ASD(自閉症スペクトラム障害)のある人を生かす仕事術

厚生労働省が精神障害や発達障害がある人の働き方を支援するべく「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座を開催するなど、多くの人がそれぞれの特性を知り、深く理解できるような仕組みが整いつつあります。

しかし、業務を進める中ではとまどうことも多く「発達障害のある人は集中力がないから仕事が遅い」といった話をよく聞きます。

逆に「好きなこと(予測できる範囲)ならいつまでも集中できる」といった声も耳にします。

長年、発達障害のある子どもや大人に携わる仕事をしていると、確かに集中できる場面と集中できない場面を見かけますが、仕事ができない要因が「集中力の低さにある」とすぐに判断するのは間違いです。

実は集中力とは違う要因が仕事の効率化を阻害するケースがあり、それが他者から見たら集中力がないと見えてしまうのです。

※これから書くことは、全てのASDのある人に当てはまるわけではありません。同じ診断名でも、できるという人は多くいます。「こういう人も中にはいる」という認識で読んでいただければと思います。

ASDのある生徒の事例

ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性として言われているのが、対人関係の障害、コミュニケーションの障害、こだわり(イメージがしにくい)の障害が挙げられます。

保護者から相談を受けると、「空気が読めない」「暗黙のルールを理解できない」「言われたことを真に受け過ぎる」「一生懸命伝えようとするが、相手に伝わる説明ができない」「初めてのものは強い拒否反応を示す」「自由に何かを描けと言われても何を描けばいいかわからず、硬直する」といったことをよく聞きます。

ただし、程度はその人によってかなり違っており、伝わる説明ができる人や自由に描くのを好む人もいます。

全てのASDの人に当てはまると思わないことが賢明です。

仕事上でのトラブル

以前、ASDと診断された大学生の生徒と一緒に単発バイトをした時の話です。

その日の仕事はピッキング作業と什器の運搬でした。私は什器の運搬で、生徒はピッキング作業を任されました。

ピッキング作業は用紙に書かれた商品があるかを確認し、確認した箱(商品入り)を別の台車に乗せていく作業で、内容的には難しいものではありませんでした。

私は小休憩している時に生徒の働きぶりを見てみると、頻繁に動きが止まっていました。

まわりの人からすると集中していないように見えますが、私は何か理由があるなと思い、仕事後の食事中に理由を尋ねました。

すると、「台車に乗せる時の箱の置き方(積み方)がわからなかった」という答えが返ってきました。箱は全て同じ重さではなく、同じ大きさではありません。置き方によってはすぐに崩れてしまいますが、やりようによっては崩れにくくもなります。それがイメージできないため、どうすればいいかわからず、たびたび動きが止まっていたのです。

問題の原因となるイメージ力の低さは経験とパターン化で解消

どうすれば前述の生徒は困らなかったのか。方法として2つ考えられます。

1つは似たようなことを経験する。

日常生活の中で考えると、買い物をした時に自分で購入物を袋に入れる。大きさや重さがバラバラな物が崩れないように意識しながら入れ、成功体験にして習慣化する。一度や二度の成功体験で終わるのではなく、いかに習慣化するか、それがカギとなります。

2つ目は箱の置き方(積み方)をパターン化。

指導者が最初にどういう風に積むかを教え、見本を示していたら問題は起きなかったと思います。また、パターン化することで理解がしやすくなり、安心感が生まれ、心にゆとりを持てます。

そうすると、作業効率が一気に上がるので、ASDの人にはパターン化というのは重要な要素です。

もし柔軟な対応を求めるのであれば、ASDの人には長めに時間を与えてほしいと思います。

なぜなら、本来の作業と一生懸命模索しながら作業をするというのは同時作業だからです。

ASDのある人の中には同時作業を極端に苦手とする人がおり、人一倍時間がかかります。

このように、集中力がないから仕事が遅いと思われがちですが、一概には言えません。

画一的な見方をするのではなく、違った観点からその人を分析するというのも有効です。

発達障害の理解向上と仕組みづくり以上に大事なこと

発達障害の理解向上のために、さまざまな会社で社内研修が行われるようになってきましたが、私が聞いた範囲では、発達障害の基礎的な部分が多いようです。もちろん基礎的な知識は必要ですが、一緒に働く現場の人達は果たして基礎的な知識を必要としているのでしょうか?

むしろ、現在一緒に働く発達障害のある人に対して、どういう対応をすればいいか、どういう環境づくりをすればいいのかなど、具体策を求めていると思います。

理解向上、仕組みづくり、特性を生かした人員配置などを考えることは大事です。

でも、それ以上に大事にしてほしいのは、発達障害者としてではなく、その人自身を知ること。

何が好きで、どういう趣味があるか、何をするのが好きか、どういう価値観を持っているのかなどを知ってほしいと思います。

共感することができれば、なおよいでしょう。

周りの人がその人自身を知ろうとする意識と行動は、孤立感や不安を和らげます。心に余裕が生まれると、いろんな場面で「おっ!」と思うようなよい効果が表れだすので、ぜひ、やっていただきたいと思います。

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