発達障害児がコミュニケーションの取り方を学べるテレビゲーム

テレビゲームは多くのことを学ばしてくれるツールと思っているひだち教室長の安藤です。

ゲームには様々なジャンルのゲームがあり、個人的にはどんなゲームをしても学びになると思っています。

しかし、コミュニケーションに焦点を当てるとジャンルは限られてきます。

その一つが協力型ゲーム。

ある問題に対して、コミュニケーションをとりながら解決するというもの。

戦争ゲームや少人数によるチームバトルゲームも協力はしますが、どちらかというとアクション性の方が高い。

そんな協力型ゲームで私がお勧めするのが、『オーバークック』という料理ゲーム。

今回は、オーバークックに発達障害児の特性を絡めてお話ししたいと思います。

自閉症スペクトラム障害の特徴と相性が悪いゲーム?

オーバークックはニンテンドースイッチとPS4で発売されていて、現在は1~2まで出ています。

最近では、PSPLUS会員限定でフリーゲームとして無料でインストール(PS5限定)可能。

プレイヤーはシェフになり、オーダーされた料理を協力しながら作り、指定された場所に運ぶというもの。

プレイ人数は1~4人までで、オンラインにも対応しています。

二人以上でオーバークックをクリアするには、以下の要素が必要です。

・コミュニケーション能力

・予想外なことへの柔軟な対応力

・環境変更への対応力

・マルチタスク(同時作業)

これらが円滑して行わなければ、クリアすることが非常に難しい。

次に、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性。

・コミュニケーションが苦手

・柔軟な対応が苦手

・急な変更が苦手

・マルチタスク(同時作業)が苦手

自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性とオーバークックは相性が悪いように思えます。

しかし逆に考えると、オーバークックをすることでトレーニング効果があるのではと推測もできます。

トレーニング効果を考察

シェフを疑似体験できるゲームは他にもありますが、オーバークックは単なる疑似体験ゲームではありません。

実際プレイしてみるのが一番理解できますが、一言で表すと「コミュニケーションゲーム」。

そんなオーバークックのトレーニング効果を考察してみましょう。

コミュニケーションの取り方を学べる

ステージをクリアするには一人では困難で、物理的にも一人では無理なステージが多々あります。

効率良くゲームを進めるには、二人のコミュニケーションがなによりも重要。

プレイしながらの臨機応変なコミュニケーションだけでなく、事前に役割分担や行動の仕方等を話し合う必要もあります。

「たくさんの注文の中から何を優先的に作るか」「どういう順番で料理をするか」

「どんな材料が必要か」「どの工程を仲間に任せるか」

といったことを、一人で判断して決断するのではなく、お互いの意見を出し合いながら意思統一を図ります。

自閉症スペクトラム障害(ASD)のある人の中には、他人の意見を聞かず、自分の思うようにしないと気が済まないタイプがいます。

そういうタイプの人にとっては、自分よがりの考えだけでは解決しないという事に気が付き、コミュニケーションの取り方を学べる良いキッカケになるでしょう。

逆に、自分の意見を言えないタイプもいます。

自分の意見を言わないと上手くいかないことが多いので、何度もやっていく内に発言するようになるでしょう。

判断力を養える

仕事が出来る人と出来ない人の違いの一つとして挙げられるのは、効率的に仕事を進めるための判断力。

オーバークックでは、「何を優先するか」「どういう順番にするか」「どんな物(情報)が必要か」「どの工程を他人に任せるか」といった判断が随時求められます。

それらが出来ないとクリアできない仕様になっているので、判断力を養えると思われます。

発達障害のある人の中には、自分に都合の良い判断は出来るが、他者も含めた効率重視の判断を苦手とする人もいます。

実際、バイト先で出来ていない人を見かけたことがあります。

>>>大人の発達障害の特徴の記事

効率的に考えろと言われても、そういう思考をしたことがなければ難しい。

そういう人には、まずは他者を含めた効率重視の判断の必要性に気づいてもらうことが大切。

その手段の一つとして、オーバークックを利用するのも有りです。

マルチタスクのトレーニングになる

オーバークックはとにかく高度なマルチタスク(同時作業)が要求されます。

・食材の選別、食材を切る

・食材の焼き具合を見る、食材の煮え具合を見る

・仲間の動きを見る、次のメニューを見る

・動くテーブルの位置の確認、仲間が言っていることに注意を向ける

といったことを同時並行に行わなければいけません。

正直言って最初はかなり苦労します。無理だと諦める人もいるでしょう。

ところが、やっていく内に脳が慣れて出来るようになります。

環境変化(状況変化)に対して柔軟な対応ができる

オーバークックのキッチンは絶えず状況が変わります。

あるステージでは、川の上に浮かんだイカダがキッチンになっていて、グルグルと流されています。

あるステージでは、キッチンが気球のカゴ内にあり、風に吹かれて気球が激しく揺れます。

環境変化に振り回されて慌てますが、やっていく内に落ち着き、柔軟な対応を出来るようになります。

フォローする意識が高まる

お互いの動きを把握しつつ、フォローをしなければクリアは不可能。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人の中には、過集中をする人もいます。

過集中状態は自分の役割を全うすることは出来ますが、フォローにまで意識を割けません。

そういう人は大変苦労しますが、プレイしていく内に自分の役割を全うしつつ、フォローできるようになります。

トレーニング効果はあったのか?

※外での活動を通して、生徒達の行動や言動の変化を観察しての分析です。

生徒達はプレイした結果、トレーニング効果はあったのか?

結論を先に言うと、トレーニングとしての効果はなかったです。

ただし、意識改革による言動や行動の変化は見られました。

トレーニング効果がなかったもの

・対応力

・マルチタスク

・判断力

外での活動中に合理的な考えや柔軟な対応は出来ていませんでした。

また、マルチタスクは苦手なまま。

現実では心理面や環境などが複雑に絡んでくるので、ゲームと現実はやはり違いますね。

さらに発達障害のある人は学んだことを般化しにくかったりするので、それも影響したのかもしれません。

言動や行動の変化を踏まえてオーバークックを勧める理由

BBQの活動をしていた時に、言動や行動に顕著な変化が見られました。

・コミュニケーションの取り方(人の意見を聞く姿勢や自分の意見を伝える姿勢)が変わった

・フォローをする意識の向上(相方限定)

BBQを始める前に話し合いをしてもらった時、生徒達の伝え方は決して上手くはなかった。

しかし、相手の意見を聞き、自分の意見を伝えるという、コミュニケーションの基本部分である姿勢(意識)が以前よりも構築されたように見受けられました。

フォローする意識もしかり。

他にも生徒達はいましたが、オーバークックを一緒にプレイした生徒同士のフォローの回数は多かったです。

オーバークックで喜怒哀楽を共有したことで、お互いを強く意識するようになったのが要因でしょう。

これらを踏まえ、私がオーバークックを勧めたい理由を最後に書きたいと思います。

・コミュニケーションの基本部分が構築される

・誰かを助けようというソーシャルスキルの部分にも影響が出る

・苦楽を共にすることで共感性が高まりやすい

・敵を倒すというゲームではなく平和的なゲーム

・操作の上手い下手はあまり影響しない

・1ステージに何度もミスをするので逆に笑えてくる

・料理工程に興味を持つ可能性がある(例:野菜を切る)

ゲームは共感性を高めるのに有用なツールですが、大切なのはその後。

共感性が高まってる状態の時に、現実で一緒に活動をすること。

遊びでもキャンプでも、料理でも良いです。

現実で一緒に活動をして初めて、実践的で現実的なコミュニケーション能力が身に着きます。

『ゲームをする+一緒に外で活動をする』という風に、必ずセットで考えてください。

それがゲームの活かし方です。

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