
練習開始してすぐに変化に気が付きました。
片足で地面を蹴る力が以前よりも強くなっているのです。
スピードが出るから安定性も増すので、乗れる一歩手前。
15分後、1~2m程こぐことに成功。
さらに5分後、ついに20mほど自転車に乗る事ができました!
物凄く褒め、ハイタッチもしました。
その時のBちゃんの表情は極上の笑顔で、力強い目になっていました。自信がついたのが分かります。
7回目以降は不安定さはありますが、スイスイと走れるようになりました。
乗れた瞬間をビデオで撮っていたので、練習後に保護者に見せると、目からホロリと光るものが。
私もBちゃんの苦労や努力している姿をずっと見てきたので、半泣きになりました。
こういうのがあるから、この仕事は面白いですね。
余談ですが、今では小学3年になるBちゃんは自転車をとても上手く運転しています。
上達するためのマル秘テクニック
自転車に乗れなくしている阻害要因というのは様々ありますが、以下の要因が多いです。
①指示に従わない(自分のやり方にこだわる)
②片足で地面を蹴る力が弱い
③ハンドル操作が不安定
④スピードが出ると怖い
⑤「できない!」と諦めやすい
⑥感覚過敏(例:光過敏)がある
これら阻害要因に対して、どう対応すれば良いか悩まれる人は多いでしょう。
そんな方には以下のことを実践してみてください。※上記の番号に対応しています。
①常に毅然とした態度をとる
②環境を利用する(例:自転車にまたがり、片足で地面を蹴りながらゆるい坂道を登る)
③環境を利用する(例:自転車にまたがりながら、凸凹した道を歩く)
④安心感を与える(例:スピードが出そうな時は首襟を軽く持つ)
⑤「できない!」という言葉は無視して、「大丈夫、君ならできる!出来るようにする!」と勇気づける
⑥感覚過敏対策をする(例:イヤホンをつけて練習する)
何が阻害要因となっているかは、本当に人それぞれです。
よく観察して、その子にあった指導をしてください。
もし難しければ、私に丸投げしてください。乗れるように致します。
会員外の方でも自転車指導の依頼を受け付けています。
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