苦手な人と関わる方法~実践編~
誰しも苦手な人というのは存在すると思います。
暴言を吐く、人の揚げ足をとる、皮肉ばかり言う、睨んでくる等、言えばきりがありません。
そんな人とは関わりたくないと思いますが、学校や職場といったところでは関わらざるを得ない場合もあります。
そういう場合は極力関わらないように動いたり、報告・連絡程度の会話で済ませることでしょう。
ただ、そうも言ってられない状況もあります。例えば、ペアを組んで課題に取り組んだり、一緒に仕事をしたりです。
発達障害のある人は人間関係で苦しんでいる人が多く、友人や専門家等に相談する人もいます。
そして、「苦手な人から距離を置きなさい」というアドバイスを受けることでしょう。
それも一つの手段です。私もそれが可能なら推奨しますが、ちゃんと向き合って対処できる方法を身に着けることも大切だと常々思います。
「自分の気持ちを伝える」「人と楽しく関わる」というのはソーシャルスキルトレーニングの中でも基本的な事ですが、「苦手な人を味方(仲間)に取り込む」「苦手な人と仲良くなる」ためのソーシャルスキルトレーニングというのは聞いたことがありません。※あったらすみません。
難易度が高いからでしょうね。しかし、もしそれらが出来ると、離職する確率も低くなる(発達障害のある人は離職率が高い)のではないでしょうか。
私には長年考えてきた理論があり、ひょんなことから実践する機会がありました。今回はそのことについてお話しします。
苦手な人と仲良くなるために
ある日、生徒と一緒に登録制のバイトをする予定でしたが、生徒は病欠してしまったので、私一人だけで現場へ向かいました。
配送業をしている会社で、配送の助手が私の仕事。スタッフと二人でトラックに乗り、滋賀県各地に物を配送することに。
そのスタッフが私が非常に苦手とするタイプの人でした。
苦手(嫌い)なタイプ
会って挨拶すると、無視されるところからスタート。
運転中は一言もしゃべらず、ずっとムスっとした表情。
仕事で指示をする時は高圧的で偉そう。口調もきつい。
声が小さいので指示内容を聞き取れないことがあり、聞き返すと物凄く嫌そうな顔をする。
怒りの沸点が低く、すぐ怒る。
ミスした時のダメ出しはないが、体中から「失敗しやがって~」オーラを醸し出す。
私が苦手とする、いえ、大嫌いなタイプの人です。
正直言えば逃げたくなりましたが、ここで温め続けてきた理論を実践することで生徒達にも活かせると思い、行動に移しました。
他人が関心あることに関心を持つ
ASD(自閉症スペクトラム障害)のある人が他人とコミュニケーションをとる時に難しさが露呈する一つに、「他人が関心あることに関心を持つ」ことが挙げられます。※全てのASDの人に該当するわけではありません。
他人が関心あることになかなか関心を持てないので、会話が成立しない、一方的に喋る、会話のキャッチボールが続かないといったことが起きます。
当事者は好きなことを好きなだけ喋るので楽しいかもしれませんが、相手としては面白くなく、聞いていると徐々にしんどくなります。
逆に他人が関心あることに関心を持ち、それについて会話をすると、人はどうなっていくのか。
楽しんでもらえることは分かりますが、もっと他に好影響が波及しないかを検証です。話を戻します。
スタッフは自ら喋るタイプではないので、関心を寄せるポイントがなかなか見つかりませんでしたが、お昼時間になってようやく関心ポイントを見つけました。
スタッフはコンビニでカレーを購入したのですが、容器をまじまじと見ていたので、「どうしたのですか?」と尋ねました。
すると、「昔の容器の方が良かったよな」と応えてくれました。次に、天候のこと、今日の仕事の流れを訊いていきました。
人の態度は変えられる
昼食以降、移動中のトラック内では、スタッフ自身のことを訊くようにしました。
配送の仕事は何年になるのか、配送のどういうところが楽しいと思えるのか、配送の仕事をやりだしたキッカケは何なのか、ガタイが良いので何かスポーツをしていたのか等。
スタッフは徐々に饒舌になっていき、自分の価値観、過去の失敗体験(剣道を一週間で辞めた)も話してくれました。
どうやら自分のことを訊かれるのが意外と好きなタイプだったようで、スタッフの表情は少しずつ柔らかくなっていきました。
午前中の仕事の間はずっと緊張感があり、居づらい雰囲気でしたが、午後からの仕事の雰囲気はかなり良くなりました。
特に如実だったのが、あれほど高圧的な指示出しが優しい指示になったのです。
仕事が終わりにさしかかると、滋賀県はゴルフ場が多いという話になり、ゴルフに詳しいということが分かりました。
残念ながら私はゴルフには詳しくないので、話しはあまり広がりませんでしたが、他に趣味はないかと尋ねると、ゲームが好きだと教えてくれました。
外見はイカツク、そんな風に見えなかったので、かなり意外な趣味でした。
私自身もゲームは好きで、スタッフがやっていたコールオブデューティーというゲームは私もやっていたので、話しがかみ合いました。
仕事を終え、大津駅で私を降ろしてくれたのですが、帰り際に「ありがとう」と仰りました。
気難しくて感謝の言葉を述べるタイプではないと思っていたので、嬉しくて本気で泣きそうになりました。
自助能力
今回の実践は大成功と言って良いと思います。
「他人が関心あることに関心を持つ」ことが、人の態度や仕事場の雰囲気を変える効果がこれほどあるとは予想以上でした。
スタッフの態度や雰囲気が変わったことで、仕事もしやすくなり、またこのスタッフと一緒に仕事をしたいと思えるようになりました。
「他人が関心あることに関心を持つ」ことはソーシャルスキルの一つと捉えていましたが、全てにおいて好転したので、ソーシャルスキルというより、もっと広義な「自助能力」と捉える方が良いと考えます。
自助能力は大人になるにつれて必須な能力。それを身に着けるには体験と適格なアドバイス、タイミングが重要です。
では、「他人が関心あることに関心を持つ」にはどうすれば身に着くか。
意識するのは当然として、仲の良い友人や信頼をおける大人の存在が必須です。
そして、関心を持つことで相手が喜んでくれているということに自ら気が付くことで、身に着く可能性が高まります。
相手が喜んでくれたという成功体験の積み上げと気づき、これに尽きるでしょう。
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