自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴~頑張り過ぎに要注意~
生徒の心の変化に敏感なひだち教室長の安藤です。
「頑張る」というのは素晴らしいことで、多くの人は肯定的だと思います。
私も肯定的に捉えていますが、頑張り過ぎとなると話が違います。
先日、ある生徒が頑張り過ぎている環境下にいることを知り、非常に心配になっています。
何故そんなに心配なのか?
それは、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供は頑張り過ぎる傾向があるからです。
今回のブログは、警鐘の意味合いを含めた内容となっています。
※これから書くことは、全ての自閉症スペクトラム障害(ASD)の人に当てはまるわけではありません。同じ診断名でも、感じ方や対処の仕方は人によって異なることをお含みおきください。
頑張るとは?
「頑張る」とは、一般的に努力をすることを指します。
成長するために頑張ることは必須ですが、モチベーションや学び方によって、心の負担が大きく違います。
モチベーションが高く、子供に合った学び方であれば、心の負担は周りが思っているよりも軽いかもしれません。
しかし、軽いといっても確実に心に負荷(ストレス)がかかっています。
そんな心の負荷が70~80%の段階になると体調不良を起こし始めます。
体調がおかしいと感じたら、定型発達の人は課題の量を調整したり、脳内をリフレッシュやリセットできるよう、何かしらの行動を起こします。
ところが、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子供は心の負荷に気が付かないことがあります。
気が付かないから頑張り過ぎてしまい、大人になった時に力尽きてしまう(心を病む)という話はよく聞きます。
頑張り過ぎる理由
自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供は、客観的に自分を見るのを苦手としています。
ただ、それだけで頑張り過ぎるということは起きません。
障害特性によるものと幼い時からの経験というのが大きく起因しています。
①0か100の世界観
②頑張らなければいけないという強い思い込み(こだわり)
③自分に必要なものと必要でないものの判別が苦手
④小さい時から失敗体験が多い
⑤小さい時から叱られることが多い
⑥認めてもらえたことがない(実感がない)
⑦周りからの期待値が大きい
私が実際目の当たりにした頑張り過ぎる生徒は、全てこれに該当しました。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は0か100の世界観を持ち合わせているので、適度に手を抜くというのが下手です。
頑張る時は100%の力で頑張り、そこに②が加わることで、100%以上の力で頑張ります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は疲れやすいと言われる所以の一つです。
④~⑥により、自己防衛反応と承認欲求が強く出るようになります。
そのような状態で頑張って結果が伴うようになると、周りからの期待値が大きくなり、自分を追い込むことに拍車がかかります。
頑張り過ぎている時の周りの反応
子供が頑張って結果が伴っている時、周りはどんな反応をしているでしょうか?
学校の先生は結果が伴っているので、『成功体験になっている』『本人も喜んでいる』『しんどそうだが、みんなそういうものだ』と捉え、子供の無意識のSOSに気が付きにくいです。
むしろ、『たくさん資格を取れると就職に有利だから頑張ろう』『君なら上の大学に行けるから頑張ろう』と言って頑張らせようとします。
学校というのは成長の場。先生が言ってることは決して間違いではありません。
子供もそんな先生の言葉に応えようとするので、結果的に自分で自分の首を絞めることになります。
親の場合は、子供を止めるべきか止めないべきか、葛藤していることが多いです。
子供が心身に余裕がないというのは薄々気づいています。
過去の我が子の様子と比較すると、頑張っていて結果も伴っており、学ぶモチベーションにも繋がっている。
だから、止めない方が良いのではないかと思ってしまいます。
先生も親の気持ちも十分理解できます。
しかし、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供は定型発達の子供よりも、疲れやすいというのは忘れないで欲しいです。
頑張り過ぎることの弊害
頑張り過ぎる、頑張り過ぎたことによる弊害というのはあります。
・不登校になる
・鬱やパニック障害になる
・無気力になる
・課題が頭の中から離れず、何をしていても楽しめない
・周りから人がいなくなる
このような状態にならないよう、学生の内から頑張り過ぎないことも大事ということを学ぶ必要があります。
いえ、学ぶだけではなく実践しなければ意味がありません。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は、自分が経験したことを基準に物事を考えがちです。
長期間頑張り過ぎの状態が続くと、「頑張らなければいけないという思い込み(こだわり)」が強化され、他者にも同じぐらい頑張ることを強要することがあります。
その結果、周りからドンドン人がいなくなり、孤独になるというケースもあります。
親や支援者にできること
頑張り過ぎている子供を最終的に止められるのは親にしかできません。
ただ、頑張っているのを強制的に止めるというのは気が引けると思います。
そこで、子供の頑張りを否定しないまま環境を調整することをお勧めします。
下記のは、実際生徒(高校生)の親が行ったことです。
・塾の宿題量を減らすよう交渉
・学年が上がる時にコースを変更する
学校の長時間の授業(8時間)に加え、塾の宿題と学校の宿題共に大量でした。
それを毎日完璧にやっていた生徒の負担は相当のもので、目の下に大きなクマができていました。
親がまず着手したのは、通知表に直結しない塾の宿題量を減らすための交渉。
減ったことにより、生徒は少し楽になりました。
しかし、入っていた学校のコースが長時間勉強漬けのコースだったので、目の下の大きなクマが消えることはありませんでした。
親はそんな我が子をみかねて、本人の了承のもと、思い切ってコースを変更しました。
それからは劇的に変わりました。
目の下の大きなクマは消え、心にゆとりを持てるようになり、随分明るい表情をするようになりました。
現在は大学生で、バイトや勉強、私の教室の活動にも意欲的に参加しています。
親の環境(コース)を変えるという決断は、生徒の人生を良い方向に導いたと思います。
頑張り過ぎている子供に対して、支援者として出来ることは、【発散】【分析】【情報提供】の3点。
・脳内をリセットするための活動を行う
・課題の取捨選択を障害特性等の観点から話し合う
・「止める支援」を実行する
頑張り過ぎている子供の脳内はパンク状態。
寝る、ゲームをする、放課後デイ等を利用して軽く遊んだりして、発散を試みる人は多いでしょう。
効果がないとは言いませんが、心が追い込まれている子供はずっと頭の中に課題の事が残っています。
一時的に完全に課題のことを忘れる(脳内リセット)をするためには刺激的な活動が効果的。
心の病の防止にもなり、私は実際行ってきています。
課題が資格関連の場合、将来を考えた時に本当に必要なものかという判別が必要。
支援者と親、本人を交えて課題(資格)の取捨選択を話し合うことで負担軽減を図ります。
親が止めるかどうかの判断に悩んでいて、明らかに子供も限界に近いと判断できる時は、支援者は「止める支援」を実行した方が良いです。
「止める支援」というのは、止めた方が良いと決断できる材料(情報)を提供することを指します。
提供する人は、障害特性と子供自身をしっかりと分析できる、分析能力に長けた支援者が担当すべきですね。
提供した上で決断するのは親と本人。後は良い方向に向かうことを願うばかりです。
発達障害のある人は定型発達の人よりも心を病みやすいというデータがあります。
だから、長期間頑張り続けなければいけない環境から子供を離してください。
それだけで、子供が歩む人生は大きく変わります。
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