長安寺にある石造宝塔は素晴らしいです【滋賀県大津市逢坂】
車で京都から大津市内に入り、161号線を走っていると、左手に年季の入った銭湯が見えます。
その銭湯を左に曲がると踏切があり、その奥に「長安寺西國三十三所」と書かれた石碑が立っています。
周りを見た感じでは寺があるように見えないのですが、気になったので行ってみました。
長安寺情報
京阪線の踏切を渡ると、民家の間に長安寺へと続く長い階段があります。
私は自転車に乗っていたので、階段を使わずに、階段のすぐ横にある狭い道を進みました。
それほどきつい坂ではないのですが、思ったより遠回りになってしまい、体力を奪われてしまいました。自転車では来ない方が良いです。
重文(重要文化財)の牛塔と呼ばれる石造宝塔
回り道をすると、再び長い石段の所に出てきました。
そこには慰霊碑らしきものがあり、その慰霊碑には「獣魂碑」と書かれていました。
滋賀県は近江牛の産地とあって、多くの牛が食肉に解体されます。
食肉と言っても、単なる一食材として見ているのではなく、滋賀県全体に恩恵を与えてくれた食材として、感謝と畏敬の念を込めて、家畜商や食肉商によって建てられました。感謝の気持ちを今も昔も持ち合わせているというのは素晴らしいですね。
それだけ恩恵を受けているのだから、こんなひっそりとした所ではなく、もう少し人目がつく所に置いても良いと思います。
獣魂碑の反対側を見ると、見た事がない形の塔が立っていました。
高さ3.3mもある巨大なつぼ型の塔身と笠石をつけた宝塔です。
民家の側にあるので、最近造られたものかと思いきや、実は鎌倉時代初期につくられ、日本を代表する石造宝塔です。
一般に関寺(昔この一帯にあったお寺)の牛塔とよばれ、霊牛の供養塔です。
976年の大地震で破損した関寺を復興する時に、資材を運搬していた一頭の牛が仏の化身であるという噂が立ち、多くの人々が関寺へ参拝するようになりました。その霊牛は復興に大活躍し、関寺の工事が終わると共に死にました。その霊牛を供養し、祀ったのがこの牛塔です。昭和35年には重要文化財にも指定されました。
真偽はさておき、そんな昔から牛を敬う気持ちが人々の心の中にあったのは間違いないです。
神社仏閣に興味のない子供でも、この宝塔の出で立ちはテンションが上がると思います。歴史に興味を持つキッカケになるかもしれないので、ぜひ家族で見に行って欲しいです。
関寺から長安寺へ
長安寺?と疑ってしまうほど小堂がポツンとあるだけでした。
昔は関寺と呼ばれ、逢坂の関近くにあった大寺院でした。平安時代日本三大佛の一つである関寺大仏は特に有名で、人々の信仰の場でした。
しかし、慶長の兵火に罹災し、現在の小堂を残すのみとなりました。その頃に時宗に属するようになり、現在の長安寺に名称を変えました。
信仰の場が燃やされた時の当時の人々の心境を思うと、悲しい歴史だと思わざるを得ないです。
境内にはたくさんの地蔵があり、驚きました。石碑には百体地蔵と書かれていました。
実は織田信長による比叡山焼き討ちゆかりの地蔵と言われています。
焼き討ちにより、比叡山麓に埋もれていた地蔵を昭和35年に長安寺へ百体移送されたそうです。
比叡山焼き討ちについては学校の教科書にも出てきますが、地蔵にまで影響があったとは書いていないので、新たな歴史の知識を得ることができました。
玉姫龍神と書かれた石碑があるのですが、どういう由来があるのかよく分かりませんでした。
龍神と書かれているので、水にまつわる何かがあったのでしょうが、周りには小さな池があるぐらいでした。
小野小町供養塔が建立されていました。
謡曲「関寺小町」を知っていれば常識的なことなのかもしれませんが、そういった知識がないと、何でこんな所に小野小町が?と、ただただ驚かされるばかりです。
下界に広がる線路と家々は、昭和の時代の風景がそのまま残っている感じでした。昭和生まれの私としては、どこか懐かしさを覚えました。
台風の影響でしょうか、鳥居が倒れていました。見た感じでは、すぐに修繕できそうですが、それ故にそのまま放置されています。
早く直さないとバチが当たりそうです。
境内を歩き回っていると、石像が至る所にある事に気が付きました。
山道に置いてあるのはすぐに目につくのですが、崖崩れが起きている所にもひっそりと石像があり、複数ある崖崩れの所を何度も覗いてしまいました。
私が見つけた限りでは、5体程崖崩れの中にありました。
早く工事をして救い出してほしいと心底思います。
アクセスと地図
JR:大津駅から徒歩10分。
京阪線:上栄町駅から徒歩2分程。
大津駅でレンタサイクル屋で自転車を借りて行くと楽ですが、石段は登れないので迂回ルートになります。
石段の前に自転車を置くスペースがありそうでありません。狭い路なので人が通る時に邪魔になります。
24時間入ることは出来ますが、木々の影響で昼間でも少し薄暗く、崖崩れが起きていたりするので、夜に行くことはお勧めしません。
肝試しにはうってつけの所と思いながら境内を歩き回りましたが、バチが当たるのでやめましょう。
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