自閉症スペクトラム障害の特徴を固定しようとするのは難しい問題があります

ネットを見ていると、自閉症スペクトラム障害についての情報をよく目にするのですが、少し怖いなと思う点があります。

それをお話しする前に、まずは自閉症スペクトラム障害について少し触れておきたいと思います。

自閉症スペクトラム障害(ASD)とは

対人関係の難しさや興味関心の範囲の狭さ、特定の行動を繰り返すといった特徴があります。

発達障害の一種で、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさと、環境や人間関係のズレにより社会生活に困難が生じる障害のことを言います。

ひと昔前は、高機能自閉症、アスペルガー症候群、カナー型自閉症、広汎性発達障害等と言われていましたが、これらを一つの診断名に統合したものが自閉症スペクトラム障害です。

これから書くのは、私が実際見てきた子供達と一般的に言われている特徴のズレを書いていきたいと思います。

子供の時の特徴

私が担当した生徒の中で、もっとも年齢が低かったのは2歳半の子供です。3歳~5歳の子供もよく担当しました。

公的機関で言葉の遅れを指摘されてから来る方がほとんどでしたが、言葉の遅れ以外で教室に相談をしに来られる方もいました。

じっと座れない、指示を聞けない、癇癪を頻繁に起こす等といった悩みです。

ネットでは「言葉の遅れが一番の特徴だ!」なんてことを書いている人もいました。

言葉の遅れの割合は多いのかもしれませんが、全員ではありません。むしろ言語能力が高い子供も結構いて、何でそんな難しい単語を知ってるの?と驚かされることもしばしば。

とはいえ、言葉の遅れがある子供と会話を交わしていると、同年代と比べると理解力に差はあるなと感じることもあります。

特に語彙としては覚えていても、概念が上手く入っていないパターンもありました。

例えば、「琵琶湖」という単語を知っていて漢字も書けるが、実物を目の前にして「ここは何?」と訊くと、「川」と答えたりする生徒もいました。

逆に、言葉が得意な生徒に同じ質問をしたら、私も知らないようなうんちく付きで答えてきました。

ネットではASDの人は言葉が通じないと書き込みをされる方もいて、何でそういう誤解が生じているのだろうと不思議でしたが、昨年の公認心理師の試験問題で、ASDの人は「通常の会話のやりとりが困難」が特徴の一つであることが正答として書かれていました。

まさか公の試験でもこういうことが書かれているとは驚きです。

何の問題もなく、通常の会話のやりとりを出来る人も多いです。

色んなタイプの人がいると、もっと知れ渡って欲しいなと思う次第です。

大人の特徴

大人になると、単純に特徴を書くのは難しいです。

大人になるまでにどういう人生を歩んできたかで大きく異なるからです。

成功体験を小さい内から積み上げてきたか、失敗体験をしても勇気づけられて立ち上がってきたか、友人がいるか、自分軸がつくられているか等で変わってきます。

生徒と長く関わっていると、良い時と悪い時とで大きく違う姿を見てきました。

反対に良くない方向に向いている時の特徴としては、ボソボソと挨拶をする、客観的に自分を見れない、誰とも会いたくない、人と会話をするのがしんどい、行動力がない、ミスをすると引き摺る、我を出すよりも他人に合わせることを優先するといったのを見ました。

良い方向に向いている時に見られる特徴としては、人に伝わる声で挨拶ができる、客観的に自分を見ることができる、一人よりも誰かと行動することを好む、人と会話をすることが楽しいと感じる、行動力がある、ミスをしても引きずらない、我を強くだすといった姿が見られました。

このように、その時の状態によって特徴が変化しますが、あえてASDの特徴として挙げるならば、ASDの人は環境(人的環境含む)にマッチするかしないかの振れ幅が大きいことです。

環境に合わせられないわけではないのですが、無理して合わせていると、必ずと言って良いほど心身のどこかを壊します。それは健常の人もあると言う人もいますが、ストレスの感じ方が異なります。

健常の人ならそのままスルーできる事でも気になってしまい、自分を追い詰めてしまうことがあります。

健常の人が感じるストレス度合いが1とするならば、ASDの人は5や6というストレスを感じているかもしれません。

鈍感なタイプもいますが、私は懐疑的です。言葉では表せなくても行動が変わってくるので、ストレスを感じない人はいないと思っています。

空気が読めないなんてのもよく言われる特徴ですが、全員には当てはまりません。

むしろ、空気を読んでいる人も多いです。

ただ、自分なりの解釈で空気を読もうと努力し、その結果、行動や言動がそぐわないということがあるのです。

有名人

個人名を出すのは控えますが、テレビを見ているとたくさんのASDと思われる人達を見かけます。

成功(?)した人達は、特性を上手く発揮し続けられたのが大きいと思いますが、共通しているのは保護者や周りのサポートを小さい時から適切に受けられていたこと。

たまにその人達の子供時代を振り返る番組を見ることがありますが、保護者の理解やサポートが本当に大きいなと関心させられます。

ある人の保護者は、周りからもっと子供に勉強をさせろと言われたが、「この子はこのままで良いんです!」と言い切り、好きなことを最優先にした教育をしました。これはなかなか出来ない事です。

その結果、現在は日本で知らない人がいないぐらいの有名人になっています。

接し方を考える前にその人を見ることが重要

どう接したら良いか分からないという相談を聞くことがあります。また、ネットでもそういった書き込みがあります。

その時によく書かれているのが、「ASDの特徴は○○です!だから、こういう接し方をしたら良いと思います!!」

実際、「ASDの特徴の一つに、一人で行動するのを好むというのがあります!」と書かれているのを見かけました。

たしかに一人で行動するのを好む人はいますが、全員は当てはまりません。

大人数は嫌だが、2人~3人程度なら誰かと一緒に行動することを好む人は結構います。

また、私自身は数人しか知りませんが、たくさんの人達と遊ぶのが大好き!という生徒もいました。

一人でいる姿を頻繁に見かけても、それが本当に一人でいるのを好むタイプなのか。他の人と一緒にいたいけど1人で行動せざるを得ないタイプなのか。等を、固定観念に囚われずに分析することが、理解の第一歩だと思います。その上で接し方を考えていきたいですね。

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