発達障害者が仕事を続けるためのヒント~工場編~

工場で働くのは無理と思っているひだち教室長の安藤です。

ひだち教室のレッスンの一つに、生徒と一緒にバイトをするというのがあります。

色々な現場で共に働くことで、こういう仕事してたら、生徒はこういう反応をするんだ。

という場面も沢山見てきました。

前回までは、下記の仕事についてお話ししました。

>>>ゲーム制作編の記事

>>>車の見張り番の記事

今回は、工場で働いた時のお話しです。

先に言います。

工場での仕事は向き不向きが大きいです。

見聞きした情報から考察

私が経験した情報も踏まえて、下記のことを書こうと思います。

・どんな困難が予想されるか

・どうすれば続けられるかを推測

・一緒に体験した生徒の感想

お子様の将来の参考になると良いなと願っています。

※私の体験談と個人的な見解です。

※違ったシステムやルールの工場もあると思います。

※ASD、ADHD、LDといっても、タイプは様々なので、全ての人に該当するわけではありません。

工場で箱組み立て&クッキー箱詰め作業

工場内では色々な役割があります。

私と生徒が任されたのは、某有名お菓子店の箱組み立て&クッキー箱詰め作業。

作業自体は単純作業。

ある程度の巧緻性があれば出来る。

私達は作業が始まるまでは、気楽に考えていました・・・。

予想される困難

【ASDの場合】

工場内は機械音でうるさいかと思いきや、意外とうるさくない。

私語が基本禁止なので、作業に集中しやすいと思います。

発達障害のある人の中には、不器用な人は意外と多い。

でも、箱を組み立てたり、クッキーを箱に詰めたりといった作業は出来ると思います。

箱を組み立てるのも、少し練習すれば問題ないと思います。

問題は、作業スピードがとても早いこと。

ASDの人はマイペースなことが多い。

それでは工場が回らないので、注意を受ける頻度は高まります。

注意を受ける頻度が多いと、下記のような現象が起こります。

・指先が震えてスピードが余計に遅くなる

・頭の中でパニックを起こして思考停止に陥る

悪循環に陥りやすくなるでしょう。

心身共に疲弊し、長続きは難しいと思われます。

【ADHDの場合】

同じ作業をひたすら繰り返すので、注意を保つのが難しくなります。

短時間全集中できても、求められるのは長時間の全集中。

難しいですね。

ミスを連発する可能性が大いにあります。

同じ場所にずっと立ちながらの作業。

多動のある人はその場で体を揺らしたり、屈伸を始めたりするかもしれません。

それが許される現場なら良いですが、それが奇異な行動と映ったら、注意を受けるでしょう。

同じ作業をずっとするので、すぐに飽きます。

そして苦痛でしかありません。

ASDの人同様、注意を受ける頻度が他の人より多いと思います。

そうなると、ASDの人と同じ現象が起こりえます。

・指先が震えてスピードが余計に遅くなる

・頭の中でパニックを起こして思考停止に陥る

悪循環に陥りやすくなるでしょう。

【処理速度が低い人】

障害特性とは別に、処理速度が低い人にも触れておこうと思います。

WISCという検査には処理速度という項目があります。

その名の通り、処理をする速度を測るもの。

この項目が低い人は、工場で働くのはお勧めしません。

工夫でスピードアップするということが難しいからです。

頑張っているけど、追いつかない。

自己肯定感が著しく低下すること間違いなしです。

続けるために必要なこと

バイトという立場だと、専門的な知識はいりません。

やり続ける内に身体が勝手に作業をしてくれます。

無心になれれば、続けられるでしょう。

その他に何が必要か?

言語性、社会性、環境と能力から考えてみたいと思います。

言語性

【理由を説明できる】

自分の向き不向きの作業が存在すると思います。

不向きの作業を任された時は、作業変更の旨を伝える事をお勧めします。

勇気はいるでしょう。

でも、不向きな作業をし続けても、ミスが増えるだけ。

作業はズラっと並んで行います。

順番を変えるだけで、負荷が変わります。

長時間続ける秘訣だと思います。

もっとも、スピードが遅過ぎたら、上の人達が順番変更の指示を出してくれます。

配慮と言えますが、言われた側は、自己肯定感と自尊心がゴリゴリ削られます。

言葉には出しませんが、

「あなたは使えないね」

と言われているように感じるからです。

変更指示が出される前に、自分から変更の旨を言う方が、心のダメージは少ないです。

社会性


【指示された内容の確認をする】

時々、やり方の微調整を求めてくることがあります。

その時に指示された内容の確認をとることが求められます。

【挨拶ができる】

最低限、同じグループの人には挨拶をするのが当然です。

【次の作業内容を自ら聞ける】

自分が担当していた作業が終わる時があります。

その時に、次は何をすれば良いか聞きに行く必要があります。

また、突っ立っていないで、自分から聞いてくるようにと会社の方に予め言われます。

【「ありがとう」を言える】

あまり言う場面は少ないですが、言うことで手伝ってもらえます。

【さりげなくサポートをする】

他の人が、自分の作業で少し手間取っている場合があります。

その時に、さりげなくサポートをしてあげると好感度アップです。

「ありがとう」と言われるので、モチベーションが少し上がります。

環境と能力

【しんどさを共感できる人が隣にいる】

同じ作業をしていると、集中力は減退し、疲労も蓄積します。

そんな時に隣に愚痴をこぼせる人がいると、随分楽になります。

それは私自身、実感としてあります。

【作業工程を全て把握しておく】

ASDの人は急な変更はとてもしんどいですが、時々違う作業を頼まれます。

どういう作業があるかを記憶しておくと、急な変更にも比較的対応できると思います。

基本的に作業内容は難しくないので、やり始めたら出来るでしょう。

【耳栓をする】

聴覚過敏がある人は耳栓があっても良いかもしれません。

【練習する】

箱を組み立てる作業は折り目があるので、まだ組み立てやすい。

でも、手先が不器用な人はそれでも苦戦する可能性があります。

配慮しようがないので、練習して出来るようになるしかありません。

【ま、いいか精神】

正確性とスピードを強く要求されます。

少しぐらいのズレなら他の方がカバーしてくれます。

引きずらないで頭を切り替える必要があります。

【「うっさいんじゃボケ」と心の中で呟く】

単純作業なので、出来て当たり前。

発達障害があったり、処理速度が低いと、ミスや遅れがどうしても出てきます。

すると、頻繁に怒られます。

そんな時、心の中で呟きましょう。

「うっさいんじゃボケ」

これは自分の心を守るのに効果があります。

発達障害のある人は怒られると、瞬間的に上手く発散することが難しい。

というより、瞬間的な発散方法を知らない人が多い。

悪態をつくのはダメと教えられるからです。

あくまで私と生徒が実践した一例です。

ようは、自分なりの心を守る術を確立しておきましょうということです。

【足のケア】

その場にずっと立ちっぱなしなので、足が痛くなります。

家に帰ったら、しっかりと足のケアを心掛ける必要があります。

マッサージ器は必須ですね。

【スピードを要求されにくい工場を選ぶ】

そもそも論になります。

工場で働くなら、面談などの際に作業スピードを見ておくべきです。

工場勤務経験者に、事前に聞いてみるのも良いでしょう。

【見切りをつける】

自分に合わないと思ったら、さっさと見切りをつけることも大事。

執着しない方が良いです。

執着すると、たいてい心を病むから。

心を病むと、仕事どころではなくなりますよ。

生徒と私の感想

【生徒の感想】

あんなん出来るわけない!

しんどすぎる!

自分には無理!

早すぎるわ!

おばちゃん、怖いねん!

単純だけど、俺にとっては単純作業ちゃうわ!

二度としない!

バイトが終わった時、生徒は燃え尽きていたのが印象的でした。

【私の感想】

これほど自己肯定感を下げられた仕事は初めて。

注意される度に、自分が情けないと感じた。

最大限集中しているつもりだったが、入れ忘れが何度もあった。

自分には不向きな仕事だと感じた。

もう二度とやらない。

もし他の生徒がやりたいと言っても、拒否します!

少なからず、あの工場は・・・。

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