発達障害者の一人暮らし体験~見えてきたものとは?~

一人暮らしを満喫していたひだち教室長の安藤です。

保護者と懇談をしていると、こんな発言を何度も耳にします。

「将来的に我が子には一人暮らしをして欲しい」

自立を考えた時にそう思うのはごく自然なことだと思います。

では、現時点でどの程度一人で暮らせるかをやってみませんか?

色々と知らない子供の姿が見えてきますよ。

今回は期間限定一人暮らし体験をした19歳のJ君(ADHD)のお話しをしたいと思います。

一人暮らし体験をする意義

期間限定(一ヶ月間)一人暮らし体験。これは私がJ君の保護者に提案しました。

親子の心の距離と物理的な距離があまりにも近すぎて、親子関係がこじれていたからです。

ソーシャルスキルトレーニングやペアレントトレーニングをすれば良いという次元ではありません。

このままではお互い疲弊するだけで良いことはない。

それならば物理的に距離を置いて、保護者には頭のリセットとストレスを発散してもらおうと思い至りました。

私が定期的に様子を見に行くとはいえ、保護者にとってなかなか勇気のいる決断だったと思います。

しかし、それをするだけの意義はあります。

・子供がどの程度生活スキルが身に着いているかが分かる

・子供の価値観が見えてくる

・子供にとってもリフレッシュになる

・子供が習慣化している行動が分かる

・保護者の心身のリフレッシュになる

・物理的に距離を置く事で、保護者は頭の中を整理しやすくなる

今回実施した一人暮らし体験で、私はJ君が出来ない(知らない)ことはサポート。

それ以外は、J君の力を確認して分析することに重点を置きました。

その旨を保護者に承諾してもらった上で、一人暮らし体験を開始しました。

一人暮らし体験開始

J君自身、一ヶ月間保護者がいないという状況は人生初。

寂しさや不安が出てくるかと思いきや、そういうのは全然ありませんでした。

食費は3万円を用意。

それで足りなければ、お金の獲得手段を設けました。

いわるゆトークンシステム(ご褒美)を活用。

・洗濯をする

・掃除をする

・寝癖を直して登校する

等といった、生活スキルの部分を実行して写真に撮ったらお金をゲットできるというもの。

J君の特性や価値観を考えると、実行するのはせいぜい一週間だと私は予想していました。

そして、まさにその通りに・・・。

一ヶ月間、私は定期的にJ君の様子を見に行きました。

日が経つにつれて、部屋が汚れていく様子はなかなか厳しいものがありました。

この部屋の状態を保護者が見たら、また大きなストレスがかかる可能性が高い。

そこで、保護者が帰宅する数日前に、私は大掃除をしようとJ君に提案して一緒に行いました。

一ヶ月間は長いようで短かく感じましたが、J君、保護者、私にとって実に有意義な一ヶ月でした。

一人暮らし体験のメリット

一ヶ月間一人暮らし体験をして見えたメリットは下記のようになります。

・子供の実態を見れた

・新しい事を経験するキッカケになった

・親子共に良いリフレッシュになった

・体験後、親子関係に改善の兆しが少し見えるようになった

・保護者は頭の整理ができるようになった

・保護者の顔色がよくなる

・安藤とJ君が通う学校の先生達と繋がりを持つキッカケになった

私が予想していた以上にメリットが大きく、本当に実施して良かったと思います。

特にJ君の現状を見ることが出来たのは大きな収穫でした。

J君と一緒にお好み焼を作った時の印象は強いです。

J君はスーパーに行ってちくわを探してたら、「これちくわ?」と言ってちくわ麩を手に取る。

肉は豚肉で良いのか不安になって、肉売り場を右往左往するJ君。

食材の支払いの配分をどうするかで私ともめる。

30分ほどの買い物でしたが、エピソードは盛りだくさん。

J君はお好み焼作りは人生初。

私は経験はあるが決して慣れてはいないので、二人で意見を出し合いながら作りました。

そのやりとりは意外と楽しく、J君も楽しそうでした。

そして、見事J君は美味しいお好み焼を作ることに成功しました。

J君にとって大きな成功体験となったようで、記念に自作したお好み焼の写真を撮っていました。

普段のレッスンでは見られないJ君の姿を見ることができて、私は嬉しかったです。

一人暮らし体験のデメリット

デメリットは3つが挙げられます。

・自ら部屋の掃除をしないので、フケやホコリが至る所にたまる

・服やタオルがクシャクシャ状態

・シンクに赤サビが発生する

私は掃除はしないだろうと予想していたので驚きはなかったです。

しかし、掃除をしないことでダニが発生する危険性が高まりますね。

J君は洗濯物の干し方が身に着いていなかったので、服やタオルはクシャクシャ状態でした。

私はクシャクシャにならない干し方を教えましたが、J君は習慣化してないのでやりませんでした。

使った食器類や調理器具を3日以上シンクに放置していたために、シンク内に赤サビが発生していました。

J君は赤サビをどう対処すれば良いか分からないため、放置していたそうです。

一人暮らし体験を通して見えてきたもの

見えてきたものが多すぎて書ききれませんが、発達障害のある人に通ずることを列挙したいと思います。

・保護者がイメージしているような一人暮らしにはなりにくい

・出来る能力はあっても習慣化してないとやらない

・誤学習をしている確率が高い

・保護者が普段やっている様子を見ているけど、肝心な所を見ていない

・料理ができるようになるよりも、掃除や洗濯を一人で出来るようになった方が良い

・食べることは何とかなる

・掃除の手順が書かれたメモを用意していても、こだわりや衝動性が阻害して順番通りにしないこともある

・学校の先生と支援者の情報共有は大切

・トークンシステムは大人相手には対して通用しない

・掃除や洗濯が習慣化していない人には、月に一回は支援者と掃除等をする機会を設けた方が良い

・親子はある程度距離を設ける方が上手くいく

この一人暮らし体験を支援・指導に活かして活きたいですね。

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