見ることは情報を正確に捉える上で欠かせない
当教室のプログラムの一つに、『見る・聞くトレーニング』というものがあります。
トレーニング課題はいくつもありますが、その内の一つをお話したいと思います。
発達障がいのある人の中には、正確に情報を捉えられない方がいます。その人は視力に問題なく、普通に見えています。
しかし、ちゃんと見ていない。
症状として表れやすいのが、絵を描けない、字を上手く書けないといったことが挙げられます。
今回は、ASD(自閉症スペクトラム障がい)の小学6年生に見るトレーニングをした事例です。
ワニのイラストを描こう
ワニの絵を正確に描こうという課題です。
誤解のないように申し上げますが、決して絵を上手く描けることを目指した課題ではないです。
あくまで見た物を正確に捉えるトレーニングです。
一人でやると
最初は指導することなく、一人で見ながら描いてもらいました。すると上の写真のようにワニには見えません。
足という認識が薄いのか、ヒレのようになっています。
また、背中の模様部分は、模様自体は認識できているが位置が間違っています。
いかに見ることに難があるかが分かります。
指導を受けると
何も知らない人が見ると、「先生手伝ったでしょ?」とよく言われます。
しかし、何も手伝っていません。言葉がけのみです。
間違いを指摘し、どういう形をしているか、どういう風にしたら正確に描けるかを指導しました。
すると、上のように正確に形を捉えられるようになり、私が予想していた以上に上手く描き上げました。
製作時間は描きで17分、塗りで7分かかりました。苦手なことなのに、最後までよく頑張りました。
指導の仕方
手を出さずに言葉がけのみで指導をした理由は、子どもの手を持ってやらせるよりも、
短い言葉がけの方が理解しやすいタイプだったからです。
手を持ってやらせると、人に頼り過ぎてしまい、逆に正確に形を捉えようという意識が薄れ、逆効果でした。
言葉がけの方が理解しやすいといっても、注意点がありました。
言語能力は高くなかったので、子どもが理解できる範囲の単語を使う必要がありました。
言葉自体は知っているが、意味は理解していないということが多々あったので、理解している言葉を見つけるのに一苦労でした。
また、意外な単語を使うことで上手く理解できるようになるというケースもありました。
例えば、ワニの背中が湾曲しているところを教えるのには、「カーブしている」、「背中が曲がっている」
という言葉は理解できませんでした。
何て言ったら理解できたと思います?
実は「丸い【く】」でした。
全体像を何となく見えていたから理解できたのだと思います。
このように、子どもに合った言葉がけをすると、一気に理解力が高まることがあります。
他の子どもと同じ言葉がけをして理解を図るのではなく、その子どもに合った言葉がけをして理解を図っていきたいですね。
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