達成感を味わう方法
先日、マンツーマンの宿泊活動をしました。
原則宿泊活動はグループで行いますが、今回参加した生徒(A君)は、他の生徒と違ったポイントで達成感を得るタイプです。
現在のA君の状況から、グループで宿泊活動をするよりも、その子に沿った活動をする方が意義があると判断してのことです。
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達成感とは
辞書には、あることを成し遂げたことによって得られる満足感と書かれています。
あることとは偶発的なものではなく、予め立てた目標のことです。
今回の宿泊活動を考えるにあたって、A君の情報を整理することから始めました。
A君は普段から達成感、成功体験というものからかけ離れた状況にいます。
心の奥底では認められたい、褒められたいという気持ちがあるが、つい反発心が勝ってしまい、逆のことをやってしまう。
そして怒られるという悪循環に陥っています。
達成感や成功体験というのは、子供によって感じ方が違い、普段しないようなことをした時に達成感を得られる子供もいれば、そうでない子供もいます。
A君は、日常生活に役立つような行動や知識を獲得しながら最後まで一人でやり遂げた時が一番達成感を得られやすいタイプだと推測できたので、極力日常生活に役立つ活動内容と目標を設定しました。
A君は身の回りに関する改善点がたくさんあります。
そこからいくつかピックアップし、意識して行動したら得点が入るというゲーム形式にしました。
3分間、背中を伸ばして歩いたら1点、道路を渡る時に左右を見て渡ったら1回につき1点といった感じです。
こういうことは小さい内から出来て当たり前と思う方はいると思いますが、A君にとっては難しかったようです。
ただ、意識すれば出来るという微妙なラインなので達成感も得られやすく、A君自身もそれは理解しているので、モチベーション高く行えます。
得点は60点以上、買い物や鍋づくり、帰りの準備を一人で行うことを目標にしました。
達成感を得られる活動
宿泊活動は、一人で教室まで来ることからスタート。
A君が大津駅に着いてからは、私がこそっと隠れながら後をついていきました。
行き方が書かれたスマホのメモ帳を見ながら教室へ向かっていましたが、途中で道が分からなくなり、私に電話をしてきました。
11月の緊急宿泊活動の時も道が分からなくなり、私に電話をしてきましたが、その時はどう説明したら分からず、何を言っているかさっぱり分かりませんでした。しかし、今回は前回の反省を活かせて、目印となるものを説明したので現在地が私に伝わりました。
無事教室に着き、私の顔を見ると「やった!」とガッツポーズをしていました。
電話とメモ帳を駆使して、到着したことで成功体験と達成感を得られたようです。
教室で今日一日の行程を確認した後、夕食の食材を買いにスーパーへ向かいました。
道中、ルールに書かれたことを意識し、3分経過する度に私が得点を言うので、その度に嬉しそうな表情。
スーパーに着いた頃には30点獲得でき、軽く「よし!」とこぶしを握りました。
余談ですが、2日目になると慣れたのか、嬉しそうな表情はなくなりました。しかし、意識は継続していました。
夕食は鍋ですが、どこに何があるか分からないので、生徒は店の人に訊きながら食材を購入しました。
達成感を得られるよう、私はアドバイスを送るだけにし、生徒自身の力でやり遂げてもらいました。
鍋づくりでは、火の調整を私がし、調理は生徒が担当。
見守るだけのつもりでしたが、どういう手順でやるか分かっていない生徒は、いきなり鍋で肉を焼こうとしたので、思わず止めてしまいました。
手順が分からない時は、スープの素のパックに書かれていると教えると、なるほどといった顔をしてパックの裏を読み始めました。
口頭で教える事も出来ましたが、忘れる可能性が高い生徒です。忘れるとすぐに劣等感に苛まれるので、どこにヒントが書いてあるかを知っていれば、今後失敗しかけても乗り切れます。不思議な事に、人はヒントとなるものは意外と忘れないものです。
鍋は無事完成。生徒は一人で作れたという達成感を味わいつつ、鍋も味わいました。
翌朝は琵琶湖から昇る日の出を見たいと生徒が言うので、アラームをセットすることに。
前回の緊急宿泊活動では、アラームをセットしつつも、バイブ機能にしていたので起きることができず、日の出から2時間後に起床。失敗体験になりました。
その反省を踏まえて、今回はしっかりと音が出るように確認していました。
そして翌朝、見事アラームを使って起きれました!と言いたいところですが、何故かアラームが鳴る前に生徒は起きてしまいました。
失敗体験ではないですが、成功体験かと訊かれれば微妙なところです。
アラーム音を聞いて起きるのが目標だったために、生徒も喜んで良いのか若干戸惑っていました。
その代わり、予想だにしないことで達成感を得られる出来事がありました。
それは、一人で帰りの準備をしたことです。目標としてはいましたが、実は一番難しいと思っていた目標です。
何故なら、寝袋を袋にしまうことも含まれるからです。これはなかなか難しい作業で、悪戦苦闘すること間違いなし。私も慣れるまではとても苦労しました。
超がつくほど不器用なA君一人ではとてもできない。そう思い、私は手伝うことを前提に動こうとしました。
すると、天からの囁きのように「もし一人で出来たら大きな自信に繋がる」という考えが頭の中に浮かび、やり方を教えてみました。
案の定、何度チャレンジしても入りません。それでも私は根気よくスモールステップで教え、A君は諦めることなくやり続けると、見事袋に入れることが出来ました。
これには正直驚きました。あんなに不器用なA君が入れられるとは・・・。心の底から「やったな!!」と賞賛しました。
A君も、袋に入れられた成功体験と一人で帰りの準備を出来た達成感で、満面の笑顔をしました。
目標を達成して
生徒だけでなく、私自身も達成感を得られました。
生徒の行動パターン、思考、価値観等を吟味した上で活動内容を考える必要があったので、モンモンと考える日々が続き、頭が爆発しそうでした。
でも、そのかいあって予想以上の達成感をA君は得られたと思うので、やって良かったです。
ある人が「人は人のために行動しているように見えて、実は自分のために行動している生き物だ」と言っていたことをふと思い出しました。
確かに、子供のためと思って考えた活動でしたが、最後は自分のための活動だったかもしれません。
達成感を得られるからこそ、この仕事を続けられるのだと、改めて実感しました。
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