発達性協調運動障害を改善するためのトレーニング
カッター使用禁止令を出されたことのあるひだち教室長の安藤です。
発達障害のある人は手先や運動が苦手という人は多く、当教室に通われている生徒の中にもいます。
今回は発達性協調運動障害についての説明と、私がお勧めしたいトレーニングについて書きたいと思います。
・屋外でのトレーニング
・屋内でのトレーニング
・家庭でやってほしいトレーニング
※全ての発達性協調運動障害のある人に効果があるわけではありません。効果がある人がいて、こういうトレーニングもあるんだという認識で読んで頂ければと思います。
Contents
発達性協調運動障害とは?
協調運動とは、手と足、手と目といった別々の動きを一緒に行う運動のこと。
キャッチボール、縄跳び、定規を使用しての線引きといったものが例として挙げられます。
発達性協調運動障害は、日常生活における協調運動が年齢や知能のわりには不正確で、困難であるという障害。
不器用な人の中でも極端に不器用な人という認識で大丈夫です。
当教室にも発達性協調運動障害と診断された生徒がおり、子供の時のエピソードを聞くと、お箸の使い方が下手だったり、運動が苦手だったそうです。
その生徒は現在大学生で、当教室で色々な体験活動をしていますが、私の方が不器用と感じる場面が多々あります。
その生徒のエピソードはまた後半に書きたいと思います。
不器用さが治るかと保護者から尋ねられることがありますが、根本的には治りません。
しかし、色々な体験によって間違いなく改善します。
感覚統合療法や作業療法といった専門家にお願いするのもありですが、家庭やその他機関でトレーニングすることもできます。
屋外でお勧めするトレーニング
アスレチック。
昔、ペアレントトレーニングの先生に言われた言葉。
「発達性協調運動障害はアスレチックをたくさんやらせたら良いのよ」
それを聞いた私は最初は懐疑的でした。
しかし、実際アスレチックを生徒達に体験させると、身体の動きが非常に滑らかになっていきました。
年に数回経験するだけでも、出来なかったことが出来るようになる様子が見られます。
もし毎週1回という頻度にしたら、かなりの改善が見込めると思います。
ただし、アスレチックを体験させれば良いというわけではありません。
効果を高めるために、指導者には下記のことが求められます。
①子供の苦手な動作、得意な動作を把握
②どこまでサポートをして、どこから一人でやらせるかを見極める力
③怖がる子供への勇気づけ
運動が苦手な子供は自己評価(運動に関する)も低くなりがちです。
出来るのに出来ないと言い張ることがよくあります。
それをさせるために、指導者は①②の力をつけ、③を実践してほしいです。
屋内でお勧めするトレーニング
レベル高めの工作。
年齢に沿った、子供の能力に見合った工作をするのもありです。
しかしそれでは、トレーニング効果が薄いと個人的には考えています。
当教室ではワンランク上の工作を目指しており、年齢・能力以上のことを行っています。
レベル高めの工作の利点は3つ。
・最終的な出来栄えが悪くない(子供が満足するケースが多い)
・少し難しいと伝えているので、上手く出来なくても受け入れやすい
・保護者や周りの人達に驚かれるから自尊心が高まる
やり始めの時はカッターやハサミを使うのが危なっかしく、テープを上手く巻きつけるのにも苦労するでしょう。
指導者は積極的にサポートをしたくなりますが、あえて最小限にとどめます。
効果を実感できるのに時間はかかるかもしれませんが、必ず変化が出てきます。
家庭でやって欲しいトレーニング
お手伝い。
不器用さの改善に習い事を利用するのも一つの手です。
しかし、継続しやすいトレーニングの方がより効果的です。
継続しやすい一番の環境は家庭で、継続しやすいトレーニングというのがお手伝いです。
利点を挙げたらきりがないほど、お手伝いは最高のトレーニングです。
・継続しやすい(役割を与えやすい)
・感謝される
・自信に繋がる
・将来一人暮らしをした時に役立つ
・将来の仕事に使える
保護者から色々な質問を受けます。
保護者:「どんなお手伝いをさせれば良いですか?」
私:「何でもやってもらったら良いです」
上の画像にあるように、氷が入った袋の口を結んでもらったりするのも良いです。
洗濯ものを干したり、服を畳んだりするのも良いです。
保護者:「たまに手伝ってもらっています」
私:「役割を与え、毎日やってもらうとトレーニング効果が高まります」
不器用な子供にはやり方を教えた上で、とにかく経験させなければいけません。
保護者は心配となかなか上達しないことにイライラするでしょう。
それでも頑張って経験させてください。いずれ出来るようになります。
「将来の仕事に使える」で補足があります。
人によっては、将来の仕事が軽作業や単純作業がメインになる人もいます。
軽作業や単純作業はお手伝いをたくさん経験している人ほど効率よく作業ができる傾向にあります。
ぜひ、子供の内からお手伝いをたくさん経験させて欲しいです。
アスペルガータイプの人は難しいことを考えるのは比較的得意だが、一般的に簡単な作業と言われる作業を苦手とするケースが多いです。
簡単な作業が出来ない(例:紐を上手く結べない)と、職場で馬鹿にされことがあります。
一回でおさまれば良いですが、しつこく馬鹿にされ続けることがあります。
そうなると自尊心が傷つき、離職に繋がることもあります。
その可能性を少しでも低くするために、日々お手伝いをして熟練度を高めるというのは有効です。
大人にもトレーニング効果はある
上の2枚の画像は、香川県でさぬきうどん打ち体験をした時のものです。
1枚は発達性協調運動障害と診断を受けた生徒(大学生)が切ったうどん。
もう1枚は、診断はないが不器用な生徒(大学生)が切ったうどん。
どちらが診断を受けた生徒のうどんだと思いますか?
実は下のうどんです。
診断を受けた生徒は、家庭の事情で毎日家で料理を作っています。
毎日やっているから包丁の熟練度が上がり、物凄く上手く切れるようになったのです。
日々の積み重ねがいかに大事かがよく分かりますね。
発達性協調運動障害のある人はやり慣れていない作業をすると不器用さが目立ちます。
しかし、経験して熟練度を高めることで改善されることがあります。
いくら練習しても無理な場合もありますが、やり方を変えたら出来るようになるという話も聞きます。
自分に合ったやり方を模索するか、誰かにアドバイスを求めるのも良いです。
それでも無理な場合は、見切りをつけましょう。
指導のコツ
技術が実用的なレベルに達するためには、指導のコツというものがあります。
①手本を示した上でやってもらう
②成功体験を積ませる
③完全に任せる
手本を示す時は、その子が覚えられる範囲で示します。
というのも、動作を一通り示してからやってもらうと、覚えられないことが多いからです。
動作を細分化(スモールステップ)で示してください。
成功体験は一度では足りません。
自信と確信を持てるようになるまでには二度、三度と必要です。
完全に任せるというのは、その子を信じているという表現でもあります。
任せた上で、「ありがとう」と最後に感謝の言葉を述べることで、自己肯定感が高まります。
そうなると、その次からは「え?」と我が目を疑うほど出来るようになっています。
恐怖やトラウマは逆効果
なかなか出来ないからといって怒ったり(注意)すると、子供は手先が震えだします。
震えながらも出来ますが、成功体験にはなりません。
むしろ、怒られなくて良かったという安堵感の方が強いです。
トラウマ級の苦手な動作(例:自転車)をさせようとする場合は、細心の注意を払う必要があります。
子供は乗れるように頑張りますが、過去の失敗経験を思い出して必要以上に焦り、身体が硬直します。
硬直は無意識なので、「力を抜いて」と言葉で言っても、さほど効果はありません。
乗れなくても、出来ている部分をたくさん指摘して褒めていくと、少しずつ硬直はとけていきます。
発達性協調運動障害の人は出来ないことに対する劣等感を抱えています。
しかも周りが思っている以上に大きな劣等感です。
支援者や指導者、親は慌てずに長い目で関わって欲しいと思います。
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