ADHDへの対応と活かし方

前回はADHDの特徴を書きましたが、今回は対応とADHDの特性の活かし方について書きたいと思います。

>>>ADHDの特徴の記事

ADHDがある人に処方される、コンサータやストラテラといった薬については触れません。

効果を実感できるならば服用して欲しいという思いはありますが、それを決めるのは保護者と医者。

私は教育者なので、あくまで教育的観点から対応や活かし方を考えていきます。

※全てのADHDの人に当てはまるわけではありません。一般的に言われていることと、私が実際見聞きしたこと、実践したことを混在して書いています。こういう人もいるんだという認識で読んでいただければと思います。

ADHD(注意欠如多動性障害)を理解した上で実践

ADHDの特徴を理解することは大切ですが、人によって特徴の表れ方が違い、困り感も違います。

この人はどういう部分で困難さがあり、どういう部分は大丈夫なのか、何が将来の仕事に役立つかといった分析が重要です。

それらを理解した上で、学んだ対応方法や活かし方を実践すると、効果が上がります。

デメリット部分の対応方法

ADHDにはこの方法!ではなく、その子に合った対応方法を模索するのは前提です。

アセスメントをとり、トライ&エラーを繰り返しながら見つけていくしかありません。

とはいえ、環境調整、人の態度、トークンシステム(いわゆるご褒美)、相談役の存在といったものは必ずどこかで活用されます。

ケアレスミスは減らせても無くせない

学習場面では、目移りしにくくするためにプリントの情報を少なくする、定規を使いながら読むことで勝手読みを減らす、テストでは名前をまず最初に書くことを習慣づけたりします。

学校では先生や保護者が対応策を練ってくれますが、社会に出ると助けてくれることはほとんどありません。

当事者が社会に出るまでに身に着けたいのは、「自分が苦手としていること(例:見落としが多い)」「どういう手段をとると苦手なことができるか(例:見るべき箇所に赤丸をつけておいてもらう)」「得意なこと(出来ること)」を伝えるスキルです。

ADHDを打ち明けずに就職された人は、ADHDを理由としない「言い訳(例:隠れ斜視があるから)」を用意しておくのも一つの手です。

それらを事前に伝えると伝えないとでは、対応や評価が変わってきます。

当事者の話をしてしまいましたが、では、周りの人達はどう対応すれば良いか。

「ちゃんと見ろ!」「ミスが多すぎだろ!」「しっかりしろ!」と注意や激励(罵声)を浴びせると思いますが、それは無意味です。むしろ、自己肯定感が下がってしまい、ミスが増えます。

短時間は集中できても、長時間集中を維持することが困難なので、ミスはどうやっても生じます。

ケアレスミスによって大きな損失が出るような仕事を任せないようにしたり、二重のチェック体制を敷くと良いでしょう。

気が散りにくい環境づくり

刺激(情報)に対する反応が強いので、周りがゴチャゴチャしていると気が散りやすく、集中を保つのが難しくなります。逆に、刺激となるものが減ると集中しやすくなり、学びやすくなります。

ADHDのある子供に検査をした時に、予想よりも高めの数値が出るのは、環境が整っているからとも言われています。

環境に左右されやすいので、学校では掲示物を減らす、席を最前列にする、生徒の机に囲いを作るといった対策が行われます。

職場でも出来ることは似たような感じですが、職場によっては「ぼっちテント」と「好きな音楽」を活用できます。

「ぼっちテント」は自分のデスクの周りを覆えて、刺激を減らすことができます。

気が散りやすいと言いましたが、実は刺激が無さすぎるのも逆に集中を維持するのが難しくなるので、ある程度の騒がしさも必要。そんな時にウォークマン等で好きな音楽を聞くと、集中しやすくなります。

一つ注意点があり、激しい音楽や好きすぎる音楽だと意識が向き過ぎるので、優しい曲でそこそこ好きな音楽を聞くのがベターです。

物の置き忘れ防止

忘れるのは日常茶飯事なので、仕事が終わったらチャック表を確認するというルールを確立することが大切。

しかし、バイト先のスタッフから相談を受けたことがありますが、チェック表を作っても効果はなかったそうです。

詳しく聞くと、その人だけがチェック表を強制的に使わされていました。

全体のルールとして行わなければ意味がなく、自分だけやらされるとなると、プライドが傷ついて逆に使わなくなります。

当事者の行動パターンを分析することも有効。行動パターンが分かると、当事者自身も忘れた場所を思い出しやすくなるからです。

片付けや整理整頓は自分でやってもらう

小さい内に、整理整頓を習慣づけているのがベストですが、難しいです。

保護者や周りの人達は、ガチャガチャした部屋を見て嘆くことでしょう。

しかし、整理整頓ができないのではなく、長期間維持するのが難しいのです。

整理整頓の仕方は家庭の方針によって変わってきますが、他者(親含む)が定めたやり方は、目から鱗なやり方でない限り、長続きしません。

細かく分類すると面倒くさくなるのでNG。三種類程度に分けるのがベストです。

整理整頓の仕方が確立されていても、片付けや整理整頓をするモチベーションが高まらなければしません。

子供の時はトークンシステムが有効ですが、成長するにつれて効果は薄まります。

そこで、大きくなるにつれて人の目を気にするようになるので、たまに友達やお客さんを呼ぶと「恥ずかしいからやらなきゃ!」と自然に整理整頓するようになります。頻繁に呼ぶと、どこかで緊張の糸が切れて「もういいや」と思うようになるので要注意。

約束や頼み事は記憶に頼らない

ADHDのある人はワーキングメモリーが低いので、記憶に頼らない方法を確立したいところ。

当事者の対策として、手の甲に約束事を書いたり、スマホのカレンダー機能(アラーム付)を活用している人を見かけます。

カレンダーに書くだけでは、書いたこと自体を忘れていることがあるので、アラーム機能はぜひつけて欲しいです。

周りの人達に出来ることは、前日と当日に確認のメールを送る、時間に遅れてくるものだと覚悟しておくぐらいです。

職場で何かを頼む時は、別の仕事を一度終えた時に頼むか、メモに書いて目につく所に貼り付けるのが有効です。

視覚化が原則ですが、細かいことを言うと、聴覚優勢型と視覚優勢型、継次処理型と同時処理型とでは微妙に違います。

試した方法が効かなかった場合は、専門家にこれらを聞きながら対応策を考えてみるのも良いでしょう。

怒りには毅然とした態度と第三者の存在

子供に多い癇癪に対しては、無関心やブロークンレコードといった手法で改善を図れますが、中学生以上となると怒りの原因も複雑化し、手法に頼り過ぎるのは危険です。怒りの根本は何かをしっかり考えるべきです。

仕事中に生徒に殴られた経験もありますが、その経験を踏まえると、毅然とした態度を示すのが何よりも大切です。

その上で、CCQ(calm、close、quiet)を意識しながら理由を聞き、最後に本心を話してくれた事に対して、感謝の言葉を告げるのが私のやり方。

学生相手ならこの手法は使えますが、大人相手だとそうはいきません。

失敗に対する不安、自尊心や自己肯定感の低さ、妬み、嫉妬、苛立ち、無力感等が「怒り」という自己防衛反応として表面化します。

当事者が何とかしたいと思っているなら、アンガーマネジメントを学ぶのも良いでしょうが、時間を要すると思います。

怒りを向けられた人は、冷静に受け流すのが原則。収まらないようなら、第三者が仲介(先生や上司)に入る方が良いです。

怒りを溜め込むタイプは、愚痴を誰かに言ったりするはけ口を必要。学校や会社内に愚痴を言い合える人がいるといないとでは、大きく違います。

怒り表に出すタイプも溜め込むタイプも、負の感情の蓄積がそもそもの原因です。当事者がそれに抗うには、自己肯定感しかありません。

実際ADHDがあっても、自己肯定感が高い人は瞬間湯沸かし器のように、すぐに怒りがMAXになることはありません。

自己肯定感が高まると、全てが好転します。これは言い切れます。

目の前の困難への対応方法にばかり目を向けるのではなく、自己肯定感を高める方法にも目を向けて欲しいです。

やる気スイッチは損得勘定を利用する

宿題や部屋の掃除といった自分に関することはやる気が起きにくいものの、突然スイッチが入るので、周りの人達にはそれを待てるなら待って欲しいところです。

しかし、現実はそうもいきません。そこで、損得勘定に敏感なADHDにはトークンシステム(ご褒美)が有効です。

小学生にはシールといった物でも効果的ですが、中学生以上となると、ちょっとやそっとのご褒美では効果がありません。

大きくなるにつれて、「得」をするよりも「損」することに敏感になるので、やらないことで「損」と感じられる(罰とは違う)ようなルールや雰囲気づくりの方が経験上有効です。ただし、多様は禁物です。

以前、バイト先でADHDと思しき人と同じグループに属したことがありますが、その人は「得」と「ご褒美」に関して非常に敏感でした。

時間に余裕があるので、ゆったりめに作業を進めていたのですが、ある時点で作業をこの作業が終われば、予定よりも早く帰られるということに気が付きました。

「早く帰れたら奥さんに制限されず(仕事で家にはいない)にお酒を飲める」「ゆったりしながらたくさん飲める」という、「ご褒美」と「日常と違うをお得感」を自ら設定すると、それまでゆったりしていた作業を急ピッチに進め始めました。

周りの人達はそれに振り回されましたが、本人が一番汗だくになって頑張っていたので、文句も言いづらかったです。

「お得感」と「ご褒美」があれば誰でも頑張れると思うかもしれませんが、スイッチの切り替えの早さとそれに向けてのエネルギーは定型発達の人にはないものです。

習い事の継続には刺激と変化がいる

ADHDのある人は習い事が続かないとよく聞きますが、長期間継続している人もいます。

モチベーションを維持できる要因はその人次第ですが、要所要所で新鮮な刺激と変化があるから続けられます。

「継続は力なり」と言うように、大人になった時に心の拠り所にもなるので、1つぐらいは継続できるものがある方が良いです。

しかし、ADHDの特徴を考えると、時間をかけて1身に着けるより、短期間に100経験する方が、後々仕事などで役立つのではないでしょうか。

感受性が強すぎる故にしんどくなる

人や環境の変化に敏感で、キャパを超えるとダウンしてしまいます。

ネガティブな気に当てられたり、必要以上にプレッシャーを感じて体調を壊すこともよくあります。

ADHDのある人は鬱になるリスクが定型発達の人と比べて高いので、周りの人達は運動を一緒にしたり、愚痴を言い合ったりと、発散できる環境づくりを整えて欲しいです。

メリット部分の活かし方

ADHDの強みは学校という狭い範囲だけで留めておくと、宝の持ち腐れになります。

無尽蔵ともいえるエネルギー、アイディアの豊富さ、勢い、感受性の豊かさといった部分は、成績重視の学校では評価されにくいです。

しかし、学生時代に特徴を発揮できる環境と成功体験を積んでいれば、社会人になった時に大きな成功を掴める可能性があります。

では、そんなADHDのある人を周りの人達はどう活かしていけば良いか。

リーダーに指名する

多動性・衝動性優勢型はリーダー気質があります。

自然と周りを明るくし、引っ張っていくエネルギーや決断力もあるので、環境が整えばリーダーに指名してみるのもありです。

その環境の一つが、サポート役をつけること。

ケアレスミスやスケジュール管理といった、一般的に簡単と言われることが苦手で、そこにエネルギーが割かれるとエネルギーが一気に枯渇します。苦手なことは出来る人に丸投げする方が、良い結果に繋がりやすいです。

また、勢いがありすぎると自分勝手な判断をしてしまう危険性もあるので、落ち着かせて熟考させる機会をつくってくれるサポーターの存在は必須です。

昔野外活動をした際、ADHDと思しき生徒(小学2年のA君)にグループリーダーをしてもらったことがあります。最初A君は嫌そうな表情をしましたが、いざやり始めるとムードメーカーとしての役割も発揮するようになり、予想以上に上手くグループを率いてくれました。

判断に困った時や時間配分といったことはサブリーダー(小学4年)と相談しながら、最終的な決断はA君が行いました。一年間通してやってもらった結果、「人として物凄い成長をした」と、保護者から感謝の言葉を頂きました。

非常に良い傾向だったのですが、その翌年は別の生徒をリーダーに指名したところ、A君は一気にモチベーションが下がり、前年みたいな覇気が消えてしまいました。

ADHDのある人には、ちくいち指導するよりも、役割や環境を与えることの方が成長曲線がググっと上がりやすいです。また、自己肯定感を高めるという点においても有効です。

そういうこともあり、周りの大人達は指導者というよりもモチベーターであるべきだと常々思います。

モチベーションを上げる

ADHDのある人が何かを成し遂げる時は、モチベーションが全てといっても過言ではありません。

何がモチベーションになるかはその人によって変わりますが、意外と「人」であることが多いです。

ある生徒(B君)の話です。

どれだけ努力しても英語は70点前後が精いっぱいだったのが、たまたま80点をとれた時がありました。テストを全員に返却してから、突然英語の先生はB君に立つように言いました。B君は叱られるのかと覚悟したら、英語の先生は「B君はついに80点をとれました。努力が素晴らしいです」と拍手をして皆の前で褒めてくれたそうです。

B君は80点をとれた喜びよりも、皆の前で努力したことを褒めてくれたことが大きな喜びとなりました。

それ以来、英語の先生にまた喜んでもらいたいという、これまでにない高いモチベーションが芽生えると、英語の成績がグングンと上がり、中学2年の三学期には、英語の成績が10段階で10をとれました。

ADHDのある人は失敗体験が多く、自尊心が低くなりがちです。そのため、誰かに認めてもらえるというのが大きなモチベーションになり、良い結果に繋がった最たる例です。

承認欲求があまり満たされずに大人になると、仕事のモチベーションは「人」である可能性が高いので、「人」を使ったモチベーションの上げ方を考えてみるのも良いでしょう。

アイデアが必要な会議等に参加してもらう

毎年開催されるイベントを企画するよりも、一味違う新しいイベントを企画する方がモチベーションが高いです。

たくさんの経験と豊富な知識を持ち合わせていると、面白いアイデアが思い浮かびやすいので、商品開発や新しいイベント企画、会社内を改革する時には適任だと思います。

斬新すぎるアイデアもありますが、会議が活性化することは間違いないです。

アイデアが浮かんでも、それを段取りよく進められるとは限らないので、一人で責任を負わせるのではなく、チームで行う方が良いでしょう。

誰か(動物含む)のためなら働ける

モチベーションを上げるにも繋がりますが、世話好きな人が多いので、それを活かした仕事が向いています。

教師、医師、獣医師、看護師、介護士、警察官、相談員、保育士等のように直接人や動物と関われるもの。

感受性が強いタイプだと親身に対応できるので、好かれる可能性も高いでしょう。

ただし、感受性が強いのでネガティブ思考に陥るとしんどくなりやすく、そんな状態でも無理をしてしまうきらいがあるので、周りの人達は心のサポートを心掛けた方が良いです。

面白さをとことん追求できる環境づくり

面白いと思ったら、とことん追求できる実行力があります。

面白いものがなんであれ、周りの人達は応援すると姿勢と追及しやすい環境を整えて欲しいです。

お金が必要ならお金を出す、人手がいるなら人を派遣するといった感じです。

応援はできても、環境を整えるにはお金がかかるので、出来る範囲で良いと思います。

当事者が面白いと思っていることを否定するような発言は、絶対に控えなければいけません。モチベーションが下がるだけでなく、自己肯定感の低下、追求するためのエネルギーが失われる恐れがあります。

ある程度満足を得られると、すぐに飽きてしまうのもADHDの特徴なので、飽きてしまったら仕方ないと思う方が気が楽です。

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