社会スキルのトレーニング 実践例

社会スキルとは

他人と関わり、共に生活していく上で欠かせない必要なスキルのことを指します。

社会スキルと言っても、様々な項目がありますが、今回活動をした時は、たった一つだけに絞りました。

「人に質問する」この一点です。これは簡単なようで、とても難しいスキルで、発達障害のある人(全てではない)はこのスキルでつまづいていることが多いです。

今回の参加メンバーは、知り合いには質問できても、他人には質問しない生徒達です。出来る能力があるのに、他人にはしない・出来ない。

方法が分からないなら教えますが、まずは意識改革が必要だと私は感じたので、やらざるを得ない状況を作って、体験してもらうことにしました。

訓練開始

出来る能力があるなら自分達でやってもらうというのが私の指導方針なので、生徒達には最初から頑張る機会を作りました。

大阪駅に生徒達だけで集合してもらい、そこから協力しながら生徒達だけでJR大津駅まで来るようにと書かれた指令書を事前に渡しています。

生徒達は指導者のいない状態で行動するのは初めてのため、少し緊張していました。

何故緊張しているのが分かったのか。それは、生徒達に気づかれないよう、少し遠くから様子を見ていたためです。

3人の生徒は果たして無事に大津駅に辿り着けるのか、少しドキドキしました。

集合

集合時間の17:00になり、3人中2人(A君とB君)は無事に集合場所に辿り着きました。しかし、後1人(C君)が一向に現れません。

30分以上前にC君から家を出たというメールが届いているので、十分時間に余裕があるはずなのに現れないことに少し慌てました。

C君の携帯に連絡しても、電話が通じず、親にも連絡しました。すると、可能性として浮上したのが『電源を切っている』でした。

こんな大事な活動の時に電源を切っているなんてありえない。そう思いましたが、可能性としてはあります。

集合時間ギリギリになって、C君は現れました。その理由をすぐに問いただしたかったですが、3人には私がついていっていることは秘密なので、その場では聞けず、後にC君から遅れた理由と電話が通じなかった理由を尋ねました。

遅れた理由:電車が遅延した。

電話が通じなかった理由:電源を切っていた。

本当に電源を切っていたことに驚きました。電源を切った理由を尋ねると、「電池が無くなるから」でした。

適切な行動

この一件でどういったことが適切だったか、後日反省会をしました。

連絡は必要

電車が遅延することは仕方のないこと。仕方ないけど、どうなるか分からないので、遅れていることが分かった時点で、遅れているというメールを入れることの大切さと必要性を教えました。

また、事前に伝えておくことで、相手はどういう心境になるかということも教えました。勿論、今回のケースで私や他の生徒達はどう思ったかも伝えました。

電源を切らない

何故電源を切っていたのか。それは電池が勿体ないからという理由でした。自分がかける時だけ電源を入れるという習慣だったため、C君にとっては普通の行動でした。

一人で行動することが多い生活を送っているため、その危険性を実感することが今までなかったのでしょう。そう考えると、今回の一件は気づきとなる経験になったと思います。

私や他の生徒達はどういう心境だったかを伝えたところ、C君は初めて知りましたという表情をしていました。

携帯の電源については、毎日充電しているなら、すぐになくなることはない。だから、今後は電源を切らずに、電源をつけっぱなしにするよう伝えました。

腑に落ちたようで、その後は電源を切ることはありません。

店探し

無事大津駅に着きました。

次の指令は、「○○商店街にある○○スーパーに行く」です。ただし、地図で探すのではなく、人に尋ねて探すようにという条件を付け加えています。

何故なら、地図で行先を把握して店に辿り着くことは出来ているからです。

そのような条件が指令書には書いてあるのですが、私がいないことをいい事(?)に、地図とスマホのナビを活用して目的地に向かい始めました。

その様子を一部始終見ていた私は、注意をしたかったですが、隠れているので我慢しました。

駅の出入り口前で3人は顔を寄せ合って地図を確認し、その後びわ湖へと続く道路を歩き出しました。が、すぐに違う道だと気づき、再び駅に戻ってきて、再度地図を確認。そんなことを2~3回行い、やっと正解の道へと向かいました。

〈地図で行先を把握して店に辿り着くことは出来ているからです〉と書きましたが、どうやら実は出来ていなかったと、この時に初めて気づきました。

商店街へと続く道を歩いている生徒達から30m程離れてコッソリとビデオを録りながらついていっていると、突然Uターンしてきました。あまりにも突然で、身を隠す所が周りになく、オロオロしていると、あっけなく生徒達に見つかってしまいました。

見つかってしまったものは仕方ないので、生徒達にはルールを破っているという旨とルールを順守するように伝えました。

生徒達は駅員に聞くことにして、駅へと再び戻りだしました。

その道中、C君はメモと鉛筆がないかと私に言ってきました。理由を聞くと、駅員から聞いたことをメモするためとのこと。とても良い発想です。

残念ながら私はメモ等は持っていなかったので、駅員に借りるように伝えました。

生徒達が駅で駅員に聞いている間に、私は再び隠れました。

5分程すると、生徒達は出てきました。遠くから見る限り、手には何も持っていません。メモはどうした?という疑問がありましたが、様子を見守ることにしました。

私が隠れている方に向かってきたので、再び正解の道(北方面)を進むのかと思ったら、全く違う道(西方面)を歩き出しました。

途中おかしいと思ったようで、道に立っていた人に再び行き方を聞いていました。

しかし、どんどん店のない山の方(南西方面)へと向かうので、このままでは辿り着くことはできないと判断し、店探しを終了することにしました。

私は携帯で生徒達と連絡を取り合い、私のもとへ戻るように伝えました。

集まってからすぐに反省会を実施しました。

適切な行動
他人に聞き、確認する

おかしいと感じた時に、その場にいた人に道を尋ねたのは非常に良かったと思います。

人に道を尋ねるというのが習慣化していない生徒にとっては、さぞ緊張したことだと思います。そこはしっかりと評価していると伝えました。

それでも道に迷ってしまったのは、聞いただけで終わったからです。

教えてもらったことを自分は正しく理解したかを確認するために、「例:この道を真っすぐ行って、右に曲がれば良いんですね?」と確認作業をすれば迷うことはなかったかもしれません。ただ、こういう確認作業は経験がなければ行わないと思います。

今回は確認作業の必要性を身に染みたと思うので、次回に活かしてもらおうと思います。

他人に質問して、メモをとる

駅員への質問の仕方は問題がなかったです。しかし、メモはとりませんでした。

とらなかった理由は、C君はメモをとることを主張したものの、B君が駅員から聞いたことを記憶したからメモをとる必要がない、と言ったからメモをとらなかったというのが分かりました。

B君は記憶に自信があったのでしょうが、歩いている途中で忘れしまいました。これは非常に良い体験をしたと思います。特にB君は。

メモをとる大切さを私は事前に伝えていましたが、生徒達はピンときていなかったようです。しかし、この失敗によってメモをとる必要性を心の底から知ったようで、B君は「今度はちゃんとメモをとろう!」と強く決意していました。

必要な能力と気付くことで習得しやすくなる

今回の活動は一見失敗のように見えますが、そうではありません。

今まで避けてきたこと(人に質問する)は、実は大切で必要な能力だということに生徒達は気づきました。それに気づいたなら、この活動は成功です。

体験して気づいたなら、後は方法を教えて成功体験を積ませると、スキルが身に付きます。

失敗しないために、屋内でソーシャルスキルトレーニングをして出来るようになってから、体験させるという方法論は一般的です。しかし、それは子供のタイプによると思います。

《トレーニング⇒実践⇒成功体験》の方がスキルを習得しやすい子供もいれば、《失敗⇒必要性に気づく⇒トレーニング⇒実践⇒成功体験》の方がスキルを習得しやすい子供もいます。

私の経験では、後者の流れの方が習得しやすい子供が前者の流れでやると、その時は身に着いたように見えて実は身についていないという事が多かったです。成功体験といっても、緊張の中で苦労したという状況下でないため、大きな達成感がないからだと思います。

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