子供との接し方

自分の子供への接し方が分からない。そんな声をよく聞きます。

子供に発達障害があれば、その特性を加味した上での関わり方をアドバイスさせて頂くこともありますが、特別な知識がなくても良い方向へ成長することもあります。

今回はそんな特別な知識の必要のない接し方を書きたいと思います。

子供に合った接し方

子供に合った接し方を考える前に、今までどういう接し方をしてきたかを精査する必要があります。

私は保護者からアドバイスをする前に、その部分を聞くようにしています。

そして多くの方は無意識に勇気くじきをしていることが多いです。

良くない接し方

子供との接し方で悩まれている方の多くは、知らず知らずのうちに子供の心をくじいている関わり方をされています。

発達障害のある我が子と長年接していると、他の子供と比べて出来ないことが多い、失敗が多い。

そういう場面をたくさん見てくると、子供を信用できなくなり、失敗しないよう先回りをしてしまう(手伝う)保護者が結構います。

手伝う必要なこともありますが、手伝う必要がないこともやってしまいます。いわゆる過干渉というもの。

よく聞く、良くない接し方をまずはお話ししたいと思います。

良くない接し方というのは、暴力以外を指し(暴力は論外です)、保護者が無意識に行ってしまっている接し方です。

自尊心を低下させる接し方

小学5年生の子供が熱々のカレーを食べようとしたところ、火傷をすると思った保護者は横からフーフーして冷ましてあげたら子供が泣き出したという事例がありました。

客観的に見たらそれはどうなの?と思うかもしれませんが、保護者は私が指摘するまで理由が分からなかったそうです。

保護者としては子供のためにと思っての行動で、悪気もないのですが、実はその行為は子供の自尊心や自己肯定感を下げる要因になっています。

子供は、自分はこんな事も出来ないと思われている、信頼してもらえていないと感じます。

年齢が低ければ別ですが、思春期真っ只中の子供にとってはショックな出来事です。

勇気くじきな接し方

子供の成長に、保護者の「勇気づけ」というのは、子供にとって大きな力になります。

発達障害がある子供は特にこの「勇気づけ」が大切だと考えます。

しかし、逆の「勇気くじき」を行っている保護者も意外といます。

運動が苦手な小学4年生の子供の話です。運動全般が苦手で、特にボールをキャッチすることがとても難しいです。

長い期間マンツーマンの指導を受けて、キャッチできる確率が格段に上がりました。

子供は喜び、自信もついたので、保護者(父親)に見てもらいたいと思って保護者とキャッチボールをすることになりました。

最初の一球目。子供は緊張していたのでしょう、上手くとれませんでした。

それを見た保護者は「こんな簡単なこと、誰でもできるで」「お隣の一年生も出来るで」と笑いながら叱咤激励をしました。

保護者としては励ましのつもりで、子供を傷つける意図はありません。

おそらく保護者自身もこういう叱咤激励を受け、「なにくそ!」と思いながら成長してきたのでしょう。

「なにくそ!」と思い、成長できるタイプなら生きる原動力となり、問題がないのかもしれません。

しかし、我が子と言えども感じ方は全く同じではありません。

その叱咤激励はプレッシャーになるだけでなく、チャレンジ精神の低下、自尊心の低下、「こんな簡単なこともできない自分はダメな人間だ」という自己肯定感の低下に繋がります。

私が見てきた最悪なケースは、「生きる力」までも奪っていました。覇気のない子供の表情は今でも忘れられません。

発達障害あるなし関わらず、現代の子供達にこういう叱咤激励は通用しにくいです。

ある大学教授が言っていました。「無意識で悪意のない言葉は子供の成長を止める。しかし、それに気が付いていない人が多い」。

子供はさらに勇気くじきをされます。

二球目は上手くキャッチできましたが、保護者は「やっとできたか。頑張ればできるやん。なんで最初っからちゃんとせーへんかったんや」と言いました。

保護者は褒めているつもりなのかもしれませんが、こんなことを言われて嬉しいわけありません。

しかも子供の努力を全否定しています。

小学4年生の子供はそれっきりボールをキャッチする練習をしなくなったそうです。

理想的な接し方

理想的な関わり方を話しだしたらきりがありません。

また、発達障害のある子供を育てるのは難しいと感じている保護者にたくさん注文するのは酷というもの。

なので、子供と関わる際に二つだけ意識して欲しいことがあります。それは「勇気づけ」の中にあります。

勇気づけを意識した接し方

「勇気づけ」ってなんのこっちゃ?と思う人もいると思いますが、前述の良くない接し方の事例をつかうと、以下のように変えます。

フーフーして冷ましてあげる→見守る。

「こんな簡単なこと、誰でもできるで」「お隣の一年生もできるで」→「ええよ、もういっちょ!」

見守ることは自己肯定感を下げることはなく、間接的に自分は信じてもらえてると感じることもあります。

「ええよ、もういっちょ!」は、他者と比較せず、ミスを否定してもいません。

子供だろうと大人だろうと、人は勇気づけられることでチャレンジ精神がわき、自己肯定感も高まります。

発達障害のある人の中には、失敗体験を積み重ねてきたことでチャレンジ精神がわきにくくなり、ミスという行為を注意されると人格までも否定されていると感じる人もいます。

そうなると、全ての行動・言動が委縮または自己防衛に走ります。

ミスをする→怒られる→チャレンジしない→怒られる→改善方法を考える心の余裕がないから同じミスをする→怒られる→チャレンジしない。といった悪循環に陥ります。

ミスを否定しないということは、発達障害のある人には特に効果的です。

発達障害の特性を加味した関わり方を模索するのを一度止め、「見守る」「ミスを否定しない」の二点のみを意識して関わってみてはいかがでしょうか?徐々に子供の変化を実感できると思います。

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