幼児と小学生が一緒にできるソーシャルスキルトレーニング

幼児と小学生ができるソーシャルスキルトレーニングとなると、どうしても内容を幼児向けになってしまいがちですが、今回ご紹介するのは幼児に合わせる必要のない内容になっています。

なんちゃってカーリング

私はソーシャルスキルトレーニングだからといって、ソーシャルスキルの部分にだけ重視しているのは好きではありません。

可能な限り、分析する力(見る力含む)や巧緻性といったことも同時に養って欲しいと考えています。

今回は「なんちゃってカーリング」ということで、的となる部分を協力して作ってもらった上でゲームを楽しむという流れ。

「相手の動きを意識しながら協力してつくる」「ゲームは割り込まずに順番に行う」といったねらいをもってやりました。

分析する力

私が見本として製作した的を提示し、この的を作るには何が必要かを分析してもらって発表してもらいます。

三色のテープを使っている、テープの上に数字が書かれていることはすぐに気が付きました。

しかし、円を描きながらテープを貼る方法がなかなか分かりません。

実は鉛筆で円を描いているのですが、見る力(専門用語で図と地)が弱い人はなかな気が付かないこともあります。

じっと見続けていると、小学生のA君は「鉛筆で描いている!」と大きな声を上げ、それを聞いたBちゃんは、なるほどといった表情をしていました。

三色のテープ、えんぴつ、ボールペンが必要というところまでは比較的容易に分かりましたが、テープを切るハサミは出ませんでした。

ハサミはテープを切る上で必要ですが、的を構成するのに直接的な関わりはなく、むしろ間接的な関わりです。

テープや鉛筆は見える情報ですが、ハサミは見えない情報と言えます。だから出てこなかったのです。

発達障害のある人の中には、予測や計画するのが苦手と言われていますが、その見えない情報が分からないというのが要因の一つとして挙げられます。

ただ、多種多様な経験をしていくことで、経験則から見えない情報に気が付けるようになる生徒の姿も見てきました。

私が生徒達に色んな場所へ連れて行き、色んな体験をさせる理由の一つがそれです。

次に役割を決めます。

どういう役割があるかを訊いた上で、ハサミで切る人、書く人、テープを貼る人という3つの役割を生徒は話し合って決めてもらいました。

その結果、Bちゃんはハサミで切る人になり、書く人とテープを貼る人はA君となりました。

年齢を考えると、ハサミは小学生になるものですが、Bちゃんが自ら「切る」と言ったのです。

Bちゃんは年齢の割にハサミを使うのは上手いとは思っていましたが、自己主張するほど自信があることに驚きました。

自然なコミュニケーション

ソーシャルスキルトレーニングの難しさは、教科学習みたいに覚えれば良いというわけではありません。

学んだことを自然な流れで行動できて、初めて身に着いたと判断できます。

身に着くには、お得感を感じる、褒められる、認められる等の要素が必須で、良い行動をした場合はすぐに指導者が反応しなければいけません。

まずはA君が鉛筆を使って机の上に円を描きます。

適当な大きさで良いのですが、私が提示した的と同じぐらいの大きさにしなければいけないとこだわり、何度も消していました。

その様子をBちゃんはボ~と見ていましたが、A君がゴミ箱を持って消しカスをゴミ箱に入れていると、Bちゃんは何かを思い出して、自らゴミ箱を手に取ってお手伝いを始めたのです。

マンツーマンのレッスンで、「人が消しカスを捨ててる時にどうしたら喜んでもらえるか」を教えたのをBちゃんは思い出し、行動に至ったのでしょう。

A君は自然と「ありがとう」と言っていたので、二人とも満点な行動でした。

テープを切る前に、ぴったりひっついたテープを指先で少しひっかいて先っぽを出す必要があるのですが、それはBちゃんにとっては難易度が高く、「できない~」と困り果てていました。

それを聞いたA君は「貸してみ」と言って代わりにやってあげてました。優しいA君ですね。

テープを長く出してハサミで切るのですが、Bちゃんはテープがプラプラした状態で切るために、狙いがなかなか定まらず、一本一本切るのにが時間かかります。

そこで、テープの先を机に貼って、そこから伸ばして切るというコツを教えたところ、目から鱗だったBちゃんは、切るスピードが一気に加速しました。

この切り方のコツは、意外と園や学校ではなかなか教えられないことなので、もし園でハサミを使う機会があれば、園の先生は驚くことでしょう。

Bちゃんにテープを渡され、A君が貼っていく。

地道な作業が延々と続きます。そんな様子を見ながら一つ危惧していたことがありました。

A君は少し完璧主義者な傾向があるので、テープを貼っていく時に上手く貼れず、怒ったり、拗ねたりするのではと予想していました。

しかし、そんな様子は全くなく、完成すると「できた!」と達成感を感じていました。

二人ともやり切った感があり、自然と拍手が沸き起こって喜んでいました。

ゲーム開始

カーリングのストーンの代わりとなるものは指導者側が選ぶのではなく、生徒達に選んでもらいました。

ビー玉、消しゴム、サイコロ、おはじき、ビーズ、小さいカード、スゴロクの駒。

あえて選択式にしたのは、滑り具合や転がり具合、止まり具合がそれぞれ違うということを学んで欲しかったからです。

そのねらい通り、Bちゃんは最初ビー玉を使い、転がるだけで止まらないことを知り、馴染みのあるスゴロクの駒を選択。

A君は色々試した結果、消しゴムが一番自分にしっくりくると判断。

さりげないことですが、試した上で判断するという経験は、合理的な判断力にも繋がるので大切です。

ゲームのルール自体は簡単で、黄色テープ内に入ると10点、赤色テープ内に入ると20点、青色テープ内は30点、真ん中の黄色テープ内は50点とし、5回チャレンジして合計得点で勝敗を決めます。

私も本気で一緒にやったところ、A君が圧倒的な得点をたたき出して一位になり、Bちゃんと私は同点の2位になりました。

不器用さのあるA君ですが、やり方を理解し、チャレンジし続ければ指先の力のコントロールが利いてくるタイプのようです。

的を製作できた達成感からか、強い高揚状態になったBちゃんは順番を守ってゲームをするのが難しくなっていました。

高揚状態ということは、それだけ製作が楽しかったという証明でもあるので、落ち着けというのも変な話です。

時間の都合上、製作してすぐにゲームを始めたのが良くなかったのかもしれません。

再びやる時は、製作とゲームの間に小休憩を挟み、心を落ち着かせてから楽しんでもらおうと思います。

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