選択肢を広げるには経験が必要
夏期特別プログラムで東京・横浜へ行きましたが、その時に「選択肢」について考えさせられることがありました。
今回はその事について書きたいと思います。
東京・横浜旅行の記事はこちらをお読みください。夏休み旅行記2018
ゲームのような選択肢が理解しやすい
発達障害の子供に長年指導していますが、様々な場面で選択肢が少ないと感じることが多いです。
例えば、お茶を床にこばした時は雑巾で拭く。これは多くの子供が出来ますが、その雑巾がないと、途端にどうすれば良いか分からなくなり、軽くパニックになったり、泣き出す子供もいます。
しかし、対処方法を2つ以上持っている子供は、パニック等を起こさないで落ち着いて対応する姿もよく見られます。
私はいかなる状況でも対処するための選択肢を複数持っていて欲しいと思っています。
選択肢は、機会・理解・行動といったことを数多く経験して増えていくものです。
しかし、ASDの人(全てではない)は同じ行動をすることが安心なので、別の選択肢に気が付かなかったり、ADHDの人(全てではない)はちゃんと理解しないまま行動して失敗してしまい、せっかくの新しい選択肢が除外されてしまうということがあります。
このような特性に注意しながら、①外に出る機会をたくさんつくる。②理解しやすいようにゲームのような選択肢、つまり端的で子供に分かりやすい文で視覚的に提示する。③選択肢を選んで行動する。勿論、成功体験として終えさせなければいけません。
私はゲームのような選択肢を考えることが好きなので、今回の活動でも、生徒が理解しやすい選択肢を提示できるよう心掛けました。
用意した選択肢が多いと思ったのが失敗でした
高速バスは夜中に出るので、18:00に大阪駅に集合し、グランフロント大阪内にある店で、夕ご飯を食べながら翌日の細かい打合せをしようと考えていました。
しかし、夕食を食べ始めるといつのまにか店の前には行列が出来ていて、ゆっくりと話をするのは迷惑になるという生徒の進言もあって、急遽別の場所ですることになりました。
因みに、進言してきたのはASD(自閉症スペクトラム障害)のある生徒です。
ASDの人は空気が読めないと言われますが、全く読めないわけではありません。似たような経験をしたことがあれば、ある程度空気が読めるようになります。
別の場所で話し合いをするにしても、どの店もいっぱいなのは明白なので、生徒3人にどこか話し合いをゆっくり出来そうな場所はないか探してくるよう指示しました。
ゆっくり話し合いができる場所といっても、どういった基準で探せば良いかピンときていない様子だったので、「人が多い」「何かを食べられる」「人が少ない」「座れる」「ある程度静か」という選択肢を紙に書き、その中から3つ選択してもらうと、「人が少ない」「座れる」「ある程度静か」を生徒達は選びました。
最初は10個ほど考えたのですが、選択肢が多いと判断に迷うと思って3つに抑えたのですが、この配慮が今回はあだとなりました。
該当する場所を3人は探しに行き、15分経過して帰ってくると、私達を最上階へと案内してくれました。
そこはスカイロビーになっていて、出入口には警備員が立っています。明らかに利用者が限定されているようなフロアですが、何故生徒達はそこを利用しようと考えたのか、中の様子を見て分かりました。
人が少なく、とても静かで、大きくて長いソファがあるからです。先ほどの3項目が全て該当していました。
ここを選んだ理由を尋ねると、「先生が言ったのと同じ所」と答えました。3つが該当していることだけに焦点を当て過ぎてしまい、全体の雰囲気というのは全く気にならなかったようです。
選択肢の中に、「使って良いか質問する」なんて選択肢があっても良かったかもしれません。
選択肢が広がるチャンス
高速バスの乗車時間まで1時間ほどあったので、生徒達は持参した3DSで遊んだりして時間を潰していました。そんな中、ある生徒(中学3年)がトイレに行きました。
しばらく待ちますが、なかなか帰ってこない。15分経ってようやく帰ってきたのですが、どこのトイレに行ってきたかと尋ねると、グランフロント大阪から高速バス駐車場に向かう途中に全員で立ち寄ったトイレに行ってきたとのこと。結構遠いです。
実は、高速バス駐車場内、コンビニ、公園内、ホテルといった、トイレが設置されている施設はすぐ近くにありました。
そこで、「近くにトイレがあるけど知ってた?」と質問をすると、「え?!」とビックリしていました。
どうやら、そういった場所でトイレを実際目にしていなかったため、生徒の中ではトイレの選択肢が1ヶ所しかなかったようです。
これは選択肢を広げるチャンスだと思い、私は急遽「高速バス駐車場」「コンビニ」「公園」「ホテル」「誰かの家」「友達の家」「先生の家」という選択肢をスマホに入力して、生徒に提示しました。
私「この近くにあるのはどれ?いくつでも言って」
生徒「高速バス駐車場、公園、コンビニ」
私「おしい、ホテルもあるで、見てみ」
生徒「ほんまや」
私「でだ、この4つの中でトイレがついているのはどれやと思う?」
生徒「ホテル、公園」
私「実は駐車場、公園、コンビニ、ホテル全部ついてる」
生徒「そうなんや」
私「じゃあ、この4つの中で、〇〇君にとってトイレを借してくださいと言いやすいのはどこやろう?」
生徒「・・・・・ホテル?」
私「なかなか敷居が高いところを選んだな。試しに、そこのホテルに行ってみるか」
こんなやり取りをして、実際ホテルのトイレに一緒に行きました。
また、駐車場内のトイレに行く機会もあり、生徒の中でトイレを利用できる場所の選択肢が2箇所増えました。選択肢が広がる良い機会になりました。
余談ですが、コンビニはまだ選択肢の中に入っていないようです。課外活動を通して、コンビニでトイレに行く機会を作りたいと思います。
選択肢を選ぶ以前の問題
横浜中華街で焼き小籠包を買った時のことです。
ある生徒が焼き小籠包(パックに入っている)を買うと、店員は忘れていたのでしょう、割り箸がついていませんでした。
割り箸がなければおかしいと感じ、店員に言って割り箸を貰うものですが、その生徒はしばらくじっと小籠包を見て、突然パクっと犬食いをしたのです。いやはや驚きました。
成績優秀で普段そういう事をしないタイプなので、何故そういう行動に至ったのかを質問しました。
私の驚いている表情を見て、何か悪いことをしたと察知したようで、オドオドしながら「無いものやと思った」と言いました。
お箸がついていない時の対処方法の選択肢があるないという問題ではなく、そもそもお箸がついていない商品という判断をしてしまったようです。これは社会性の低さ故の判断と行動です。
ASDの人の中には、間違った判断でこういう事をやってしまうのだと、私自身新しい学びになりました。
生徒には、こういうパックに入っている食べ物はお箸がついているものであることと、お箸が無ければ店員に言って貰うよう説明しました。
まだ計画段階ですが、どこかのお店の人に頼み、意図的にお箸を渡さないようにしてもらって成功体験に繋げたいと思っています。
様々な場面での選択肢を増やすには経験して学んでいく事が一番です。また、こういう社会性を学ぶのも経験が一番効果的だと、私は思います。
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