発達障害者と工場で仕事
ワークウィズ&サポートというレッスンで、生徒と共に色々な現場に行き、一緒に同じ現場で働いています。
イベント設置や片付け、イベント運営、什器を運んだりすることが多いのですが、たまに工場で働くこともあります。
そんな工場で働いていると、色々思うことがあります。今回は発達障害者と工場について書きたいと思います。
ASD(自閉症スペクトラム障害)の生徒と一緒に行ったので、ASDをメインに書きますが、最後の方にADHDについても触れます。
私が実際経験した範囲内のお話しであり、全ての工場が当てはまるわけではありません。
Contents
工場での仕事は向いているのか?
保護者と話していると「工場は単純作業で、人とのコミュニケーションをとる必要性があまりないので、この子には向いていると思っています」と仰る方もいました。
私自身工場で働く経験をするまでは、「そうですね~」と言っていましたが、現実はそうでもないと知りました。
とはいえ、メリットもあるので、まずはメリットの部分から書きたいと思います。
社員ではなく、バイトとして働く場合です。
ASD(自閉症スペクトラム障害)のある人にとってのメリット
どういう作業をするのかというのが分かりやすく、作業自体も単純なので難しくはないので覚えやすいです。
工場で働いている人は、継続的に来ている人もいれば、単発で入っている人もいます。
その比率は不明ですが、私が見た印象では半々といった感じで、休憩時間中に一人で過ごしている人も多いです。
一人でいることは決して不自然ではないので、一人でいる恥ずかしさは薄いと思います。
仕事中はコミュニケーションをとる機会が少ないので、コミュニケーションが苦手な人は気が楽でしょう。
ASDのある人にとってのデメリット
結論を先に言いますと、ASDを含む発達障害者の多くは工場で働くことが向いているとは思えません。
勿論、工場によって条件も環境も違いますし、工場で働くのが合うという人もいます。
しかし、私が経験した範囲では向いているとは思えませんでした。
その理由を、いくつかの項目に分けて書きたいと思います。
迷子になる
工場内はいくつにも仕切られており、慣れるまでは迷路と感じます。
案内の標識がなかったりすることもあるので、特に視空間認知が弱い人は慣れるのに時間がかかると思います。
迷子になるだけなら対して凹むことはありません。問題は、「それぐらいすぐに覚えろよ」という雰囲気を周りの人達から感じることです。
初めて行った時ですらそれを感じたので、何度も働いている人がなかなか覚えられないというのは、変なレッテルを貼られる可能性があります。
作業スピードにパニック
私達は長いレーンの前に立ち、乱雑に積まれた大量のクッキー(個包装されてる)を4つ手に取って向き揃え、隣の人に流すという作業をしました。
やることはただそれだけ。
ただ、何千何万というクッキーを正確に整え(向きを同じにする)ながら、スピードも要求されます。
そのスピードが尋常ならざるスピードで、走りで例えるとまさに全速力。
マイペースなASD(自閉症スペクトラム障害)の人は一回二回なら頑張れるでしょう。
しかし、いつ終わるか分からず、ずっと全速力をさせられるとどうなるか?パニックになります。
生徒は途中からパニックに陥り、ミスを連発するようになりました。
集中が持続しない
集中が持続しないのもミスを連発する要因になります。
これは私も感じた事ですが、同じ作業をしていると、集中を持続するのが困難になっていきます。
クッキーを全て同じ向きにし、数も揃えたつもりが、間違った向きになっていたり、数が違っていたりすることが度々ありました。
私も凹みましたが、生徒はもっと凹んでいました。
無慈悲な叱り
ミスを連発すると、嫌味のように「1つ多いです!」「袋が左右逆です!」と周りのスタッフから注意、いや、ニュアンス的にお叱りを受けます。
本人は限界以上の能力を出しているのに、叱られる。無慈悲としか言いようがありません。
発達障害のある人の中には、負の雰囲気を察知しやすく、叱られることに対して人一倍敏感な人もいます。
そういうタイプが叱られると、失敗を恐れるようになり、逆にスピードが遅くなります。
作業が滞っているのに気が付いたスタッフは、もう少しゆっくり出来る位置に移動を命じます。
それは配慮と呼べるものかもしれませんが、逆効果です。
自己肯定感が下がる
疲労が理由で楽な方に配置転換をされるなら問題はありませんが、出来ないという理由で配置転換されるというのは、自己肯定感が低下します。
しかも、誰でも出来る簡単な作業が出来ないと判断されることは、かなりの低下に繋がります。
生徒は自分の不甲斐なさと申し訳なさに、謝りっきりでした。見ていて、正直心が痛みました。
この自己肯定感の低下という要素が、工場で働くことが向かない最大の理由です。
勿論、自己肯定感が下がるというのは工場以外でも起こりえることです。
しかし、質が違います。人間関係が上手くいかなくて、自己肯定感が下がっているのではないのです。
人間関係なら、多少他人のせいに出来ますが、今回の件は自分が全て悪いとしか思えないのです。
だから、しんどいのです。だから、工場で働き続けられるイメージがわかないのです。
仕事が終わった後、生徒と食事をしながら振り返りをしたのですが、他の現場では見られない程の凹み具合でした。
私も凹みましたが、途中からはミスをして嫌味を言われても流すようにしたので、心のダメージは生徒ほどではありません。
生徒はまだそれが出来ず、全てを受けてしまったため、心のダメージが大きいのでしょう。
少しでも立ち直ってもらうために、悲しみではなく、怒りを私にぶつけるように言いました。
すると、少しスッキリした表情になりました。すぐに発散が出来て良かったです。
ADHDのある人も向いていない
ADHDの場合は、注意・集中力の低さで困難さが出てくると思いますが、継続して働くと考えると、それ以外の要素が大きいと思います。
その要素がモチベーションです。
ADHDのある人が何か継続して行うには、モチベーションという要素が非常に重要になってきます。
仕事でのモチベーションと言えば、お金、時間、刺激、達成感、他者からの評価(感謝される)が考えられます。
工場の仕事はいわゆる軽作業と呼ばれるもので、時給は低く設定されています。
早く作業を終えれば早く帰られるかと言えば、そうではなく、時間いっぱい働きます。
同じ作業をし続けるので、刺激は皆無。動き回ることもできない。
達成感よりも、やっと終わったしか思えない。
出来て当たり前という雰囲気が流れているので、感謝はそれほどされない。
以上のことを踏まえると、ADHDのある人が向いているとは思えません。
仮に働いても長く勤めるのは難しいでしょうし、せっかくの特性を上手く活かせる機会がないので、個人的には勿体ないと思います。
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