人に嫌われるのが怖い
先日、教室で宿泊活動をしていたA君という生徒が、おもむろに私に質問をしてきました。
自ら質問をしてくるタイプではなかったので驚きましたが、内心嬉しかったです。
質問の内容を聞くと、ソーシャルスキル関係だったので、急きょ学習の場をセッティングし、ホワイトボードに書きながら、じっくりと話しをすることにしました。
人の気持ちを知りたいという心理
A君は人の気持ちを察するというのが苦手です。
それ故、人間関係が上手く形成できず苦しんできました。
苦しんでいるが、それが表情に出にくく、誤解を生むタイプでもあります。
家庭、学校などでトラブルがあっても、それを上手くくみ取って貰えない、学べない環境下にいます。
保護者からこういうトラブルがありましたと聞いても、ワーキングメモリーの低さと自己防衛反応が強いので記憶を上手く引き出せない状態にあります。
また、A君自身も家庭や学校のことを話したがらないということもあり、私はA君自身が話しやすい環境づくりを心掛けていました。
たった一人の宿泊活動が環境として最高だったのと、A君自身何かキッカケがあったのでしょう、人の気持ちを知りたいという気持ちが芽生えてきたようです。
人に嫌われ続けて恐怖症となっていた
A君が質問してきたのは、2点。
「唾が飛んだら何故気持ち悪い?」「電車の動きを手でやるのは何故よくない?」でした。
人ごみのみの多い所でも、突然腕全体を使って電車の動きをやるというのは昔からありましたが、唾が飛んだらというのは初めて聞きました。
最近になって誰かに注意を受けたのかもしれません。
人の気持ちを察しにくいタイプは、一般的な基準とズレていることがあります。
A君は唾が汚いという認識がなかったため、唾の中には菌が入っているということから教えました。
そういう理由をつけた上で、自分に置き換えていくという説明の仕方をすると、どうやら腑に落ちたようです。
次に人ごみの多い所で腕全体を使って電車の動きをしたら、何故気持ち悪がられるのか。
A君自身はストレス発散のためにやっていることなので、悪気はないし、納得がいかないとのこと。
では、ストレス発散のためなら何でも許されるのかと言えば、そうではない。
例えばという話しで、極端な例を出しましたが、ここでは書けないことなので割愛します。
例を聞いて、自分ならどう思うかと訊くと「気持ち悪い」と言い、そこで初めて理解した表情をしました。
じゃあどうすれば良いのかと聞いてきたので、家や人が見えない所でこそっとやるか、代替え行動となるものを見つけようと提案しました。
それでもやりたいというなら、やれば良い。
ただし、人に嫌われるのを承知でやるようにと伝えると、顔が物凄く引きつりだしました。
人に嫌われることは誰しも恐怖だと思いますが、A君にとっては周りが思っている以上に大きな恐怖となっており、同時に、かなり精神的に追い込まれているなとも感じました。
一過性の恐怖なら耐えられるかもしれませんが、持続すると恐怖症になります。
「人に嫌われる」という言葉を聞いた時の彼の表情やしぐさを見ていると、恐怖症が伺えました。
変わるにはモチベーションとタイミング
よく保護者から、子供の行動や考え方を変えて欲しいと言われますが、本人に変わろうという意思がなければ不可能に近いです。
意思がないのに、「こういう行動するのは良くないから、こういう行動をしようね」といった学ぶ機会を設けたところで、その場では理解したように見えても、すぐに忘れるか気にも留めていないことが多いです。
しかし、モチベーションとタイミングが合えば、容易に行動が変わる様子を私は見てきました。
今回のA君は、まさにモチベーションとタイミングがあった瞬間だと思います。
上記の2つの質問に対して、納得のいく回答を得られたようで、さらに質問をしてきました。
「僕がやっている、人に嫌われている行動を教えて」と。
人に嫌われ続けている原因に自身の行動があると理解した上で、それを何とかしたいという気持ちが溢れているのが分かります。
周りの人達としては、ようやくかという印象かもしれませんが、本当の意味で気づけたというのは、A君の人生において大きなことだと思います。
私は包み隠さずに伝えました。
口に指を入れる、つばでついた手で物や人に触る、口の周りにソース等がいつまでもついている、鼻水が顔中についている、鼻水がでっぱなし、人前で鼻をほじる。
それらをしないようにするというのは、本人に大きな負担を強いるので難しいです。
気持ちで止めることが出来るなら、こんなに悩むことはないでしょう。
行動を止めるのではなく、どうすれば欲求を満たせ、かつ、人に嫌われないような行動のとり方を教えるのが私のやり方です。
A君が出来る範囲で、行動しやすい方法を教えました。
口に指を入れる→つまようじを使うor人が見えないところで歯に詰まった物を取り、すぐに手を洗う。
つばがついた手で物や人に触る→つばがついたらすぐに手を洗う。
口の周りにソースがついている→食後必ず鏡を見て拭く。
鼻水が顔中についている→鏡で顔を見ながらティッシュで拭く。
鼻水がでっぱなし→蓄膿と顔の感覚が鈍感なので止めるのも気が付くのも難しい。医者に相談して欲しいと伝えました。
人前で鼻をほじる→人がいない所でほじる、顔を横に向けながらティッシュでほじる。
といった感じで教えました。
これらを一度に出来るようになろうとせず、一つ一つ確実に出来るようになるしかありません。
トークンシステム(ご褒美)が通用する生徒なので、それを利用してやっていこうと思います。
自分を好きになる
今回の事例では、嫌われない行動をとるための方法を教えました。
それも大切なことですが、もっと大切なのは、自分を好きになること。
つまり、自己肯定感を高めることが何よりも大切です。
その方法についてはこちらをお読みください。<<<自己肯定感を高める方法の記事
自己肯定感が高まると、全てが上手く回りだすと豪語する人もいるほどです。
ソーシャルスキルに大きな問題を抱えていた子供が、自己肯定感が高まることで、気が付かない内に解決されていた。
なんて話も聞いたことがあります。
人に嫌われない方法を考える事も良いですが、それよりも自分を好きになる方法を考えた方が問題解決が早いかもしれないですね。
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