アスペルガー症候群のコミュニケーションの難しさ

【ひだち教室の教室長が解説「アスペルガー症候群」第2回】

>>>第1回 アスペルガー症候群の特徴

今回は自閉症スペクトラム障害(ASD)の3大特徴の1つでもある『コミュニケーションの難しさ』について。

具体的に、事例を踏まえながら解説します。

そんな事例に出てくる人達をご紹介!

J君(当時中学生):そろばん大好き。ムードメーカー。

お婆さん(奈良県在住):自宅の畑で野菜や果物を栽培しており、外部の人向けに作物の収穫体験をさせてくれる。

S君(当時高校生):三国志と音楽が大好き。不登校経験者。

私(当時30歳):特別支援教育士の資格取得に向けて勉強中。

E君(当時中学生):マリオカートしかしないゲーム好き。

F君(当時高校生):仲が良い人には大きな態度で出てしまう。

コミュニケーションの難しさ

第1回の時にも解説しましたが、アスペルガー症候群の人は言葉の遅れがありません。

会話によるコミュニケーションは成立しますが、非言語性のコミュニケーションの部分で難しさがあります。

非言語性のコミュニケーションとは。

・表情や顔色

・話すスピード

・声のトーン

上記のことを指し、他者と交流を図る上で言葉以上に大切と言われています。

会話をするにあたって非言語性のコミュニケーションの役割は大きい。

役割が大きい故、ここに難しさがあるとトラブルが起きることもあります。

コミュニケーションの難しさ①ストレートな物言い

相手の反応を見ながらオブラートに包んで会話をするのが難しい人もいます。

結果的に言い方がきつくなって相手を傷つけてしまうこともあります。

このような事例があります。

ある日の課外活動で、J君とお婆さんはタマネギを剥きながら会話をしていました。

最初は和やかに会話をしていた2人ですが、突如気まずい雰囲気に・・・。

J君:「お婆さんは何歳?」

年齢を尋ねられたJ君はお婆さんに同じ質問を返しました。

お婆さん:「もう70歳になるわ。元気やろ~」ニヤリと笑みをこぼします。

J君:「へ~」お婆さんの笑みに対して反応することなく、淡泊な返事。

それを見たお婆さんは会話を弾ませようと話しを続けます。

お婆さん:「でも私は100歳まで生きるからね」

J君:「え?それは分からへんやん」悪気のない様子でJ君は即答。

まさかの返事に顔を凍り付かせるお婆さん。

それを近くで聞いていた私は冷や汗が噴き出ました。

お婆さん:「え!?いやでも生きるで~」

J君:「だから、そんなに長生きできるか分からへんやん」

うつむき加減で鬱陶しそうに言い放つJ君。

お婆さん:「ははは・・・」とさみしそうに笑っていました。

気まずい空気が流れ、それ以降2人の会話はありませんでした。

J君は表情や声のトーンからお婆さんの気持ちを察することができない。

そのため、思ったことをストレートに言ってしまいました。

コミュニケーションの難しさ②マシンガントーク

アスペルガー症候群の人の中には深い知識を持ち合わせている人がいます。

それ故、周りから○○博士と呼ばれることも少なくないです。

博士タイプは持っている知識で会話をするのが大好きで、喋りだすといつまでも楽しそうに話します。

聞き手と会話のキャッチボールをしながら話しを展開できる人もいます。

一方的なマシンガントークをする人もいます。

下記の事例は、そんなマシンガントークをするS君と私のお話し。

ある日のレッスン後、私はマイナーな武将に関することをS君に尋ねました。

私:「○○って武将は強かったん?」

S君:「○○は○○出身で○○と○○の間の子供です。幼少期は大変貧乏で・・・・・以下略」

S君は聞いてもいないことを長々と説明します。

一向に止まる様子がなかったので、私は意図的にウンザリした表情をしました。

しかし止まることなく、持っている全ての知識を出し尽くすと、

S君:「・・・・○○は強かったです」

と質問に対する答えで締めくくりました。

まさにマシンガントークで、私が間に割って入るタイミングがありませんでした。

マシンガントークをする人は喋ることに全ての意識が向いてしまう。

そのため、相手の表情を読み取るという作業を同時に出来なくなるのです。

コミュニケーションの難しさ③冗談や比喩を理解できる

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は冗談や比喩を理解できないという話をよく聞きます。

本当にそうなのでしょうか?

実は理解できる人もいます。

実際私は冗談や比喩を理解・使用する生徒を何人も見てきました。

特にアスペルガー症候群の人はよく使用してくるという印象があります。

相手が冗談で言っている(例:しばくぞ)のだろうと頭では理解している。

理解していても、当事者の心は穏やかではありません。

場合によってはいつまでも心に引っかかります。

違う解釈をするようになって怒りや悲しみへと繋がることもあります。

そうならないように保護者や支援者は諭したりしますが、一番効果があるのは自己肯定感を高めること。

自己肯定感が低い時と高い時の対応の違いを示してくれた、そんな事例です。

E君とF君を含むグループでスゴロクゲームをしていた時のこと。

E君はスゴロクゲームで最下位になってしまいました。

E君:「うわ!やってもうたわ~」

F君:「やった~!アホや~(笑)」手を叩いて喜ぶF君。

E君:「っうん(怒)」

手を叩いて喜ぶF君に対してE君はムッとした表情をして睨みつけます。

その後ゲームを再開してもE君の怒りは収まらない様子。

不運なことに再びE君は最下位に。すると、

E君:「また負けた~」

F君:「やっぱアホやな(笑)」

それを聞いたE君は我慢の限界を超えました。

E君:「っち!先生!!さっきからこんな事言ってくるけど、どう思う?」

F君:「なんや冗談やんか~」

当時学校でイジメを受けていて自己肯定感が著しく低かったE君。

冗談と分かっていても流すことができず、かなりムキになって私に助けを求めてきました。

数年後、似たような状況が再び起きましたが、E君は全然違う対応をみせてくれました。

E君:「負けた~」

F君:「ざまみろ~(笑)」

E君は手を叩いて喜ぶF君をチラっと一瞥し、

E君:「別にええやん。次勝てばええねん」

負けたショックやF君の言葉に対して気にする様子なく、次のゲームに向けてカードを片付けました。

その頃E君はイジメ問題が解決しており、色々な要素が合わさって自己肯定感も高まっていました。

E君は自己肯定感が高まったことで冗談を冗談として受け取ることができ、流せるようになりました。

自閉症スペクトラム障害(ASD)だから冗談を理解できないんだと捉えるのは時期尚早です。

理解はできるが自己肯定感が低い故に冗談を流せなくなったということも考えられます。

私はE君の変化を目の当たりにして以来、生徒が自閉症スペクトラム障害(ASD)だからといって安易に冗談や比喩を理解できないんだと捉えないように心がけています。

第3回はアスペルガー症候群の対人関係の難しさを具体的に、事例を踏まえながら解説します。

>>>第3回 対人関係の難しさの記事

※紹介しているエピソードは、全てのアスペルガー症候群の人に当てはまるわけではありません。一般的に言われていることを踏まえつつ、私が実際見聞きしたことをご紹介しています。「アスペルガー症候群の人にはこういう人もいるんだ」という気づきのきっかけになれば幸いです。

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