先生と保護者の隔たり
長年この仕事をしていると、保護者と先生の考え・認識に大きな隔たりがあると感じることがあります。
立場が違うから当然という方もいると思いますが、その隔たりによって子供にまで影響が及ぶこともあります。
そんな隔たりを無くすために、コーディネーターがいたりするのですが、現実はそう簡単ではないようです。
隔たりとは
これから書くことは、私が実際見聞きしたことと個人的な意見です。
全ての保護者・先生が当てはまるわけではありませんが、こういう認識をしている保護者・先生もいるんだと知って頂ければと思います。
立場上、保護者から相談を受けることが多いですが、先生から相談を受けることもあります。
両方からの話を聞くことで「あれ?」と思うことは度々あり、保護者と先生の認識がこうも違うかと驚かされることもあります。
先生だから分かってくれている
保護者の中には、全ての先生が発達障害に関する知識や対応がしっかりできると思っている人もいます。
そんな思いがある状態で、先生から「何をしましょうか?何か良い案があったら実行しますので、教えてください」と言われると、こんな頼りない先生が一年間一緒なのかと頭が真っ白になり、パニックに陥る保護者を何人か見てきました。
確かに発達障害に詳しくて対応が上手い先生もいますが、思っているほど多くないようです。
ほとんどの先生は学校研修等で発達障害について学んでいますが、ASDやADHD、LDの概要といったほんの触りの部分だったり、誤学習しているケースもありました。※誤学習については、後述しています。
先生は多忙な中、様々な種類の研修を受けています。特別支援教育はそんな研修の一つに過ぎないので、全ての先生が理解してくれているという過度な期待をしない方が良いのかもしれません。
「詳しい先生が担任になったらラッキーと思う程度にしています」という保護者の達観したような発言は未だに印象に残っています。
因みに、前述した「何をしましょうか?」という発言は、保護者との信頼関係が一気に崩壊するので、絶対言ってはいけないキーワードです。
特別を意識し過ぎている
保護者にとって支援というのは日常のことで、特別なことではありません。
しかし、特別支援教育と言う名のせいか、「特別」を過度に意識している先生が結構います。
「特別」なので専門性が高く、特別な知識や関わり方があると思い込んでいる節があります。
「特別な知識や技術がないから、この子達(発達障害児)と関わるのは自分には無理です」という発言も実際聞きました。
はたしてそうなのでしょうか?
確かに、子供の観察や分析時に専門的な知識を使うことはありますが、実はそういった専門的な知識がなくても上手く関わり、伸ばせている先生はたくさんいます。
「特別」に惑わされず、その子自身にしっかりと向き合うと、関わり方は見えてきます。
人間です
以前、学校研修会の講師として呼ばれた時に事前質問アンケートをとったのですが、明らかに誤学習をしているという内容のことが書かれていました。
「発達障害のある生徒に対しては、具体的な指示が大切で、カウンセリング的な対応をしても心が通じ合わないという事を聞きました」
「クラスメイトにからかわれたら悩む、教員の指示が不適切だったら怒る、良い反応をしてくれた人に対しては好意を示すといった姿を見るので、そのあたりの理解、バランスのとり方が難しいです」
これらを読んだ時、発達障害のある子供と心が通じ合わないという趣旨の発言をした講師に憤りを感じました。
同時に、普段発達障害のある生徒と接しているのに、それを鵜呑みにしてしまっている先生がいるのも怖いなと思いました。
心が通じ合うのに時間がかかったりしますが、心が通じ合わないということはありません。断言します。
発達障害があると、悩んだり、怒ったり、好意を示さないと思っているのでしょうか?
人間なら誰もが示す反応で、意外でも何でもありません。
研修会の時に声を大にして言いました。
「発達障害がある子供や大人も人間です。その子達を見る時に、先に発達障害を見るのではなく、人としてを見てください」
感銘を受けて頂けた先生もいれば、なるほどといった表情をした先生もいました。
分かって頂けて少し嬉しかったですが、これまではそういう認識が希薄だったんだなとも思いました。
このような根底となる部分の認識の違いは、先生と保護者との間に隔たりを生じさせている要因の一つなのかもしれません。
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