コンセンサスゲームで合意形成を学ぶ

比較的合意形成が得意なひだち教室長の安藤です。

発達障害のある人にとって苦手な分野と言えば、コミュニケーションが挙げられます。

そんなコミュニケーションが苦手な人が楽しんで学べるという、コンセンサスゲームというのがあります。

今回は、高校生・中学生・小学校高学年の合同のレッスンで、コンセンサスゲームをした時のお話しです。

コンセンサスとは

コンセンサスとは、複数の人による合意・意見の一致を意味します。

複数人の合意や意見を一致させようとすると、多数決がよく使われますが、多数決とは違います。

10人いたら10人全員の合意が必要なのです。

これはとても難しいことで、言語能力、社会性、共感性が必要です。

コンセンサスゲーム

コンセンサスゲームは、チームメンバーとの『合意形成』を求められるゲーム。

自分の意見を提示し、皆の意見を聞きます。

その後、チームで話し合って全員が納得する結論を導き出すというものです。

コンセンサスを得るには、僕はこうしたい、これはイヤだという感情的なものではありません。

何故それは必要なのか、何故それはいらないのかといった理由をしっかりと言う必要があります。

ゲームで意見の一致の仕方を学ぶ

発達障害の人も定型発達の人も、自分の意見を持っていても理由を言うのが苦手としている人は多い。

苦手だからそれから避ける人生を歩む人も多いでしょう。

私は避けることがダメとは思いません。しかし現実は厳しく、仕事の場面ではよく求められる能力です。

私は生徒達に、コンセンサスゲームを通して、意見の一致の仕方を学んでもらおうと思い至りました。

まだ子供なので高度なことは求めませんが、全員が納得できる結論に至ってほしいと思いながらゲーム開始。

無人島脱出ゲーム

インターネットでも問題は掲載されています。

しかし、本格的なルールでやるととても難しいので、アレンジしました。

また、ストーリーも変更。

ゲーム参加者は、高校生×3人、中学生×2、小学生(高学年)×3の合計8人で実施。

ルール

《ある日、あなた達(2人)は謎の集団に拉致され、無人島に置いて行かれました。

気を失っていたあなた達は目を覚まし、海岸を歩いていると、手紙と荷物を発見しました。そこにはこう書かれていました。

「一ヶ月後、島の近くに船が横切る。20個のアイテムから10個選び、アイテムを駆使して生き延びてみろ。」》

この設定を考えている時は結構楽しかったです。

後日、いくつかオリジナル設定のゲームを考えて作成したほど。

アイテム

アイテムは役に立つと思われる物、ネタやん!と突っ込みたくなる物、合計20個書きました。

・チョコレート ・白い布 ・消毒用アルコール ・サバイバルナイフ ・アルミホイル

・大きな布 ・簡易トイレ ・鉛筆 ・方位磁針 ・携帯電話 ・電池 ・ごはん4合分

・お茶が入ったペットボトル(500ml)×4本 ・サッカーボール ・糸

・いやらしい本 ・3DS ・サランラップ ・ラッパ ・防水シート

馴染みのない物も少しありますが、多くの物は聞いたこと、見たことのある物ばかりで用途も分かります。

といっても、それは一般的な話しであり、発達障がいの生徒がどこまで理解しているのかは未知数でした。

そのため、単語の理解力を知るキッカケにもなります。

島の環境条件

環境設定も付け加えました。

・森があり、植物は豊富

・鳥や虫はいるが、大き目の動物はいない

・島の周りは浅瀬で、船は近くまで近づけない

・スコールがたびたびある

条件を細かくするとイメージした時の行動範囲が狭くなってしまうので、4つに絞りました。

生徒の中にはスコールは聞いたことがなく、知らなかった者もいました。

そんな時は『ゲリラ豪雨』みたいのと言ったらすぐに理解できました。

単語を知らない者には、実生活に関わりのあるものを伝えるとイメージがしやすいです。

ゲームの解説と生徒達の反応

ゲームの流れは単純です。

自分が必要と思えるアイテムを各自考える⇒全員で話し合い、全員が納得できるアイテムを決定する。

様子を見ていると、楽しそうにやる生徒と苦しみながらやる生徒とで反応が別れました。

楽しそうにやる生徒:小学生(高学年)×2、中学生×1、高校生×1

苦しみながらやる生徒:小学生(高学年)×1、中学生×1、高校生×2

年齢が高ければ考えやすいというわけではないようです。

分析してみると、それぞれ以下のような共通点が考えられました。

楽しそうにやる子供達は、普段から自分の考えを持っていて、自分で考えて行動する機会が多い。

苦しみながらやる子供達は、親から言われたことをやる機会が多く、自分で考えて行動する機会が少ない。

また、パターン化した行動が多い。

全員で話し合って、全員が納得できるアイテムを選択した時は、色んな意見が飛び交いました。

ただ、皆から合意を得られるような理由を説明できる子供は少なかったので、私のサポートは必須でした。

環境の条件を加味した上でアイテムを選ぶことが難しく、条件と理由が矛盾することが度々ありました。

私は極力生徒達が凹まないよう、笑いながらツッコミを入れるようにしました。

90分後、ゲームは無事終えることができました。

とても頭を使ったから疲労感はかなりあったようです。

しかし、全員が納得できる答えを導き出せたとあって、皆達成感は強かったようです。

ダラ~と休憩しながらお互いの顔を見て笑いあっていたのが印象的でした。

問題点

コンセンサスゲームは知識や経験の差が大きく影響されます。

特に異学年で行ったので、それらは顕著に表れました。

・メモに書かれているアイテム自体を知らない。

・アイテムは知っているが使い方を知らない

・普通の使い方しか思いつかない

(例:消毒用アルコールは手を消毒するものであって、傷口を消毒する使い方が思いつかない)

・多数決をとってしまう

子供にコンセンサスゲームをする時は、アイテムに関する情報を提供する必要がありますね。

多数決をとってしまう。これが一番の問題でした。

ルールとして多数決はダメだと伝えているのにも関わらず、多数決をとろうとする場面が何度も見られました。

話し合いが煮詰まってくると多数決で解決しようとするので、その度に私が注意をすると、重い空気が流れました。

子供にコンセンサスゲームをさせる場合は、煮詰まってきた時のアドバイス方法を考えておく必要もあります。

その他のゲーム(砂漠からの生還・雪山からの下山)

コンセンサスゲームは似たような内容でも、環境や条件を変えるだけで、いくらでも楽しめます。

下記のような条件のコンセンサスゲームも行いました。

【砂漠からの生還】

異常な暑さ、砂漠という環境条件は想像できないので、興味を持つ機会にもなりました。

【雪山からの下山】

アイテムに地図があり、皆地図の使い方は知っています。

しかし、条件によっては使い物にならなくなるという発想が全員出来なかったのが印象的でした。

どれも楽しく終わったので、興味ある方はやってみてください。

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