働くために必要な力は職場以外でも身につく
以前は就労支援についてお話しましたが、今回は、働くために必要な力についてお話したいと思います。
※全ての発達障害児・者にあてはまるわけではありません。
Contents
社会人基礎力について
経済産業省は社会人基礎力なるものを提唱しています。
「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの能力と、それを構成する12の能力要素によって成り立っています。
これら3つの能力は確かに大切ですが、発達障害のある人を考えると、難しいものもあります。
前に踏み出す力
物事に進んで取り組む力、他人に働きかけ巻き込む力、目的を設定して確実に行動する力という3つの能力要素に分けられます。
物事に進んで取り組むは、興味・関心のあることなら健常の人以上に強い力を発揮すると思います。
他人に働きかけ巻き込むは、意図的に働きかけようと試みても言い方が良くなかったりして、逆に相手のモチベーションを下げてしまうことがあります。特にASDの人はそういう事になりがちです。
ADHDの人(特にHDDタイプ)は勢いがあるので、働きかける力はあると思いますが、勢いがありすぎてそれが相手にイラっとさせてしまうこともあります。
目的を設定して確実に行動するは、ASDとADHDとでは原因が違いますが、計画して行動するのが苦手な事が多いです。
しかし、ASDの人は好きなことや計画の立て方のフォーマットを知っていると出来ることがあります。
ADHDの人は目的を設定するものの色々すっ飛ばしてしまいがちですが、結果的には目的を達成することもあります。それを良しとするか良しとしないかで、今後の仕事に対するモチベーションが大きく変わります。
考え抜く力(能力)
現状を分析し目的や課題を明らかにする力、課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力、新しい価値を生み出す力という3つの能力要素に分解できます。
特性上一見難しいですが、誰かと話し合いながらだと出来るというケースもあります。実際、私はそういう人(ASD)と関わったことがあります。
変わった分析をすることもありますが、私と意見を交わしながらやっていくと、問題を解決する方法までたどり着きました。その経験を踏まえると、決して出来ないわけではない。ただし、他者の意見が必ず必要です。
新しい価値を生み出すのは、ADHDのある人は特性上得意分野だと思われます。ただ、その発想力は意図的に操れるわけではなく、突然閃くことがよくあります。
ASDの人は苦手と言われていますが、斜め上な発想をできる生徒を私は担当した事があります。
チームで働く力
自分の意見を分かりやすく伝える力、相手の意見を丁寧に聞ける力、意見の違いや立場の違いを理解する力、自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力、社会のルールや人との約束を守る力、ストレスの発生源に対応する力という6つの能力要素に分けられます。
これは発達障害のある人にとってはかなりネックな部分です。特性故に苦手とするものばかりですが、社会のルールを守る力は比較的あると思います。しかし、ルールを守り過ぎる傾向が強いことが多いです。社会のルールの中には暗黙のルールが存在し、それは教えてもらわなければ理解が難しいです。
企業が雇用する際に重視する事項
上記のように経済産業省は言っていますが、企業側が求める人材は少し違うようです。そして、これから書く事項を身につけるためには、どうすれば良いかを、私なりに書きたいと思います。
作業意欲があること
作業意欲は勿論必要ですが、どういった部分でモチベーションを上げるかです。
仕事事態が面白くて意欲が高まるのか、お金が欲しくて意欲が高まるのか、モチベーションの上げ方は様々です。
ただ、作業意欲を高める前に、仕事をしようという考えを構築する必要があります。そのためには「お金が欲しい」という強い思いを、子供の内から持たせることが大切だと私は考えます。
どうすれば良いか、それはお小遣い制にすることです。一見簡単そうに見えますが、家庭環境によっては難しかったりするようです。
長年教師をやっていて思うのは、お小遣い制の子供と欲しい時に欲しい分だけ貰える子供とでは、後々の仕事(バイト)に対する意欲が違います。
また、お金に対する価値観も違うようで、前者は1万円が高いと実感としてあるが、後者は1万円は高いということは知っているが言葉の端々で大した額ではないという認識を持っていたりします。
働く理由は第一にお金を貰うことなので、まずは「お金が欲しい」という気持ちを持てるようにすることが、子供の内から出来ることです。
作業意欲を高めるにはどうすれば良いかを考えるのはそれからです。
身辺処理ができること
自分の事は自分で出来るというのは当たり前です。そこまで面倒をみる余裕が企業にはありませんので、身辺処理が出来るようにする必要があります。
大人になってから出来るように指導しようとすると、意外と時間と労力が必要なので、小さい内からいかにして身につけさせるかが重要です。
そのためには、幼児の頃から習慣化を図るのが良いです。服を畳む、掃除機をかけるといったことを一緒にやり続け、成功体験にすると比較的習慣化しやすいです。子供が大きくなればなるほど習慣化は難しくなるので、小さい内からがカギです。
作業の持続性があること
同じ作業を繰り返すのが平気という人は一体どれぐらいいるのか、懐疑的な事項です。
ASDの人は興味がある仕事ならば続きますが、興味がなければ苦痛でしかありません。
ADHDにいたっては、同じ作業を繰り返すのは集中力の持続が難しく、ミスが増えやすいです。
持続性を求めるなら、ASDの人には興味を持つ仕事を割り振る、ADHDの人には刺激(変化)のある作業を任せると持続しやすいです。
子供の内から持続性を求めるトレーニングを行う事は、個人的には反対ですし、あまり意味がないと思います。
それよりも、課題や仕事をやりきる力を身につけることの方が重要です。
ルールを守ること
理解したものはルールを守りますが、不注意などでしっかり聞いていない状態の時に説明されたルールは守れないこともあります。
ASDの人は急に自分ルールを発動することがあるので、徹底する必要があります。
ソーシャルスキルトレーニング等で、子供の内からルールを守る大切さを教えていきたいです。
もっとも、本当の意味で大切さを理解するには、ルールを守らなかった時の失敗体験が一番効果的です。もちろんフォローは忘れずに。
同僚と協調できること
協力し合うことは大切です。それが出来ないと、戦力として難しくなります。
協調できるかは同僚との共感性で大きく左右されるので、共感性が高まるようなイベントを行う等の配慮を企業には求めたいです。
協調できる人間に育てるには、子供の内から自分をさらけ出せるグループ(例:クラブ・サークル)に所属し、協力しあいながら苦労して目的を達成するという成功体験を積むことが効果的です。
職場であいさつや返事ができること
挨拶は基本です。出来る、出来ないとで第一印象がガラっと変わります。基本中の基本ですが、出来ない人もよく見かけます。
子供が小さい内は、保護者や園(学校)の先生が手本を示すのが良いですが、思春期に入るとあまり効果はでません。
思春期に入ると、子供同士の影響を受けやすいので、挨拶ができる子供と一緒に過ごす時間が多いと身につきやすいです。
一番効果的なのは、体育会系のクラブや団体に所属することです。必ずといって良いほど挨拶を強く求められるので、身につきます。
多種多様な仕事をして身につける
仕事場以外からも働くために必要な力は身につきますが、やはり本当の体験(バイト)をして身につけるのが一番効果的です。
職種によっては、求められる能力・スキルが違いますが、上記の事項がどんな所に行っても求められるということに気付く機会になります。
色々な仕事を体験してそれに気づくと、必要な力を身に付けるモチベーションとなって学びやすくなり、身につきやすくなります。
一つの所に長く勤めることも良いですが、色々な仕事(バイト)を体験する方が後々役立つと、私は考えます。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。