アスペルガー症候群のこだわりと興味の狭さ

【ひだち教室の教室長が解説「アスペルガー症候群」第4回】

>>>第3回 アスペルガー症候群の対人関係の難しさ

前回に引き続き、自閉症スペクトラム障害(ASD)の3大特徴の一つである『こだわりと興味の狭さ』をより具体的に、事例を踏まえながら解説します。

アスペルガー症候群のこだわりと興味の狭さ

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人に携わる仕事をしている人は、必ずと言ってよいほど『こだわり』と『興味の狭さ』について頭を悩まされます。

私自身も何度も悩まされました。

課題を一つ終える度に、映画会社の名前をノートに立体的に書くという『こだわり』を持った生徒。

興味の範囲が狭いために、語彙数が増えにくい、指導(アプローチ)方法を増やしにくい生徒もいました。

ただ、『こだわり』や『興味の狭さ』が全てデメリットに働くというわけではなく、メリットの部分もあります。

こだわりとは

みなさんは『こだわり』と聞いて、どんなイメージをお持ちですか?

おそらく職人のような深く追求することをイメージすると思います。

実は『こだわり』には二つの顔があります。

①さらなる高みを目指すための力

②自己防衛反応

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人達には、そんな『こだわり』を強く持ち合わせています。

『こだわり』が前者(さらなる高みを目指すための力)として発揮されると、将来の力(武器)になりえます。

・自分が納得いくまで何時間も練習する

・興味や関心のある事柄に、徹底的に探究・追求ができる

こだわりだすととにかく止まらないというのが特徴。

アスペルガー症候群だろうと言われている偉人の多くに、上記のようなエピソードをよく聞きます。

後者(自己防衛反応)は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴であるハプニングや変化の弱さに直結します。

ハプニングや変化に直面すると、『こだわり(自己防衛反応)』として様々な行動をとります。

・普段と同じ環境づくり(例:物の位置を変えない)を親に求める

・強引に普段通りの行動(例:同じルートで帰る)をとる

・自分の価値観を優先した行動をとる

不安やしんどさ、不快感を避けるための行動で、当事者としては正当性があります。

しかし、他者からしたらそういった行動は問題行動として映ることがあります。

こだわりを止められない

生徒達と色々な仕事場に行くと、アスペルガー症候群と思しき人と一緒に働くことが度々あります。

仕事場で出会った、某有名大学出身で物腰の柔らかいZさんという方の『こだわり』についてのお話しです。

ある日、私は競輪場のイベント設営に勤しんでいました。

仕事の終了時間まで残り10分。

もうすぐ終わるとウキウキしていたら、突如イス100脚を設置することになりました。

その場にいたバイト達全員「え~!?」といった表情をし、足取り重く現場担当者の前に集合します。

現場担当者:「キチっと並べるのは後でいいから、まずカゴ車からイスを出して!」

どうやら現場担当者も予想外の仕事だったようで、イライラしていました。

10分しかないから、一致団結してスピーディーに行う必要があります。

Zさんも最初は一生懸命イスをカゴ車から出していました。

しかし数分後、イスをキチっと並べるZさんの姿が・・・。

それに気づいた現場担当者は大激怒。

現場担当者:「何やってんねん!キチっと並べるのは後回しと言ったやろうが!!」怒号が辺りに響きます。

Zさんは怒られてオドオドしていましたが、納得していない様子でした。

怒られて仕方なくイスを出し始めたZさんでしたが、しばらくすると再びイスを並べ始めました。

これではまずいと思った私は、Zさんに私の仕事を手伝ってもらうことにしました。

仕事が終わってから、私はZさんに理由を尋ねました。

私:「担当者の指示は聞いていたと思いますが、なんでイスを並べたんですか?」

Zさん:「一時的とはいえ、イスを並べずに放置するというのはありえないじゃないですか」

苦笑いをしながら答えてくれました。

Zさん:「イスがキチンと並んでいない状態って気になって仕方ないんです」

私:「気持ちは分かりますが、怒られ損じゃないですか?」

Zさん:「そうなんですけど、怒られてもやめられませんね」懲りる様子もなく、その場を後にしました。

Zさんには、イスは綺麗に並べるものという『こだわり』があったようです。

指示を無視してでも、イスを綺麗に並べたい(気持ちを落ち着かせたい)という自分の気持ちを優先したが故の行動でした。

Zさんにとっては当然の行動なのかもしれません。

しかし、その行動が周りの人に『仕事ができない奴』という認識を植えつけてしまっていることに、私は未だに心配でなりません。

興味の狭さの功罪

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は興味の範囲が狭く、新しい事に興味を持ちにくい傾向にあります。

しかし、興味は狭いが興味に関する知識は非常に深く、興味があることの吸収力は定型発達の人とは比較にならないほど高いです。

アスペルガー症候群の人のエピソードに、子供の時に○○博士と呼ばれたことがあるというお話しをよく聞きます。

私が実際出会った○○博士は3人。

・三国志博士

・戦国武将博士

・文字博士

三国志や戦国武将は、戦争の名前や武将の生い立ち、人間関係などに詳しいです。

文字博士の生徒はローマ字から始まり、ロシア文字、アラビア文字などの読み書きができました。

ただ、文字に興味があるだけで単語や文章にはそれほど興味を示しませんでした。

興味の範囲が狭いことで、外に出て様々な経験を積む機会が少なくなるケースもあります。

社会性や会話力といった社会に出た時に求められる力が培われにくくなるので、支援者は外に連れ出す機会をつくりたいですね。

興味は狭いが深い

今回お話しするのは、マリオカート博士やマリオカートマスターと呼んでも言い過ぎでないE君について。

当時中学生のE君は昔からマリオゲームが好きで、ある時を境にマリオカートしかしなくなりました。

空き時間があればすぐに3DSを取り出してプレイするほどのハマりっぷり。

周りの生徒達も若干呆れ気味でした。

ある日、生徒達はゲーム大会と称してマリオカートをしました。

普段E君は自信を持って何かをすることはありませんが、この時ばかりは「俺強いで」と自信を持っていました。

ゲームが始まると、

「なんでそんなコースを知ってるねん!?」

「緑甲羅当てるの上手すぎるやろ!」

E君のテクニックと知識に一同驚愕しました。

E君は誉め言葉として受けとめ、終始ニコニコ顔。

私もE君に驚きましたが、何より驚いたのが隠しコースやタイムを縮める術を独力で発見したこと。

E君は日常生活において何かを探求するというのは苦手なタイプ。

しかし、興味を持てばどこまでも深く探求できるのだとE君は証明してくれました。

興味が狭くて深いというのはメリットとデメリットのある諸刃の剣でもあります。

E君は(自称)ゲーム好きと言うものの、興味がマリオカートに偏り過ぎたために、その他のゲームの知識は皆無に等しい状態。

そんな事情を知らないF君は、他のゲームの話題(ゼルダの伝説)をふりました。

E君:「それは知らないわ」マリオカートをしながら苦笑いをします。

F君:「ゲーム好きなのに、なんでこんな有名な作品を知らんねん!常識やろ」

F君は怒っているわけではありませんが、不思議で仕方ないようでした。

ゲーム大会が終わると、E君は笑顔を作りつつも凹んだ様子でした。

どうすれば子供達の興味を広げられるか?

私は生徒達のやりとりを見て一層考えるようになりました。

第5回はアスペルガー症候群の人との接し方について、具体的に事例を踏まえながら解説します。

※紹介しているエピソードは、全てのアスペルガー症候群の人に当てはまるわけではありません。一般的に言われていることを踏まえつつ、私が実際見聞きしたことをご紹介しています。「アスペルガー症候群の人にはこういう人もいるんだ」という気づきのきっかけになれば幸いです。

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