自己肯定感を高める方法

自己肯定感を高めるには

そのままの自分を認め、自分を受け入れ、自分を尊重し、自分の価値を感じ、自分を肯定するというのが自己肯定感です。

この自己肯定感は人生の根幹を成すといってもよいほど重要な要素です。

生徒が当教室に初めて訪れた時、この自己肯定感が下がった状態で来ることが多いです。

私が特別支援教育の世界に足を踏み入れた時、自己肯定感が高まることで生じる効果というのは知りませんでした。

多くの生徒達に指導していく中で、予想だにしない劇的な変化が起きる生徒達がいました。

その共通点が自己肯定感の高まりです。

今回は自己肯定感が高まったことによる生徒の変化の話をしたいと思います。

本や言葉では得られない大きな成功体験

私が自己肯定感を語る上で欠かせない成功事例は、生徒とのサイクリングです。

ただのサイクリングではありません。「びわいち(厳密には北湖一周)」という自転車で琵琶湖一周をするサイクリングです。

一周180キロ以上もあり、サイクリングを全くしない人がいきなりするものではありません。

しかし、それを実行しました。今考えるとよくやったなと思います。

ASDのA君という生徒(大学生)は人間関係のこじれ、学校の授業についていけない劣等感等、様々なことに対してネガティブに感じ、自己肯定感は0もしくはマイナスに等しい状態でした。

まずは抱えている悩み等を吐き出してもらうようにレッスンを展開しました。

話を聞くだけでなく、どういう対応をすれば良いかといったことも教え、少しずつですが状態は上向いてきました。

しかし、何か決定打がない。浮上のきっかけがいると、レッスンをしながらずっと思っていました。

そんな時、テレビで「びわいち」の存在を知り、これをすると何かが変わると直感的に思いました。

後はタイミングです。

6月にレッスンをしている時、いつもと雰囲気が違うことに気が付きました。

会話の端々でポジティブな言動もあったので「ここだ!」と思い、「びわいちってのがあるんやけど、夏休みに一緒にチャレンジしてみいひん?」と誘いました。

最初こそ驚いていましたが、私と一緒なら安心感もあったようで「やります」と応えてくれました。

後日言われたのですが、その時A君は、私がびわいち経験者だと思っていたようです(笑)

その返事を聞いたら、すぐに行程と日程を決めました。時間をおくと、その気持ちが萎える恐れがあったからです。

ざくっと約180キロと計算し、一日90キロ、時速15キロぐらいで走ったら6時間で宿泊地に着く。

意外と楽!と、その時私達は思いました。無知とは恐ろしいもので、机上の空論とはこのことです。

人生への影響

そして8月に入り、彦根駅からびわいちをスタートしました。

最初こそスムーズに進みましたが、昼過ぎになるとA君はヘロヘロになっていきます。

脱水症状には気を付けていたので、完全なガス欠です。

ただ、その時はそれがガス欠とは分からなかったので、とりあえず休み休み自転車をこぎました。

14時頃に湖北にある道の駅に寄り、昼食をとろうということで鴨そばを食しました。ごくありふれた普通の鴨そばです。

この鴨そばは、私とA君にとって忘れられない味となり、食べ物によってもたらされる効果を心と体の底から知ることになりました。

足が痛く、体力的にかなり限界にきていた私達は、鴨そばを食べたことによって動けるようになったのです。

特に顕著だったのはA君の身体の変化。あれほどヘロヘロだったのに、回復したのです。

テレビゲームでは食べることで回復するという設定がよくありますが、まさか現実でもそんな事が起きるとは思いもしませんでした。

理屈では、食べて消化され、栄養になるまでに時間がかかるのに・・・。本当に不思議な体験でした。

体力が回復し、同時に「やれる!」という自信もついてきたA君と私は再び漕ぎ出しました。

ところが、今度は私が大ピンチに陥ります。

何とか湖北を横断し、夜中に湖西に入ると、私の膝が悲鳴を上げました。

一漕ぎする度に激痛が走り、膝を切り落としたいとまで思いました。生徒の手前泣くことはしませんでしたが、号泣したかったです。

膝が痛み出してから3時間我慢しましたが、とある橋の前でついに倒れました。

電灯が一つだけで、周りには何もない。私もA君も絶望の淵にいました。

それでも、この活動はA君の人生を左右する程の大事な活動と捉えていたので、ギブアップという選択肢はありませんでした。

A君もそういう選択肢はなかったようで、「ギブアップしましょう」という提案はありませんでした。

後で知ったのですが、その時A君はどうすれば良いか分からず、頭が真っ白だったそうです。

結果的に良かったです。もっとも、提案されても却下していましたが・・・。

地図上では、宿泊のキャンプ場までは後少しだったので、休み休み進むことにしました。

A君は私が少しでも進みやすいように「段差があるから気を付けて」「枝に気を付けて」等と、頻繁に声をかけてくれました。

A君は普段は頼りなさそうに見えるが、窮地になるととても頼りがいのある人間に変貌するんだと、その時に気が付きました。

無事キャンプ場に着き、お菓子という名の夕ご飯を食べ、すぐに眠りに陥りました。

二日目も相変わらず大変でしたが、途中に寄った温泉で随分助けられました。

温泉って本当に身体を癒してくれるんだと、二人そろって驚きました。

16時過ぎに、彦根にあるレンタサイクル屋に着き、自転車から降りると自然と空中で手を合わせました。

しかし、その時に達成感はあまりありませんでした。疲労感の方が強かったためです。

日が経つにつれて、私もA君も強い達成感が心の中から湧いてきました。

A君は色々な人にびわいちでの体験話しをし、「ようそんな無茶な事をしたな」という誉め言葉を頂きました。

その言葉から、自分は凄いことをして成し遂げたと思うようになり、大きな成功体験と感じるようになりました。

こんな自分でも出来た、こういう自分でも良いなと初めて思えたそうです。自己肯定感が高まった瞬間ですね。

それからしばらくして、A君はサイクリングを購入して時々走っています。ライフスタイルにも影響が出ました。

また、外での体験は楽しいものであり、人間としての力も高めてくれると思えるようになり、私が外での活動を誘うと喜んで参加してくれるようになりました。大阪~嵐山、あわいち(淡路島一周)、滋賀県~養老の滝といったことを現在まで行っています。

自己肯定感は一時的に高まっても、環境や人との関わりでまた下がることはあるものです。

しかし、土台の部分がしっかりと作られたら、必要以上に下がることはなく、むしろ再び大きな成功体験をした時は何倍にもなって自己肯定感が高まります。

そんな土台部分を作ることに成功したお話でした。

自己肯定感を高めるには、「外での体験」「無茶と思えるような大きな成功体験」が必要だと、びわいちでの体験を通して信じるようになりました。

現在できないことをトレーニング等で出来るようになると自信がつく。

それはそれで大切ですが、子供がある程度大きくなると、小さな成功体験だけでは自己肯定感に繋がりにくいと思います。

子供の自己肯定感が下がって悩んでいる方は、思い切って何かにチャレンジさせてみるのはいかがでしょうか。

小さい子供の自己肯定感を高める

自己肯定感は子供が小さい内から高めることができ、逆に下げることも容易です。

前述した通り、当教室に来る子供達は自己肯定感が下がっています。

幼児でも明らかに下がっていると見受けられるケースもありましたが、ほとんどのケースは周りと自分を比較できるようになる小学生からが多いです。

小さい子供の自己肯定感が下がる要因が「保護者の対応」というケースが多いですが、保護者以外の周りの人達による要因というものもありました。

要因が保護者にしろ、それ以外の人にしろ、最初に私がお願いすることは決まっています。

「一日一回で良いので、ありがとうを言ってください」

それを言うには意図的に機会を作る必要があるので、家庭内で何かしら役割を与えて欲しいです。

アドバイス通り実行してくれた保護者の子供は、言動が変わってきます。

何かをさせようとしても「僕は無理やし」とすぐに言っていた子供が、「今日はお家でこんなことをしたんやで」と誇らしげに話してくれるようになりました。

行動に変化を起こすためには、まずは私のアプローチから変化させるようにしています。

ASDの子供とADHDの子供とでは、似たような行動をしても要因とアプローチ方法が違うので、実践して反応を見てから保護者にも同じ対応を求めます。

対応方法がマッチすれば、褒める回数と感謝する回数も自然と増え、子供自身もどういう行動は大丈夫で喜ばれるかと理解していきます。

すると、子供は自分の行動に自信と安心感が生まれ、自己肯定感も高まります。

対応方法の違いの紹介

対応方の違いについても少し触れておきたいと思います。

ASDの子供とADHDの子供が教室の壁に落書きをした。ということが実際にありました。

ASDの子供

描いた理由:「白い壁で描きやすいから」。

対応方法:その子によって微妙に変わってきますが、教室のルールとして、してはいけないということを視覚化し、ホワイトボードやミスプリントなら好きなだけ描いてもOKということを伝えると、壁に描かなくなることが多かったです。

ホワイトボードやミスプリントに描くようになると、すかさず「ありがとう、先生楽やわ」と伝えます。

ADHDの子供

描いた理由:「やってはいけないかもしれないけど、描くと楽しそう」という考えに至り、衝動的にやってしまった。

対応方法:やってしまったことは仕方ないと思うことが大切です。そして、やってしまった行動に対して責任をとらせる(描いたものを消してもらう)という手法を私はとりました。

それによって「やってしまうと後で消さないけないから、面倒くさい。止めておこう」という思考になり、ミスプリやホワイトボードに描くようになりました。

ADHDの子供は空気を読むことが出来るので、「ありがとう」と言うと不自然さを感じて逆効果になることがあります。

そういう場合は、描いている時に私も一緒になって描くことで、共感する姿勢を見せるようにしています。

何故なら、人は自分がしている行動が共感されていると感じると、自己肯定感が高まるからです。

中には「ありがとう」と言った方が効果がみられる子供もいるので、反応を確認しながら対応方法を決めましょう。

子供を観察して、その子にあった対応方法を模索し続けることは、支援者や指導者、保護者には必要な能力(姿勢)だと思います。

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