コーチングの効果を目の当たりにして

ひだち教室の生徒に初めて教室のスタッフ(臨床心理士)によるコーチングを行いました。

子供達はどういう反応を示し、何か変化が起きるのか、私も同行してコーチングレッスンに参加しました。

コーチングについて分かりやすく

コーチングを受けないかという提案を保護者にするにあたって、コーチングというものを知っているか訊ねると、全員が知りませんでした。

まだまだ一般的には知られていない手法のようですが、私が説明すると理解して頂け、ぜひ子供に受けさせたいという事で実現に至りました。

さて、コーチングについてです。

コーチングをする側(教室のスタッフ)がコーチングを受ける側(生徒)に問いかけて聞くという対話(コミュニケーション)を通して、相手(生徒)がアイディアや選択肢に自ら気づき、自発的な行動を起こすことを促す手法です。

コーチングをする側が持っている知識や技術を一方的に押し付けるのではなく、コーチングを受ける側が持つ知識や技術を再確認させながら話を展開していきます。

コーチングの効果が一番望める人は、将来についてモンモンと考えていて、情報が整理できなくて苦しんでいる人。そして、それについて何とかしたいという高いモチベーションを持つ人だと思われます。

今回行った生徒達の中には、非常に高いモチベーションがある生徒がいて、コーチングを受ける前と後の生徒の思考や表情の変化を目の当たりにしました。

子育てにも仕事選びにも使えます

コーチングを行うにあたってまず求められるのは言語能力です。ある程度の言語能力が育ってからでないと対話は難しく、また自己理解力も必要なので、小学生(中学年)あたりまでは難しいでしょう。

高学年の小学生あたりからコーチングを受けられますが、高いモチベーションを持てるかがキーポイントです。個人的には将来について考えだす中学2~3年生ぐらいに受けた方が良いと思っています。

長い子育て期間の中で、どのタイミングで子供が受けてみた方が良いか、保護者自身が判断するよりも、第三者が客観的に分析して判断してもらう方が良いかもしれません。保護者は子供との距離が近すぎるため、子供の状態像を正確に把握できないことがあるからです。

コーチングが子育てに活かせるかは保護者の心持次第です。

コーチングによって子供が気づいたアイディアや選択肢を共感して受容し、そのために後押し(勇気づけ)を出来ると、子育てに随分役立つと思います。

コーチングは就職で悩みだす時期に受けると、大きな手助けになるでしょう。

今回、就活で悩む生徒にコーチングを行い、実際手助けとなったと感じられる場面を目の当たりにしたので、それについて書きたいと思います。

仕事の意味を見いだすのに必要な作業

A君は就活に苦しんでいました。周りの友人は次々と就職先が決まる中、自分だけがどういう道に行くか決まっていない。

周りからのプレッシャーや劣等感に押しつぶされそうになっていました。

そんな情報を保護者から聞いていたので、何か手を打たなければいけないと私は思い、教室のスタッフ(臨床心理士)に相談して、コーチングを行うことにしました。

最初はA君自身に受けるかどうかを決めさせるという保護者の判断でしたが、A君はそれどころではないという理由で受けませんでした。

自己決断が出来ない心理状態なのに、来るという選択肢を選ぶはずがありません。

9割はA君の意志を受容しても1割は後押ししないと前には進みません。また、今後の彼の人生に大きな影響を及ぼす可能性があると信じていた私は、選ばせるのではなく「受けた方が良い」という後押しをしてほしいと保護者に伝え、その後実行してくれたようで、受けることになりました。

正直、心底ホッとしました。まだA君は前に出る力があると分かったので・・・。

A君は障害者雇用で会社で働くか、音楽関係のバイトをするか、日本語教師になるための学校に通うか、とても悩んでいました。

それぞれのメリットデメリットは理解していましたが、優先順位をつけるという作業をできなかったために、頭の中はゴチャゴチャしていました。

臨床心理士のスタッフ(私も時々加わる)と対話しながら、メリットデメリットを再確認しながらコーチングがすすめます。

自己理解が深まっていき、同時にA君の目に光がみなぎってくるのが分かりました。

自分を再発見・再確認できることで徐々に何か光が見え始めたからだと思います。

さすが臨床心理士というより、この臨床心理士のコーチングの進め方とA君との相性がピタっと当てはまったのでしょう。

ひだち教室を手伝ってくれて本当に感謝感謝です。

ある程度自己理解が深まっていくと、新たな選択肢があることにA君は気が付きました。障害者雇用で会社で働く、音楽関係のバイト、日本語学校に通うの3択、さらに、障害者雇用で会社に勤めながら日本語学校に通う、音楽関係のバイトをしながら日本語学校に通うという2択が追加されました。

この選択肢はA君にとって目から鱗だったようで、驚きと同時に感動に震えていました。

そこから順位付けをしてもらうと、

①音楽関係のバイトに専念

②音楽関係のバイトをしながら日本語学校に通う

③日本語学校に通う

④障害者雇用で会社に勤めながら日本語学校に通う

⑤障害者雇用で会社で働く。

A君自身、障害者雇用で会社で働くのがこんなに低い位置づけだったことに驚いていました。

可視化することでそれがはっきり分かったので、モヤモヤしたのが晴れたそうです。

A君は来た時とは違って目に生気を宿しながら帰りました。コーチングの効果を目の当たりした瞬間でした。

後はA君自身がどういう決断をして行動するかです。後悔のない選択をして欲しいものです。

今回のコーチングで、なるほどなという名言をA君はいくつか言いました。その中で特に印象に残った言葉です。

「興味の度合いによって責任・確信・自信が全然違う」

ASDの人は興味がある事とない事とで、能力発揮が極端に上下するのは知っていましたが、確信、責任、自信にまで影響があるとは思いませんでした。

興味がないことは責任とれと言われても納得できないので嫌だが、興味があることは納得できるから責任を負う気概がある。

興味があることはやったことがなくても、自分自身の中でいつか出来るという確信があるからできる。

今までの経験上、興味あることなら頑張れる自分を知っているから、自信がもてる。

なるほどなと、私も目から鱗状態でした。

サポートする人達の役割

A君とのコーチングを踏まえて、サポートする側の役割も見えてきました。

ASDの人をサポートする時は、就職について様々な知識がある人、自己理解を深めながら興味あることを訊きだす(引き出す)人、息抜きを一緒にできる人、後押しをする人という四位一体又は三位一体でサポートすべきではないでしょうか。

連携がとれるなら、それにこしたことはないのでしょうが、連携がとれていなくても良いと思います。

それぞれの価値観でアプローチをすることで、今回のコーチングでA君が気が付いたように、違った観点から自分を見る事ができるからです。

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