話し合いは自然な流れが効果的

8月の60キロサイクリングでは、目的地に時間内に辿り着き、豪雨体験をするという目標を達成できませんでした。

そこで、10月の課外活動は「サイクリングリベンジ!」ってことで、サイクリングをしてきました。

生徒には前回のリベンジを果たそうと伝えていますが、実は私の中では全く別の目標がありました。

話し合いの場はサイクリング

スポーツとしてではなく、一般的に言うサイクリングは、身体に良い運動という認識が大半を占めると思います。

しかし、私から見たら話し合いの場を何度も提供してくれる、コミュニケーションスポーツと思っています。

勿論やり方次第ではあります。

話し合いが苦手な人にとって、イスに座って畏まっての話し合いは苦痛です。

しかし、身体を動かしながら、自然な流れでの話し合いというのは苦痛に感じにくいです。

8月のサイクリングでは私と生徒2人だけでしたが、今回のサイクリングリベンジでは複数の生徒がいるので、活発な話し合いができると予想しました。

自然な流れで話し合いをすることで、生徒達のコミュニケーション能力や共感性を高めることを、私の目標としました。

前回お世話になった「サイクルベースあさひ 西大津店」で自転車を借りることに。

クロスバイクとロードバイクを合計6台借りました。

ロードバイク初心者がいたので、サイクルベースあさひの敷地内で軽く練習してから、スタートです。

伝える方法を学ぶ

先導する人、地図を見ながら進む道を指示する人、休憩タイムを伝える人という役割を生徒達に与えました。

役割を与えることで、話し合いが生じやすくなるからです。

人数が多いので、安全面は特に気を付けなければいけません。そこで、手信号の活用と声かけの徹底をしました。

手信号という非言語のコミュニケーション方法は新鮮だったようで、ある生徒はカッコつけながら手信号を送っていました。

その様子を見て、思わず笑ってしまいました。

「後ろから車!」といった声かけは、伝言ゲームのようにして後方から前方へと伝えてもらいます。

声が小さかったら誰かが危険な目に合う可能性があるので、大きな声でやりました。

スタートしてから20分後、さっそくトラブル発生。

A君(道を指示する生徒)「次の信号を曲がって」。

それを聞いたC君(先導者)は信号で右に曲がりました。

A君「違う!違う、こっち!!」

C君「こっちやと思ったわ」

C君は少し不機嫌気味になりました。

何故そういう事になったのか、A君は分かっていない様子だったので、私が間に入り「もっと具体的に言わないと相手に伝わらない」「じゃあ、どう言えば良かった?」と訊きました。

少し考えこんだので、「次の信号を左に曲がってと言う」と教えました

そんなこと誰でも分かると思う方もいるかもしれませんが、発達障がいの中でも相手に伝えるのが苦手なタイプにとっては、具体的に伝えるというのが苦手だったりします。

活動を通して、活きた伝え方を学ぶのも課外活動の目的でもあります。

湖西は道が狭いので、極力車が少ない裏道を進んでもらいました。

そのため小さな迷子に何度もなり、何度も小さな話し合いがもたれました。

その小さな話し合いというのは、ボディーブローのように少しずつ共感性を高めるので意味があります。

ある場所で、突然長めの話し合いになりました。

右に曲がると正規ルート、左に曲がるとどこに行くか分からないルートです。

何故話し合いになったかと言うと、A君が左に曲がった先にある不気味なトンネル(短い)に行ってみたいと言い出したからです。

皆何を言っているんだという様子でしたが、私は鳥肌が立つほど喜んでいました。

というのも、A君はASD(自閉症スペクトラム障害)と診断がおりています。

ASDの人は興味・関心の範囲が狭く、イメージが出来ない所に自ら向かおうと言うのはほとんどありません。

そんなASDの生徒が自ら言い出したから、すごく嬉しかったです。

A君とは長い付き合いで、色んな所に連れて行き、色んな体験を一緒にしてきたから、色んなことに興味・関心を持てるようになったのでしょう。

興味・関心の範囲が広がらなくて悩んでいるASDの子供を持つ保護者に、可能性という光を照らしてくれたA君に感謝です。

話し合いの末、左には曲がりませんでしたが、興味をもったらどんどん言ってほしいですね。

話し合いで解決

堅田駅に到着すると、再び迷子になりました。

私が間に入らなくても話し合いが成立し、生徒達だけで結論を出していました。

私が必要ないというのは自立心が芽生えた証拠、良い気分ですね。

生徒の足にカマキリがひっついて離れないというハプニングが発生。

興味を持ちにくいタイプのB君は非常に興味を持ち、写真を撮りだしました。

虫が好きという話を保護者から聞いたことがないので、意外な行動に驚きました。

立て続けにハプニングが発生。

B君のロードバイクがパンクしたのです。道路に捨てられた名札の針が突き刺さったためです。

たまたま近くに「サイクルベースあさひ」があったため、事なきを得ましたが、冷や汗ものでした。

どっち?ではなくなった

修理に時間を要するので、molive内で昼食をとることに。

昼食は40分ほどですましましたが、ここで問題が発生。

このままでは時間内に目的地に着かない可能性が出てきたのです。

急遽話し合いの時間をとることに。

昼食→スーパー温泉→滋賀県南郷水産センター。という計画ですが、温泉に行っていたら時間がギリギリになる。

最初は「温泉を諦めて直で水産センターに行く」か「温泉に行ってから水産センターに行く」のと、どっちにするかという話しの展開でした。

温泉にどうしても行きたいという生徒もおり、なかなか決まりません。

15分程話し合いをしていると、突然ある生徒が「水産センターに行ってから近くの温泉に行く」という第三の選択肢を提案しました。

まさかの新たな選択肢。話し合いをし続けてきたから発想できたのでしょう。

全員同意し、出発しました。

目的地の南郷水産センターへは長い道のりでした。

その間、何度も。

何度も迷子になりました。

その度に何度も話し合いをし、力を合わせて進みました。

そして・・・・・時間内に間に合いませんでした。豪雨体験ができるのは16:30までで、着いたのが16:35でした。

生徒達は肩を落とし、失敗体験になってしまったと危惧したのですが、意外なことにショックを受けていませんでした。

むしろ切り替えが早くて、温泉はどこだ!?と騒ぎだしました。

近くにある南郷温泉二葉屋で、30分だけ入浴。短時間でも入浴できたので満足している様子。

短い入浴なので、体力は少しだけ回復しました。

入浴後は順調に進みました。

琵琶湖沿いを走り、観光船のミシガンや琵琶湖の噴水を見たりして、楽しむ余裕が生徒達にありました。

無事到着。

体力的にはきつかったようで、ほとんどの生徒は疲れていました。

唯一、8月に60キロサイクリングを体験したB君だけは前回よりも体力的に余裕だったらしく、「楽しかった」と笑いながら言っていました。

今回も豪雨体験を出来なかったので、「12月にでもリベンジしようか」とB君は私に言ってきました。

サイクリングの楽しさが分かってきたようです。

今回のサイクリングでは、生徒達の目標は達成できませんでしたが、私の目標は達成できたと実感しています。

これほど自然な流れで話し合いをしている様子を見たのは初めてでした。いずれまたやりたいですね。

来年は80~100キロをチャレンジさせたいなと思っています。

自分との闘いになってくるので、これを乗り越えたらかなりの自信がつくことでしょう。

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