我が強い子供への対応方法~その先を見据える対応とは?~
選択肢を提示するのは比較的得意なひだち教室長の安藤です。
発達障害のある子供の中には、我が強いタイプというのが存在します。
このタイプは自分の願いや考えを大事にする。
自己肯定感にも繋がるので、大事な要素。
ただ、この要素が過度に強いと、周りを振り回すことにも繋がります。
今回はそんな子供に対しての対応事例を書きたいと思います。
Contents
我を通すのが強いASDの特徴
思春期に入ると、自己がより一層形成されて我が強くなっていきます。
それは一般的な反応で、対応に困って頭を悩ませる保護者は多いです。
しかし、そこにASDがあると悩みの事情がもう少し複雑化していきます。
・誤学習しやすい
・こだわりが執着になる
・自分なりの正義を掲げる
・社会的なルールを知らない
・駆け引きをする
・他者の事情をイメージしにくい
・他者責任をする
全てのASDのある子供に該当するわけではありません。
ただ、我を通そうとするタイプは複数当てはまることが多いです。
我が強いタイプへの対応事例
京都市内での活動中での出来事です。
丸益西村屋で体験を終え、京都観光として新京極へ向かいました。
そこで、アニメイトに行った時のこと。
欲しいという気持ちが抑えられない
中学生のA君は、クレーンゲームでどうしても欲しい物を発見します。
A君はお小遣いを使って試みましたが、取れませんでした。
お金がなくなったA君は私に言ってきました。
A君:「400円貸して欲しい」
私:「いや、それは出来ない」
A君:「絶対返すから!貸して欲しい」
私:「出来ません」
私から借りられないと思ったA君。
今度は他の生徒から借りようと、生徒達にお願いしました。
当然、全員から断られました。
拗ねるという行動
自分の願いが叶えられなかったA君がとった行動は、拗ねるという行動。
アニメイトの出入り口近くに隙間があり、A君はその隙間に身体を入れて拗ねだしました。
まさかの行動に私も驚きました。
声をかけると、
A君:「絶対返すんやから貸してや」
それしか言いません。
自分の願いが叶うまでは絶対動かない。
そんな強い意志が感じられました。
ここから先は、その時の対応を書いていきます。
保護者に連絡すると新事実が発覚
保護者に電話をしました。
事情を話し、どういう対応をとるかを相談。
他の生徒達にも迷惑がかかるので、こちらが折れてお金を貸すのか?
絶対貸さないを貫くのか?
相談していると、A君は保護者に借金をしていることが発覚しました。
誤学習は怖い
発達障害のある子供は誤学習をしやすい。
ここでもし私がお金を貸したら、
・借金を返さなくても借金ができる
・粘ったら貸してもらえる
そのような誤学習をする危険性があると思いました。
だから、お金は絶対貸さない。
保護者と私の考えは統一できました。
こちらの意思を伝えるが諦めない
私:「親に借金をしているらしいやん」
私:「借金をしているのに、どうやって返すつもりなん?」
私:「まずは親にお金を返すのが筋やから、お金は貸しません」
私:「親からもお金を貸さないように言われたので、諦めてください」
そのように言いましたが、プイっとそっぽを向いて拗ね続けるA君。
皆さまなら、この状況をどう対応しますか?
諦めて貸す?
キレてうやむやにする?
なかなか難しい出来事だと思います。
毅然とした態度を貫く
特別支援教育で最も基本的な事であり、最も大事なこと。
それは、毅然とした態度を貫くこと。
一度決めたことは絶対ブレない姿勢と覚悟が必要です。
一般的に「我がまま」と言われる部類に入る行動の場合は、特に大事。
これが一度でもブレると、子供は「粘れば通用する」と誤学習をします。
誤学習すると、その後の指導や支援がしにくくなります。
大人側としてはその時だけの特別と思っていても、子供は違います。
何度も求めます。
だから私は毅然とした態度を貫きました。
責任を負わせる
私は一貫して生徒達に求めていることがあります。
それは、自分の行動や言動に責任を負うというもの。
だから、私はA君にこんな提案をしました。
私:「分かった。じゃあ、お金を貸してもらえる方法を教えるわ」
A君:「ほんま?どんなん?」
A君は希望の眼差しで私を見てきます。
私:「社会では、お金を貸してもらう時に担保って制度があるねん」
A君:「担保?」
私:「お金を貸したのは良いが、必ず返ってくるとは限らない」
私:「そうすると、貸した方が損するやん」
A君:「うん」
私:「そうならないために、お金を貸す代わりに何か別の物を預かるねん」
A君:「どんな物を預かるん?」
私:「色々やけど、借りた側にとって大切な物が多いね」
私:「A君にとって大切な物って何?」
A君:「この恐竜かな」
活動では、いつも恐竜の人形を持って来るA君。
A君にとって、とても大切な物です。
私:「じゃあ、恐竜を先生に預けたら、400円貸すわ」
A君:「え!?」
A君:「ちゃんと返してくれるんだよな?」
私:「期限内にちゃんと400円返してくれたら、恐竜は返します」
私:「でも、期限が切れたら先生の物になるので、即行で捨てます」
A君:「そんな~。大事な物なんやで」
私:「先生の物なんやから、どう扱うかは先生が決める権利あるし」
私:「そもそも、ちゃんと期限内に返してくれたら問題ないんやで」
私:「さあどうする?その覚悟と責任を負えるならお金は貸します」
考え込むA君。
A君:「ちょっと待ってて。恐竜と相談してくるから」
A君は恐竜の人形と相談(?)を始めました。
相談(?)は5分程で終了。
A君:「お金借りるの止めることにする」
A君は納得した顔で私に言ってきました。
こうしてA君と私は、先に出発した生徒達を追いかけました。
拗ねだして解決するまで、約1時間かかりました。
時間はかかったけど、A君が納得できた上での問題解決。
A君にとっても学びになったと思います。
注意点
我が強い子供は一見強そうに見えて、自分が責任を負うとなると尻込みします。
責任を負わせる手法というのは、年齢や特性関係なく効きます。
ただし、問題行動修正のために使うという意識は持たないで欲しい。
あくまで責任を負う覚悟と力をつけるため、成長のためです。
だから、もしA君が「分かった。だから貸して欲しい」
と言ってきたら、褒めようと思っていました。
責任を負う覚悟と力をつけると、他者責任の意識が外れます。
すると、自分に意識が向いて自助能力にも繋がりやすくなります。
その場だけの対応ではなく、その先を見据えた対応を心掛けたいですね。
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