勝ち負けにこだわる発達障害児~トークンシステムとは?~

勝負よりも共感性ゲームを好むひだち教室長の安藤です。

長年発達障害のある子供と関わっていると、ゲームなのに過剰なまでに悔しがる子供がいます。

・人や物に当たる

・ゲーム途中で参加を拒否する

・癇癪を起こす

・拗ねる

みんなで楽しくゲームをやりたいと思っている人にとっては、上記のことをされると面白くなくなります。

ただ、当事者としてもやりたくてやっているわけではありません。

心のどこかでなんとかしたいと願っている子供もいます。

その願いを叶えるべく、多くの機関では感情コントロールのトレーニングをプログラムの中に組み込んでいます。

今回は、そんな勝ち負けにこだわる子供へのトレーニング時に利用するトークンシステムについてお話しします。

勝ち負けにこだわり過ぎる理由とトークンシステム

勝負事なので誰しも負けると悔しいものですが、発達障害児の中には激しく悔しがる又は極度に落ち込む子供がいます。

理由は人それぞれですが、私の見立てでは以下のケースが多いように思います。

・自尊心が低下するのを恐れて自己防衛反応が強く働く

・イライラやドキドキといった感覚に押しつぶされそうになるのがイヤ

・負けそうになると、負けた時の自分や周りの情景が想起されてパニックになる

・勝つことにこだわりを持っている

・失敗や負けることはダメなことと信じ込んでいる(完璧主義者)

気持ちとしては理解できますが、このまま放っておくと色々と弊害がでてきます。

幼児期なので言葉で理解させようとするのは難しいです。

そこで使われるのがトークンシステム、いわゆるご褒美システムです。

○○の課題が出来ればご褒美を貰えるというもの。

苦手な課題であってもご褒美のためなら頑張れ、モチベーションの維持にも繋がります。

ただし、使い方を誤るとご褒美が目的となってしまうので注意が必要です。

『自分がどうなった(どう変わった)』かまで気づかせなければいけません。

子供の特徴に沿ったトークンシステム

単純にご褒美があれば良いというわけではありません。

準備物とご褒美までの過程も重要。

そのためには子供の特徴をしっかり把握しておく必要があります。

今回ご紹介する一式は、幼児Bちゃんの特徴に沿ったものです。

文章をスラスラ読める能力を活かしたルール表

ルールとおやくそく表。

ルール理解とおやくそく表は、Bちゃんの特徴を加味して作りました。

Bちゃんは言語能力が高く、文章をスラスラと読むことができる。

読めるだけでなく、しっかりと理解もできている。

本を読むことも好きなので、あえて一つの文章を眺めに書きました。

フリガナ付きの漢字を使用しているのは、最近漢字に対する興味を持っているため。

そして、漢字があることによって注意が向きやすい(集中しやすい)と考えられたからです。

継次処理能力を活かした表

落ち着く方法を記した表。

Bちゃんは負けそうになるとコマを取り上げてゲームの参加を拒否しようとする。

負けると拗ねる、泣くこともあります。

不安というのは誰しもありますが、それを緩和するための方法をBちゃんは知りません。

そこで、深呼吸の方法を記した表を提示しました。

ここで大事なので、3回という回数。

私はBちゃんは継次処理優勢タイプだと推測しています。

継次処理型の人間は数字や文字、記号に敏感に反応しやすいという特徴があるからです。

しかも3回という具体的数値は理解しやすいという利点があります。

継次処理優勢タイプの特徴

補足として、ザクっと継次処理優勢タイプの特徴を記します。

・文字や数字、記号といった抽象的なものに反応しやすい

・順序立てて説明するのが得意

・順序立てて説明された方が理解しやすい

・音や言葉に反応しやすい

・文章は箇条書きに書かれている方が理解しやすい

・全体よりも部分に興味を持ちやすい

スゴロクの選択権は子供に

10種類以上のスゴロク。

スゴロクは10枚以上用意し、その中から3枚選択してもらいます。

自分で選択できるというのは子供のモチベーションを上げる効果があります。

10枚の中には、Bちゃんと相性の良い(勝つ確率が高い)スゴロクと相性の悪いスゴロク(勝つ確率が低い)が混じっています。

しばらくはBちゃんに自由に選択してもらいますが、慣れてきたら相性の悪いスゴロクを強制的に入れる予定です。

数字への反応を利用したご褒美カード

ご褒美シールとご褒美カード。

最終的なご褒美は好きなオヤツですが、ゲームごとに軽いご褒美も必要です。

ご褒美として最も使いやすいのはシール。

勝ったらシールを1枚、負けても最後までやったらシールを3枚、ご褒美カードにシールを貼る仕様です。

ご褒美カードにはあえて数字が書かれているものを選びました。

理由は継次処理優勢タイプと思われるため。

案の定、Bちゃんは数字に物凄く反応していました。

音への敏感性を利用したご褒美うさぎ

ご褒美ウサギとコイン。

継次処理型は音に敏感に反応しやすいという特徴があります。

その特徴を活かして、牛乳パックで作った貯金箱(ウサギ型)に瓶を入れ、コインを投入すると音が鳴るようにしました。

ご褒美カードと同じで、勝ったら1枚、負けても最後までゲームをしたら3枚というルール。

投入する時は「1枚、2枚、3枚」と数字を言いながら入れます。

チャリーンという音と数字を言うのは心地よく、モチベーション維持や高めるのに役立ちます。

Bちゃんに見せたところ、音にも反応しましたが違った反応が見られました。

Bちゃん:「自分で作りたい!教えて欲しい!!」

「そこに反応したか~」と思いましたが、興味を持ったのでよしとします。

これらトークンをBちゃんに使用して実践しているところです。

ある程度効果が見られたら、実践例として書きたいと思います。

ひだち教室では、生徒の「やってみたい!」という気持ちを大切にしつつ、生徒の特徴を活かした教材の使用や関わりをしています。楽しみながら行うことで、苦手なことがいつのまにか苦手でなくなるようになります。

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