空気を読む力をつけるには

特別支援教育に携わっていると、必ずといって良いほど空気が読めないという言葉を聞きます。

相談に来られる保護者からもそういった言葉を聞き、どうすば良いかと相談を受けます。

今回は空気が読めないとどうなるか、そして空気を読む力のつけかたを書きたいと思います。

空気を読むとは

発達障害のある子供は空気が読めないなんて言葉を時折聞きますが、それは大きな間違いです。

発達障害でもLDやADHDの人は基本空気を読めます。

空気を読むのが苦手としているのはASD(自閉症スペクトラム障害)の人です。

では、何故LDやADHDまでそんな風に思われてしまうことがあるのか。

一例ですが、LDの中には、聴覚記憶が著しく苦手としている人がおり、上手く記憶できないことがあります。

相手が「○○の行動の後に、○○の発言と○○の行動をとってください」といった長い説明をすると、それを記憶出来ません。すぐに相手に聞き直せたら良いのですが、分かった振りをしてしまう場合も多いです。

そうなると、相手の発言とは真逆の行動をとってしまうことがあり、それが結果的に良くない行動となり、空気が読めない人というレッテルを貼られてしまうことがあります。

ADHDは特性上、分かってはいるがやってしまうなんてことはよくあります。そのため、良くない行動をした後ですごく後悔することはあります。しかし、周りの人はそれが分からないので、「やってしまった」のではなく、「空気が読めないからやった」という風に判断してしまいます。

空気を読むことができない例

ASDの人は空気が読めないと言われますが、具体的にはどういうものか。

これから書くのは、実際課外活動で目の当たりにした様子です。

レンタルハウスで料理活動をしている時のことです。

A君とお婆さんは一緒に片付けをしながら楽しく会話をしていました。

お婆さん「A君はもう何歳やったかのう?

A君「14歳だよ」

お婆さん「はえ~、もうそんなになるんかい」

A君「お婆さんは?」

お婆さん「もう70歳になるわ。元気やろ~」

A君「へ~」

お婆さん「でも、100歳まで生きるからのう」

A君「え?それは分からへんやん」

お婆さん「え?!いや、でも生きるで~」

A君「だから、そんなに長い生きできるか分からへんやん」

お婆さん「ははは」

二人の間に気まずい空気が流れました。

このやり取りを見ていて、思わず冷や汗が出ました。失礼極まりないことですが、A君は全く気付いていません。

しかし後日、このやり取りを書いたプリントを作成し、問題を解いてもらいました。

「気まずいことは言ったのは誰でしょう?」「何故気まずいのでしょうか?」「「長生きできるか分からへんやん」と言われた時のお婆さんの気持ちを考えよう」「あなたなら、どう返答する」という問題ですが、全問正解しました。

ASDの人は決して空気が読めないわけではありません。このように視覚的に提示し、ポイントをついていくと理解できます。

しかし、多くのASDの人が苦手としているのが、瞬間的に空気を読むことです。

空気を読むというのは瞬時の判断を求められることが多く、時間をかけられないために、間違った判断をしてしまうのです。

また、空気を読み過ぎるケースもあります。

深く読み過ぎるあまり、決断するための選択肢が数多く思い浮かんでしまい、頭が混乱します。

自分なりに判断して決断したものの、その判断と決断が合っているか分からず、頭がモヤモヤするので、私に電話して訊くということもありました。

深く読み過ぎるというのは、アスペルガー症候群の人によく見られます。

空気を読む力のつけかた

様々な状況を体験する

人は体験して学ぶのが一番効率的です。

一度失敗体験をした後、何が良くなかったか、今後どうすれば良いかを教えてもらい、同じ状況のもとで成功体験すると、空気を読む力がつきます。

ただし、ASDの人は般化がしにくいため、同じ状況下という条件付きです。

様々な状況を体験していくと、パターンを見いだせることがあります。そうなると、上手く空気を読めることもあります。

たくさんの体験をしてパターン化を増やすというのも、一つの手だと思います。

学生の間に空気を読めるようにという風に考えるのではなく、長い時間をかけて指導者(保護者含む)と共に空気の読み方を学んでいくことが大切です。

言葉を介して意味や状況を理解する

空気を読めない人が空気を読むには、状況を言語化できるかがカギになります。

言語化の練習は子供の内からトレーニングが必要ですが、非日常のトレーニングだけでなく、普段の生活の中で学びの要素をどう入れ込むかが重要です。

ゲームや本で学ぶ

どういう事をすれば良いか、空気を読めない子供の共通点を探していると、ある事に気が付きました。

ゲームは好きだが、アクションやシューティング系が多く、ロールプレイングゲーム(ドラクエやFF等)はしない。小説は読むが、マンガを読まないという共通点です。

そらに詳しく見ていくと、継次処理型の子供にその傾向が強く、同時処理型の子供はその傾向が弱かったです。

ゲームを介して言語化の練習となるとテーブルゲームがパっと思いつきますが、人狼ゲームもお勧めです。

これは最近体験して思いました。

ただ、様々な能力が複雑に絡み合っているので、最初は簡略化されたルールで行う必要があると思います。

近々簡略化ルールで人狼ゲーム体験をする予定なので、やりましたらまたブログにアップします。

漫画は日常生活の中に取り入れやすいです。

以前、マンガを読まない子供に対してある漫画を読んでもらいました。

画像にある2ページを読んでもらった後、犬は何匹いるかと訊きました。答えは1匹ですが、5匹と答えました。

また、おしっこをした理由と倒れた理由を尋ねると、「おしっこがもれそうだったから出した」「倒れたのは寝たから」でした。

ここで分かったのは、「読まない」のではなく、「読めないから読まない」のです。

継次処理型の人は、一つ一つの情報を言語化することはできるが、情報を統合する力と全体を把握する力が弱いため、上手く読めないのかもしれません。

全体の情報を統合するという力は、空気を読むことにも繋がります。

実際、漫画を理解して読める子供は、空気を読むことが出来ていることが多かったです。

空気を読む力(言語化の練習含む)をつける方法として、漫画を活用してみてはいかがでしょうか?

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