不安先行型の子供がアトラクションを克服する方法

活動中は不安にかられることがないひだち教室長の安藤です。

課外活動で、2つあるグループの内の1つはひらかたパークへ行きました。

ひらかたパークはアイススケートの練習によく利用しますが、今回は別のねらい。

不安先行型の子供がアトラクションを克服していく様子をお話ししたいと思います。

不安先行型とは

ASD(自閉症スペクトラム障害)の人は、新しいものが苦手な傾向があります。

ASDの特性として、イメージがしにくいというものもあります。

経験が乏しかったり、失敗経験が多いと、苦手意識や不安が強まることもあります。

このタイプは楽しさよりも不安が先行していまいます。

そのため、「イヤ」「無理」と言う回数が増え、成長する機会が失われることが多々あります。

出来る能力があるのに、嫌がるからという理由でさせないと判断するというのは非常に勿体ない。

勿論、本当に無理なケースもあります。

子供をしっかりと把握した上で、出来ると思ったらチャレンジさせるべきだと私は考えています。

分析した上でチャレンジをさせる

今回お話しするBちゃんは、乗れるアトラクションと乗れないアトラクションが極端に激しい。

年齢的に問題なく乗れるアトラクションも激しく拒否します。

幼児が楽しめるメリーゴーランドも無理とのこと。

拒否する原因として、感覚が過敏というのも考えられます。

しかし、保護者からの話や普段Bちゃんと関わっていて、そういう様子は見られません。

経験のないアトラクションを見ると、不安が先行してしまうタイプなのではと推測しました。

このタイプは、経験すれば意外と平気という可能性が高い。

そこでどうアプローチをするか。

まずは事前にルールを設定することが重要です。

「1人1~2つは苦手なアトラクションに必ずチャレンジしましょう」というルールを事前に全員に設けました。

ルールを全員に設けることで強制力が働き、無理が効きます。

ただし、これは自分にも適用されるので、覚悟がいります。

後は子供の様子や反応を見ながら、ケースバイケースで対応です。

想定内の号泣

ピピンとポピーのくるくるヘリコプター。

これなら楽しめるだろうと思えるものをいくつかピックアップして勧めました。

予想通りBちゃんは全て拒否。

保護者からは事前に聞いていましたが、なかなかの拒否っぷりでした。

大学生のCさんが誘っても乗りたがらなかったので、私は毅然な態度をとって一緒に乗りました。

動き出すまでは大号泣。

しかし、動き出すとピタっと泣き止みました。

イメージしていたのと違ったようです。

感想を訊くと、「楽しかった」とのこと。

サイクルモノレール。

次のアトラクションはてんとう虫に模した乗り物で、自転車のように漕ぎます。

Bちゃんは再び拒否で号泣。

しかし、今度はヘリコプターの時とは違う泣き方で、若干の違和感がありました。

悪いイメージや不安が先行しているだけでなく、試し行為の可能性も出てきたので、選択肢を提示しました。

「私と一緒に頑張って乗る」「Cさんと一緒に頑張って乗る」の二択。

すると、Cさんと一緒に乗るを選択しました。

乗ってみると、Bちゃんはピースをするほど喜んでいました。

Cさんは「あんなに泣いてたのに・・・」と唖然としていました。

号泣するからと言って、させないのは良くない。

喜びや楽しみを知る機会が減り、可能性も潰してしまいます。

周りの声かけや態度次第では前進することは多々あります。

それを実践できて良かった~と心の底から思いました。

因みに、Bちゃんはこのアトラクションにすっかりはまったようで、2回乗りました。

想定外の頑張り

あたま系アスレチック ヤッテミ~ナ。

頭を使ってアスレチックをクリアしていく知育型アスレチック。

一番最初にやってもらおうとした時は、逃げだすほどの拒否反応を示しました。

サイクルモノレールに乗れた喜びのままアスレチックに向かうと、態度は一変。

拒否することはありませんでした。

自信がついて、気分がのってきたのでしょう。

出来る能力はあると思っていましたが、問題はどこまで頑張れるか。

途中でイヤになって逃げだすのではと、少し心配でしたが、物凄く頑張りました。

こんな斜めになった坂道も、手と足を使って賢明に進みました。

頑張る姿勢を見られて感動です。

メリーゴーランド。

メリーゴーランドの揺れが怖くて乗れないというのは保護者から聞いていました。

そこで一計を案じました。

「大丈夫やから」と言って不安がとれない可能性がありました。

そこで、Bちゃんの聴覚優位を活かすことにしました。

「馬車ならBちゃんもいけるんちゃうか」と、Bちゃんに聞こえるようにCさんと会話をしました。

そう前置きをした上で、「馬に乗るか」「馬車に乗るか」を提案。

Bちゃんは馬車を選択。

これらの効果もあって、Bちゃんは嬉しそうに乗っていました。

絶叫の滝バッシュ。

いわゆる急流滑りのアトラクション。

なかなかスリルがあるので、これは難しいかなと思いました。

ところが・・・。

帰る時間が近くなり、最後に乗るアトラクションはどれにするかという話になりました。

私は出来れば全員で乗れるものと考えていました。

バッシュは保護者が付き添っていると幼児でも乗れるということが分かり、乗ろうという流れになりました。

当然のようにBちゃんは嫌がります。

「怖い~、嫌や~」と大号泣。

苦手なアトラクションをこれまで頑張ってきたので、無理強いはしないでおこうと思いました。

でも、とりあえず「みんなと一緒だから大丈夫」と励ましてみました。

Bちゃんは聞く耳持たず。

すると、どうしても一緒に乗りたいと思ったCさんは行動を起こしました。

Bちゃんを少し離れた所に誘い、説得を試みたのです。

3分程かけて説得しましたが、効果なし。

Bちゃんは再び号泣。

万事休すかと思っていたら、Bちゃんが泣きじゃくりながら「最後に自転車乗る~」と言い出しました。

もしかしたら、最後はサイクルモノレールに乗ると決めていたのかもしれない。

そこで、Cさんは提案しました。

Cさん:「バッシュに乗ったら、最後に自転車やろう」

Bちゃん:「イヤ~!!」

Cさんは困惑の表情が濃くなります。

私はある作戦を閃きました。

全員を先にバッシュの行列に並びに行くように指示してから、Bちゃんに提案しました。

私:「分かった」

私:「これから先生と一緒に何か頑張ってから自転車する?」

私:「それとも、皆と一緒にバッシュをしてから自転車をする?どっちが良い!?」

Bちゃん:「みんなと乗る~」

その言葉を聞けたらすぐに行動です。

行列に並んでいた指導者を呼び、Bちゃんを列に加えてもらいました。

CさんはBちゃんが「乗る」と言い出したのが不思議でならなかったそうです。

ポイントは、皆がいないという環境を作り、寂しさを感じさせること。

その上で、皆と一緒にバッシュ+好きなサイクルモノレールという選択肢を提示します。

作戦通り、皆と一緒にバッシュを選びました。

自分で選んだ事はちゃんとやる傾向が強いBちゃん。

不安になりながらも、見事バッシュを体験できました。

滝から落ちてきた時は、キョトーンとした表情をしていましたが、泣いていませんでした。

感想を訊くと、「楽しかった」とのこと。

その後、最後に乗ると決めていたサイクルモノレールに乗りました。

イルミネーションの前で写真を撮って、楽しく終わりました。

今回の活動で、Bちゃんは経験のないアトラクションが怖いというイメージを克服できたかは分かりません。

しかしバッシュに関しては、もう一度同じメンバーで乗ったら克服できるだろうと思っています。

Bちゃんは自分がイメージしていることと現実が違うという事を体感しました。

意外と平気であるということを少しは知れたと思います。

この調子で色々チャレンジしてもらって成功体験とし、自信にも繋げていきたいですね。

生徒達のアトラクションを克服していく姿を見ると、やりがいを感じます。

大変だったけど、楽しい一日でした。

最後に。

誰にでも苦手なものはあるので完全な克服は難しいです。

でも、経験によって克服できそうなアトラクションなら、チャレンジさせるのが良いと思います。

保護者がチャレンジさせようとすると、反発が強くて逆効果になる事があります。

そういう時は他人に任せるのが良いでしょう。

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