就労支援で障害者が納得できる人生を歩めるために
子供が大きくなると、誰しもが就職について考えます。私が担当する生徒の保護者も就職について悩まれている方は多いです。
私自身どういう道があるかというのは詳しくなく、もっと詳しく知りたいと思っていたところに、特別支援教育士限定の研修会で就労についての研修会があると聞き、行ってきました。そこで聞いた就労支援のあり方や実情、ひだち教室だからこそできる就労支援について書きたいと思います。
Contents
障害者の就職・求人事情
障害者はなかなか就職することが難しいという背景が長年あるので、国は事業主に対して、従業員の一定割合 法定雇用率 以上の障害者の雇用を義務付けています。
民間では2.2%、国・地方公共団体では2.5%、都道府県等の教育委員会で2.4%と決められています。平成33年にはさらに0.1%引き上げられます。
最近では、官公庁等での不正な手続きで話題になりましたが、現代においてもどこか障害者をないがしろにしている感が否めません。
ネット等で障害者の求人情報を見ていると、事務職や軽作業、農作業等といったことが多く、個人的な感想ですが、選択肢の幅が狭いと感じました。また、知的障害者、精神障害者、身体障害者を想定している所が多いように思えました。
ASDの人には、同じ作業を繰り返しできる軽作業や製造作業、清掃作業が向いていると書いているサイトもありましたが、私は釈然としません。
長年、ASDの生徒達を見ていると、創造的な能力が高い生徒もいますし、人とコミュニケーションをとることが好きな人もいます。そして、繰り返しできる作業は確かに特性上適していて出来るでしょうが、興味のない事は基本長続きしません。そういった特性も考慮された求人がもっともっと掲載されて欲しいものです。
障害者の主な就労の場所
企業、官公庁、特例子会社、就労継続支援a型事業所、就労継続支援b型事業所、他にも様々な就労の場・形態があります(在宅ワークなど)。
その内、企業、官公庁、特例子会社、就労継続支援a型は一般就労で、雇用契約を結びます。
希望者の多い一般就労
雇用契約は給料や社会保険といったものが比較的しっかりしているので、ここを目指す方は多いです。
ただ、一般雇用枠なのか、障害者雇用枠かで変わってきます。
一般雇用枠
企業就労でも、障害者雇用枠を使わずに就労する場合は健常者と全く同じ扱いなので、特別な支援はありません。そのため、離職の可能性が高まります。
自分に何かしらの発達障害があると気が付かないで入るケースが多く、何の支援や理解もない状態のため、仕事で失敗が続く、人間関係を上手く築けないという問題が生じてしまい、心を病んでしまって離職したという話はよく聞きます。
研修会で話を聞くと、企業に言わなくて就職できたというケースもあるが、継続して就労となると本当に難しいようです。
障害者雇用枠
企業就労でも障害者雇用枠で就労する場合は、企業からの支援、ジョブコーチによる支援、障害者就業・生活支援センターによる支援など、様々な支援を受けることが可能です。
ただ、一般雇用枠と比べると給料が安く、最低賃金のところが多いです。
研修会で障害者雇用の求人票の紹介があり、そこには15万円~15万円と書かれていました。
給料が上がらないのか?と指摘した方がおりましたが、上がらないわけではないが、微々たるもののようで、これで本当に一人で生活できるのかとさらに追及されると、講師はぐらかしました。何か人に言いにくい事情があるのでしょうか・・・。
就労支援とは
就職をしたり、就職後に仕事ができるようにトレーニングを提供することを就労支援と呼びます。
就職先を当事者と一緒になって探したり、面接の受け方や就職後のアフタフォローも含まれます。
就労支援事業所
障害者自立支援法によって、就労支援をサービスとして提供する就労支援事業所というのがあります。
就労移行支援事業をしている所もあれば、就労継続支援を行っている所、その両方を行っている事業所もあります。
就労継続支援a型
通常の事業所に雇用されることが困難な人が、就労に必要知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を受けることができる事業所です。
福祉的就労ではありますが、訓練の場であり、労働の場でもあるので、基本的には最低賃金以上の時間給が支払われます。
専門の指導者が常駐しています。
町中を歩いていると、時々障害者がカフェで働いているのを見かけます。全てとは言いませんが、そういう所はa型なのでしょう。
就労継続支援b型
雇用契約に基づく就労が困難である者に対して行う就労の機会の提供お呼び生産活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、その他の必要な支援事業を行います。
チューブ型の薬のキャップ外しといった簡単な仕事をよく見かけます。
福祉的就労なので、最低賃金は適用されません。事業所によって、工賃に大きな差があります。
私が以前勤めていた所はb型で、給食代などが差し引かれて、結果手元に残るのは1万円を切っていました。
就労移行支援事業
通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる方を対象としています。働くための知識、技術、能力を向上するための訓練や職場体験の機会を提供したり、就職活動の支援、就職後に職場に定着できるように支援することを目的としています。
2年間と期限が決まっているので、指導者側の意識とモチベーションは相当高いと思われます。
職業能力開発施設では期間中に訓練手当を貰えますが、就労移行支援事業ではお金を支払ってトレーニング等を積みます。
ひだち教室だからこそできる就労支援
当教室は対象が5歳~40歳と幅広く、実際大学生の生徒もいます。そのため、就労については他人事ではありません。
大学生は勿論学問優先ですが、就労に向けてバイトをして社会と接点を持ち、理想と現実のギャップを埋め合わせていく時期でもあります。
しかし、不安等が先行してなかなかバイトを出来ない生徒もいます。
そこで当教室では、登録制のバイトに登録してもらい、私と同じ現場に一緒に行って、リアルな現場を実際体感してもらうようにしています。
学校によっては、体験学習などで仕事の現場を知る機会はありますが、正直それは意図的につくられた現場に過ぎません。
子供達がいる時の雰囲気といない時の雰囲気は違います。体験学習では人間関係が見えません。そういった生々しい体験を知らないで大人になり、いざ就職できた時にそういう現実を知って強いショックを受け、辞めるということもあります。
発達障害の中でも、ASDの人は純粋な人も多いです。そういう現実を受け入れるだけの心構えを作るという事も非常に重要です。そのためには、とにかくリアルな体験をしていくしかありません。そのお手伝いをするのが、当教室が行う就労支援です。
期待されていること
保護者からもこの取り組み(就労支援)は期待されています。こういうメリットを考えて頂けています。
・色々な生の現場を知ることができる。
・自分の出来ること、出来ないことに気づく。
・人間関係の必要性を知ることができる。
・長時間働くことの大変さを知ることができる。
・お金を稼ぐ大変さを知ることができる。
・色々な人がいることを知ることができる。
・達成感を感じられる。
・トラブルがあった時の原因を分析してもらえる。
・終わった直後に反省会をすることで、心理的負担を減らしてもらえる。
・すぐにフォローしてもらえる。
このような期待はされていますが、実際のところ、同じ現場でも違うグループに属することが多いので、今のところ現場でフォローは難しいです。
ただ、反省会は必ず行うので、現場で感じたこと、思った事をすぐに吐き出させるようにしているので、一人でモンモンと考えることは少ないと思います。
障害の特性によって合う合わない仕事、同じ障害名なのに同じ現場に行って真逆の感想になった仕事があったりしました。
詳しくは発達障害と仕事に書いています。
保護者は最初長く就労できる所を望まれますが、私と色々と意見を交わしていく内に、いずれは独立も良いなと思われることがあります。そのように導くわけではなく、保護者の子供の特性や性格等を加味した上でのアドバイスをした結果です。
もっとも、私は発達障害のある人で独立できる力がある(周りからのサポート含む)なら、独立した方が納得した人生を歩めると思っています。
全てではありませんが、ASDの人はお金よりもマイペースに自分がしたいことをする方を願う傾向が強いためです。また、自分の思ったように時間を調整しやすいというのも、特性上適しています。
全てではありませんが、ADHDの人は誰かに決められたことをコツコツとするよりも、色々な事にチャレンジできるという環境を望む傾向があり、独立心も強めです。
このように考えると、長く勤めることを考えるよりも、独立に向けて就職するという考えを持った方が、当事者としては納得でき、仕事にもやりがいが出てくるのではと、私は考えています。
例えお金は少なくても、納得できる人生を歩めるなら、それは幸せな人生だと思います。
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