自由が不自由なことはありませんか?
自由も不自由も楽しめるようになって欲しいと思っているひだち教室長の安藤です。
発達障害の子供と関わっていて、時々動けなくなっている子供を見かけることがあります。
何か考えているようにも見えますが、そういう感じでもありません。
そのような様子を見かける時は、自由時間の時が割と多いように見受けます。
活動している時は何も問題がないのに、自由時間となると問題が生じる。
実例と共に、理由を考えたいと思います。
自由と不自由の意味
自由を辞書で調べると、以下のようなことが書かれていました。
・自分の意のままに振る舞うことができること
・外的強制や束縛がないこと
これは人間がようする権利でもあり、生きていく上で重要な要素でもあります。
自由があるから人生が楽しくなるといっても過言ではありません。
不自由はその逆。
・自分の意のままに振る舞うことができない
・外的強制や束縛がある
不自由は人間性を否定し、心を締め付ける要素もあるので忌み嫌われます。
今回お話しする事例を考えると、この辞書の意味では納得できるような、納得できないような。
発達障害のある人が動けない理由と上手く結びつきません。
しかし、ある方が自由の定義について面白いことを述べていました。
それは後程お話しします。
動けないのか?それとも動かないのか?
兵庫県にある姫路セントラルパークに生徒達と行った時のことです。
普段は集団行動をしてもらって楽しんでもらいます。
しかし、今回は一人で行動できるようになることがねらいです。
生徒のZ君が一人で動けないタイプかも。
活動中にそのような行動を見かけたので、確認の意味合いも含めて、一度やってみることにしたのです。
最初は2時間程集団で行動する時間を設け、その後一人で行動する時間を設けました。
集団行動時のZ君は皆と楽しそうにアトラクションを乗ったりしていました。
ところが、一人行動となるとガラリと様子が変わりました。
私が「一人で自由に行動しておいで!」と皆に伝えると、皆散らばってアトラクションに乗ったり、買い食いをし始めたりしましたが、Z君だけは解散場所から動きませんでした。
とりあえず私もその場から離れて、遠くからZ君の様子を見続けました。
10分経過するが動く様子がなく、15分経過した辺りで遊園地のマップを広げて見始めました。
しかし、そこから動く様子がなく、辺りをキョロキョロし始めます。
頭の振り方を見ると、何かを探している様子ではなく、軽くパニックを起こしている様子でした。
理由があって動かないのではなく、動けないという状態になっているのだと、そこで私は確信を持ちました。
30分過ぎたあたりで歩き始めましたが、足取りはおぼつかなく、何か目的があって歩いている感じではありません。
そこへ、たまたま他の生徒がZ君の近くを通り過ぎ、それに気が付いたZ君はその生徒の後を追いかけました。
そして、他の生徒と一緒に行動するようになりました。
一人行動の時間なのにと内心思いながらも、注意することは止めておきました。
その後、何故動かなかったのかと訊くと、「何をしたら良いか分からなかった」ということでした。
自由な活動がZ君にとっては不自由な活動でしかなかったようです。
自由の定義
ある教授が自由の定義についてこのように述べています。
「自由とは限られた選択肢の中から、自分でよく考えて決断すること」
私はこれを読んで、「これだ!」と思いました。
限られた選択肢というのは、
・自分の能力
・お金
・自分の好きなもの(こと)
これらは必然的に限界があります。
だから自由といっても、選択肢は無限ではありません。
「よく考えて決断する」というのは、選択肢を精査して取捨選択し、決断に至る。
自由は無限の可能性にフォーカスしてしまいがち。
よくよく見ると、3つの要素が含まれるのです。
・自己理解力
・選択肢を精査する力
・決断力
動けない理由
さて、話しを戻します。
発達障害のある人(全員ではない)が自由が不自由になってしまう。
それは上記の3つの要素が起因していると考えられます。
Z君の自己理解度は決して高い方ではありません。
お金の限界は財布を見たら分かります。
しかし、自分の能力や自分の好きなもの(こと)が実はよく分かっていないタイプ。
そのため、Z君には選択肢が無数にあるのです。
Z君には選択する際の基本軸も、まだ確立されていない。
そのため、何を選べば良いか分からず、パニックになってしまったのだと思われます。
後日談ですが、
「必ず何かを食べる」
「スピードが速いアトラクションに一回は乗る」
といったように、ある程度の不自由さ(範囲を絞る)があると、Z君は問題なく動けていました。
自由は大切です。
しかし、ある程度の不自由さ(例:ルール)があるからこそ、自由は成立するのだと思います。
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