親子関係を修復する方法
発達障害のある子供と親との関係がこじれることはよくあります。
こじれてしまうには当然原因があるので、原因を分析し、私が介入できる範囲で親子関係を調整していきます。
上手くいくケースもありましたし、上手くいかないケースもありました。
その両方をお話ししたいと思います。
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原因は子供なのか自分(親)なのか
こじれる原因は色々なパターンがありますが、発達障害の子供は親の予想とは違う行動や言動をすることが健常児と比べると多いので、そこから親はイラっとくるケースが多いようです。
障害特性も関わってくると、子供の中に悪気は生じにくいです。
そんな悪気のない子供に「悪いと思わないのか!!」と言ったり、手を上げたりすると、子供はとても理不尽に感じます。
発達障害のある子供はそんな理不尽な経験を健常児よりも多く経験するため、親子関係がこじれやすいのだと思われます。
自分のした言動や行動に後悔する親もよく見られます。
後悔している親は「原因は全て自分にある」と潰れてしまいそうになっているケースもあります。
手をあげるのは良くないが、気持ちは受容します。その上で、原因はそこではないと気づいてもらうように伝えます。
文化の違いが心配を生む
親も文句を言いたいわけでも、手を上げたいわけでもないです。
ただ、どうしても親は自分の価値観で我が子を見るので、なかなか冷静にはいられないようです。
よくペアトレでも言われるのですが、子供と親は文化が違います。
親子ではありますが、母親のお腹から産まれた瞬間から、他人同士です。
時代、関わる人達、環境も親とは違うのだから、文化も価値観も異なるに決まっています。
さらに発達障害があると、より一層親が理解できない文化を持ち始めるので、親の心配は強くなるばかりです。
心配が強くなると、自分の文化に寄せようと親は叱ったり、手を上げたりしてしまいます。
叱ったりすることで、親の文化寄りの子供に成長するかもしれません。
そうなると親は子供の行動や言動を予想しやすくなり、育児もしやすくなりますが、果たして子供はそれで良いのでしょうか?
文化というのは自分らしさでもあります。それを否定されると子供はどうなるか。
親に従順な人間になるか、強い反発心を抱えた人間になるかのどちらかになりやすいです。
どちらも大人になった時の事をイメージすると、良くないことが分かると思います。
問題が起きると態度や顔に変化が起きる
子供が小さい時や言語能力が高くない人は自分の気持ちや思いを言葉で伝えるのは難しいです。
そのため、行動で訴えてきます。
訴えると言っても、ジェスチャーで伝えるということではなく、態度や顔に変化が起きます。
最もよく表れる態度が、『泣く』『拗ねる』『怒る』です。
ただ、これらは感情を爆発させているので分かりやすく、比較的フォローもしやすいです。
少し厄介なのは顔に変化が表れた時。私の経験上ですが、2つのパターンがあります。
一つは寝ているはずなのに目のクマが濃い、もう一つは下唇が普段よりも下に下がっている状態です。
前者だけならまだ良いのですが、後者はかなり危険な状態なことが多いです。
前者の原因は色々だと思いますが、後者に関しては、親も含めて多くの人達から認められていないと感じている時に見られます。
気持ちだけでなく文化を受容する
子供との仲が破綻することを望む親はいないと思います。
出来るだけ親子関係の修復が図れるように、色々な機関でアドバイスを受けることがあると思いますが、子供の文化を受容するということが親子関係の修繕を図る第一歩だと私は考えます。
子供の文化の受容は簡単そうで難しいです。何故なら、自分の文化を否定してしまうような錯覚に陥てしまうからです。
そうならないよう、子供の文化のメリットを納得してもらった上で、受容してもらうように取り計らっていくのが私の手法です。
第三者が気持ちを聞いて調整する
自分の気持ちを言葉で伝えられ、かつ、親子関係がこじれているなと感じる生徒には、親に対する気持ちを聞くようにしています。
出来ることなら親子間で話し合って欲しいですが、親子関係がこじれていると、お互いの気持ちを冷静に伝えるというのは難しいです。
最初こそ冷静に話していても、徐々にヒートアップし、感情のぶつけ合いになってしまって、より一層関係がこじれてしまいます。
そうなるのを予想できるので、私が間に入ってお互いの気持ちを聞き、親と子に伝えるようにしています。
勉強関連で一つ例に挙げます。
家で勉強を一切せず、学校で済ますタイプの子供は「親に信じてもらえない」というワードがよく出てきます。
親は目の前で子供が勉強をしている姿を見ないと、子供は努力をしていないと判断しがちだからです。
陰で努力しているというのを信じられないようです。
親の主張としては、勉強(宿題含む)は家でやるもの。それを学校でやってくるなんてナンセンスという考えの人もいました。
お互いの勉強に対するスタンスは明らかに文化が違います。
そこで私は仲介役として入りました。
生徒は「勉強はしんどいものであり、それを家でもやるというのはストレス。だから、家に持ち帰らないように学校で宿題や勉強を済ませるようにしている」という考えがあることが分かりました。
そのことを親に話すと、最初は納得できない感じでしたが、「成績が下がったりしない限りは見守りましょう。これ以上ギャーギャー言うと、ますます関係が悪化します」と伝えると、しぶしぶ納得してくださいました。
試験が近づくと、親は子供に文句を言いたくてしかたがなかったようですが、言わないように頑張ってくださいました。
すると、試験の点数は良かったです。
理由を子供に尋ねると、「今回は親にギャーギャー言われなかったから、気持ち的に少し楽だった」と分析していました。
それ以降、親は子供の陰の努力を信じるようになりました。
子供の文化も少し受容できるようなり、親子関係も以前よりは良くなりました。
修復不可能になってしまうこともある
親子関係がこじらせるを通り越して、親子関係が破綻するということも現実的にあります。
親も子もお互いを拒絶してしまう。こうなると、物理的に距離を空けるのが最善策です。
物理的に距離を空けることで、まずはお互いの心の回復を図る。それから親子関係の修復が可能かを検討するべきでしょう。
私が若い時の話ですが、当時勤めていた施設に親子関係が破綻した利用者がいました。
親子がこんな悲しい別れは良くない、何とか修復したいという強い思いから、親に無理を言って子供(グループホームを常時利用)に会って頂き、一緒に買い物等をして同じ時間を過ごしてもらったことがあります。
結果、ダメでした。親と子の間の溝は想像以上に深かったです。
今にして思えば、軽率で勢いだけだったな~と思います。ただ、それにより気づきもありました。
破綻している状態で修復をすぐに図ろうとするのは無意味であり、逆効果でもあります。
親と子が一緒にいたいと思える状態を見極めた上で、タイミングよく機会を設けることが大切なんだと、その時に痛感しました。
現在もそういう危うい状況の生徒もいます。
私に何が出来るか、何をすると生徒の心の安定と成長に繋がるかを考え、親に提案していこうと思います。
今の私は何かに縛られるものがないので、思い切った行動に移せるのが強みです。
その強みを活かしていこうと思います。
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