こだわりが強い発達障害児の行動を変える方法
焼肉時にはサントリーの黒ウーロン茶がなければ食べられないひだち教室長の安藤です。
発達障害のある子供達に関わる仕事をしていると、子供のこだわりに関するを相談を受けることがよくあります。
我が子のこだわりによってしんどい思いをしている保護者が多いからでしょう。
こだわりをどうにか出来ないものか?
今回はそんなこだわりについて&こだわり行動(思考)を上手く変えられた事例をお話したいと思います。
Contents
発達障害とこだわりが強い人の特徴
発達障害の中でも、自閉症スペクトラム障害(ASD)は障害特性としてこだわりが挙げられます。
数多くの自閉症スペクトラム障害(ASD)の生徒を見てきましたが、こだわりの対象は千差万別です。
・ある幼児は電車の並べ方や走らせ方に強いこだわりがあり、いつもと違うパターンにすると癇癪を起こす
・ある小学生は勝ち負けに対して強いこだわりがあり、負けるとパニック&勝てるまでゲームを続ける
・同じ服しか着ようとせず、違う服を用意しても前日着用した汚い服を再び着る中学生
このように、例を挙げればキリがありません。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は変化を好まない・苦手という特徴があります。
また、「絶対こうである!」という確固たる信念(価値観)を持ちやすいという傾向もあります。
これら特徴や傾向が、こだわりとして表に出るのです。
では、全てのこだわりは良くないのでしょうか?
それは違うと断言します。
確かに、発達障害に詳しくない人にとってはマイナスな部分に目がいきがちです。
しかし、こだわりが強みになりえることもあります。
・最後まで諦めない強い意志を支える原動力となる
・定型発達の人には真似できないぐらい研究に没頭することができる
・たくさんのイスを寸分たがわずに配置する
昔、完璧にしないと気が済まないこだわりをもったASDのスタッフが職場にいました。
そのスタッフはリーフレットの折り方に強いこだわりを示し、私は何度も練習させられました。
「なんでそんなにピシっと折るのにこだわるかな~」と、当時私は思っていたものです。
そんなある日、「リーフレットをピシっと綺麗に折っていて素晴らしいですね」とお客様にお褒めの言葉を頂きました。
こだわりがあったからこそ頂けたお褒めの言葉ですね。
こだわりは収まるのか?
こだわりは収まるのか?と質問されることがあります。
根本的になくなるということはないと思いますが、以下のようなケースはあります。
・年齢が上がるにつれてこだわりの程度が軽くなる
・現在こだわっていることが別のものに移行する
・当事者の価値観を揺さぶるようなことがあれば柔軟な対応ができる
こだわりは長所にもなり、心の安定剤でもあるので、私は基本的にこだわりをなんとかするというのは賛成していません。
ただし、こだわりの内容によっては周りの人達に迷惑や不快に感じさせるケースもあります。
そういうこだわりは何とかするべきだとも思っています。
以降は、私が生徒のこだわり行動に対して行った対応事例を書いていきます。
こだわりの行動が変わった男の子(高校生)の事例
A君という男の子は歯と歯の間に異物が挟まると、指を突っ込んでとろうとします。
一見こだわりではないように思えますが、手の届くところに爪楊枝があるのにも関わらず、必ず指でとるというこだわりです。
挟まっているのが気になるのは理解できるのですが、他人が目の前にいるのにも関わらず、何のためらいもなく突然口の中に指を突っ込むので、非常に他人を不快に感じさせていました。
保護者や周りの人達がいくら注意をしても効果がありません。
そこで、私はA君のこだわりを受容した上で、周りの人達を不快にさせていて、どういう風に思われているかをズバっと伝えました。
伝えるととても驚いた表情をしましたが、それでも指でとりたいようでした。
今回のケースでは、こだわりを抑えるのではなく、こだわり行動をするタイミングを教えた方が良いと判断。
「止めなさい」ではなく、「やっても良い」と言い変えてみると、「良いの?」とG君は驚きの声をあげました。
不快に感じさせるというのは相手が近くにいるから成立するのであって、周りに人がいなかったら行動自体は問題ないのです。
A君はやっても良いというお墨付きを頂いたことで嬉しくなり、人の声に耳を傾ける姿勢ができました。
「周りに人がいなくて、すぐに指を洗えるトイレなら、他人を不快に感じさせることがないから大丈夫だし、すぐに指を綺麗に出来るからお得やん」と伝えると、それ以降G君は人前で口の中に指を入れることがなくなり、トイレでするようになりました。
こだわりを無くそうとするのではなく、こだわりが発揮できて人に迷惑をかけない方法を模索する。
その方が本人も周りの人も有意義ではないでしょうか?
こだわれるタイミングを示すことでこだわりの行動が減少した男の子(小学5年)の事例
言葉の理解がある程度出来る生徒には、行動を変えると「お得感」があると説明できるので、比較的容易です。
しかし、言葉の理解が難しい生徒にはそうはいきません。
知的障害を伴った自閉症スペクトラム障害(ASD)のB君の事例です。
B君のこだわりは結構強いもので、課題を一つ終えるごとにプリントの裏に単語(3つ以上)を書くというもの。
課題を終えるごとに必ず単語を書くので、時間がかかります。
そこで私はこだわり行動が起きるパターンを分析し、ホワイトボードに今日する課題を書きます。
そして最後の課題の部分に「文字を書く」と書きました。
最初はそれでも課題ごとに書こうとし、それを何度も私は制止したので、殴る、蹴る、ひっかくといった強い反発がありました。
しかし、最後に書いて良いという態度を示し続けた結果、最後に書けるんだと思うようになり、反発はなくなりました。
その後、ホワイトボードに書かなくても、文字を書くのは最後だけになりました。
文字を書くというこだわりは無くなりませんでしたが、回数は激減したので、成功と言えます。
価値観を利用したことで柔軟な対応をした青年の事例
G君は日頃身に着けているものに強いこだわりを示します。
ボロボロになっても、別の物に変える・捨てるということがなかなかできないタイプ。
普段、親やグループホームの世話人が新しい物を履くように言っても拒否します。
何とかしたいと思っていた時に、宿泊活動で厳島神社へ行くことになりました。
G君は厳島神社が神聖な所という認識があり、価値観としても持ち合わせています。
この価値観を利用すると、抵抗感なく靴を買い替えることが出来ると私は考えました。
宿泊活動当日、G君は予想通りボロボロの靴を履いて活動に参加。
そこで、私はG君に伝えました。
私:「今回行く厳島神社はとても神聖な所って知ってる?」
G君:「知ってる」
私:「そんな神聖な所にボロボロの靴を履いて参拝するのは、神様に失礼やし入られないで」
G君:「もう片方はまだ大丈夫」
私:「片方の靴がボロボロな時点でアウトやから、買い替えよう」
G君:「分かった」
実はG君はこだわりだけでなく、もう片方がボロボロでなければ履けるという考えがあったのです。
見方によっては言い訳に聞こえなくもないですが、G君の様子を見ると言い訳というわけではないです。
神社は神聖な所という認識と価値観を利用したことで、すんなりと新しい靴を買い替えることに成功。
勿論、古い靴は靴屋で処分してもらいました。
納得した上での事なので、G君は怒るといったことはありませんでした。
価値観を上手く利用したこだわりの改善事例でした。
こだわりには理屈が効果的だった事例
夏休み工作教室でフィンガー投石器作った時の事例。
A君には、「自分には自分の美学がある」「シンプルイズザベスト」といった信条があります。
A君はフィンガー投石器の基本となる部分を作り上げると、「シンプルが一番!」といって何も装飾しようとしませんでした。
なので、ただ真っ黒なフィンガー投石器。
真っ黒がダメとは言いませんが、さすがにシンプル過ぎます。
「何かつけたらカッコよくなるよ」「綺麗になったら凄いと思うな~」
などと、スタッフは促しましたが、A君は頑なに拒否。
こうじゃないとダメ!といった、こだわりの領域に入っていました。
そこで、私は理屈で促すことにしました。
私:「投石器で遠くに飛ばすには、土台がしっかりしていないといけない」
私:「重さがあればあるほど、振りの反動が大きくなるから、ビーズシールなどで重さをつけるのも一つの手やと思う」
A君:「なるほど~」
科学的(?)な理屈を伝えると、納得したA君。
見栄えをよくするという認識ではなく、遠くに飛ばすという目的のために装飾を施し始めました。
装飾の仕方はA君の感性が反映されていて、個性的な作品に仕上がりました。
このように、こだわりには視点を変えさせると融通が効くことがあります。
今回紹介した事例は、信頼関係が構築されているという大前提があります。
誰がやっても同じように通用するわけではないので、ご注意ください。
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